被写体がゴージャス! 1930年代に活躍したボリス・リプニツキの写真展。

Paris 2023.10.30

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展示から。左の壁に、1932年に撮影したボリス・リプニツキのセルフポートレートが。ガブリエル・シャネルの有名なポートレートの多くはボリスが1930年代に撮影したものだ。photo:Mariko Omura

セーヌ通りのギャルリー・ロジェ・ヴィオレで始まった写真展「ロシア人ボリス・リプニツキ、1930年代のパリ報道写真家」。彼の名前を知らなくても、画廊に展示されている写真を見ると、クリストバル・バレンシアガ、ガブリエル・シャネルのポートレートなど、なじみ深いものがある。撮影したBoris Lipnitzki(ボリス・リプニツキ/ 1887~1971年)はウクライナに生まれ、パリで活躍した写真家だ。このギャラリーではすべての展示写真についてプリント各30点を限定販売。写真によって価格は異なるが、240ユーロから480ユーロ。料金プラスでフレーム入りでの購入もできる。若き日のイヴ・モンタンやエディット・ピアフ、アトリエのピカソやシャガール、ポール・ポワレのクチュールアトリエでの聖カトリーヌ祭り……。

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左: 1927年に撮影されたクリストバル・バレンシアガ。 右: 藤田嗣治。撮影は1925年頃。©Boris Lipnitzki/Roger-Viollet

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ウクライナに生まれたユダヤ人のボリス・リプニツキは、1917年にロシア革命を逃れてまずはコンスタンティノープルへ。ヴァイオリン奏者として働き、その後パリにやってきた。先に来ていた兄の助けもあり、趣味の写真で生計を立てるべく、1922年にフォーブル・サントノーレ通り109番地に写真スタジオを構える。パリに亡命してきていた富裕ロシア人コミュニティのおかげでクチュリエのポール・ポワレと親しくなり、ポワレから紹介された彼の顧客がボリスの被写体となるのだ。顧客が避暑地、避寒地にゆけばそちらでも雑誌用のルポルタージュ撮影をしたり。もちろんポワレのクチュールピースも撮影し、アトリエに入り込み、と彼とは長い付き合いだった。シャネル、バレンシアガ、スキャパレリといったクチュリエとも仕事をし、その写真はFéminaやVogueなどのモード雑誌を飾っていた。第二次大戦前、オートクチュールの全盛期である。モード雑誌の数もクチュールメゾンの数も実に多数だった時代だ。第二次大戦ゆえにクチュール業界が不況になるや、彼は主にポートレート撮影を多く行うようになる。シャガールやカンディンスキーといった画家もいれば、モーリス・ラヴェルや6人組といった音楽家たち、また作家たちも彼の被写体となった。

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展示より。左はヴァロリスのアトリエで撮影されたパブロ・ピカソ(1948年)。右はジャック・プレヴェールとピカソ。photo:Mariko Omura

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展示より。クリスチャン・ベラールによる室内装飾を背景にしたジャン・コクトー(1934年)。photo:Mariko Omura

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第二次世界大戦の勃発に彼は1936年にコリゼ通り40番地に移したスタジオを1939年に閉鎖し、活動を停止する。スタジオはヴィシー政権に差し押さえられたが、彼は撮影したネガもプリントも知り合いの劇場の地下に隠すことにした。1941年、アメリカ人ジャーナリストのヴァリアン・フライの助けを借りて大勢のユダヤ人がヨーロッパからアメリカに渡ったが、その中にボリスもいた。マルセイユからキューバ経由でニューヨークに。1945年にパリに戻った彼は、ネガやプリントを含む自分の財産を取り戻すことができた。1965年に仕事を辞め、それから6年後に彼は波乱万丈の人生を閉じることに。彼が残した写真はプリントだけでも6000点あり、ネガは無数。それらを彼が亡くなる1年前にロジェ・ヴィオレ社が購入したのだ。その中から約70点が新規のプリントで現在展示されている。

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エッフェル塔を背景にクライスラーでパリを疾走する女性。撮影は1938年7月。©Boris Lipnitzki/Roger-Viollet

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戦後は、バレエ公演の通し稽古などルポルタージュの仕事が多かった。パリ16区のバレエ教室のルポでは、女優になる前の無名時代のブリジット・バルドーに彼は注目して撮影している。(左上、左下)。photo:Mariko Omura

「Boris Lipnitzki、photographe russe chroniqueur du Paris des années trente」展
会期:開催中~2024年1月20日
Gelerie Roger-Violet
6, rue de Seine
75006 Paris
開)11:00~19:00
休)日、月
www.galerie-roger-viollet.fr

editing: Mariko Omura

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