2027年夏から5年間、舞台がクローズされるガルニエ宮。劇場の精巧な模型が登場した。

Paris

シーズン2026/27終了後、2年の予定でガルニエ宮の舞台の工事が始まることが発表されていた。ところが検証の結果有害な鉛が発見され、その除去のため工事は5年に長引くことに。有害物質ゆえ、除去期間中ダンサーたちはリハーサルスタジオや楽屋にも接近ができなくなるという。この工事が始まると彼らの日常にも大きな変化が生じそうだ。

ガルニエ宮の縮尺1/100のミニチュアの展示が劇場内で始まった。こちらはHalévy通りに面する側面で左が正面入り口。photography: ©︎Studio Lazareff – Arop
こちらはScribe通り側の断面。オルセー美術館に展示されている縮尺1/25の模型より、全体像がつかみやすい。photography: ©︎Studio Lazareff – Arop

先日、1988年生まれのマリーヌ・ガニオ(プルミエール・ダンスーズ)が、今シーズンがガルニエ宮で踊る彼女の最後のシーズンとなることから、ホームグラウンドである劇場への別れをインスタグラムで綴っていた。オペラ・バスティーユで踊り続けるにしても、ガルニエ宮の舞台はダンサーたちに異なる感慨をもたらす特別な存在なのだとつくづく思わせるフェアウェル・メッセージ。5年間の工事期間中に定年42歳を迎えるため、キャリアにおいて今シーズンがガルニエ宮での踊り納めとなるダンサーはほかにもいる。たとえばエレオノール・ゲリノー(スジェ)、ファビアン・レヴィヨン(スジェ)、ダニエル・ストークス(スジェ)……エトワールでは1986年生まれのマルク・モロー、1989年生まれのアマンディーヌ・アルビッソン。彼らが心に思い描いていたのはガルニエ宮でのアデューだったに違いない。とすると、オペラ・バスティーユでの演目に考え直さねばならないことになるのだろう。

左:観客席とステージ。 右:舞台裏手のフォワイエ・ドゥ・ラ・ダンスも過去のダンサーの肖像画を含めて、煌びやかに再現された。photography: ©︎Studio Lazareff – Arop

ダンサーたちにも、そして観客にも愛しのガルニエ宮である。その舞台裏も含めてシャルル・ガルニエが建築した劇場の創造性を確認できる100分の1の精巧な模型が劇場の見学中に鑑賞できるようになった。模型制作が基づいたのは、シャルル・ガルニエによるオリジナルの図面だという。

劇場150周年を記念して作られた縦断面の模型は長さ200cm、幅75cm。12カ月間、製作を託されたAtelier Duboisでは時に外部の3名の助けを借りつつ、4人がかかりきりで作業を進めた。5000ピース以上を、のべ8000時間をかけて組み立てたのだ。駆使された昔ながらの職人たちのサヴォワールフェールはさまざまで、さらにデジタル加工、レーザー切断、3Dプリンターといった現代の技も活用された。仕上げの塗装は全て手作業。劇場内部を灯すのは、光ファイバー照明システム。建築様式、さらにモザイクや絵画、天井画などあらゆる劇場内の装飾もまるで実物と変わらぬ美しさで再現されたのだ。舞台で踊るダンサーたち、劇場を訪問する観客に大いなる喜び、幸福感を与え続ける壮麗なるガルニエ宮よ、永遠なれ!と思わせる模型である。

左:大階段と天井。 右:天井画のディテール。photography: ©︎Studio Lazareff – Arop
左:竪琴の鉄格子が窓を飾るロトンド。この中でダンサーたちはクラスレッスン、リハーサルを行っている。 右:鏡とシャンデリアが続くグラン・フォワイエ。photography: ©︎Studio Lazareff – Arop

この展示は建築家シャルル・ガルニエの天才ぶり、さらに19世紀末に未来を見据えて劇場を設計した彼のビジョネアぶりに改めて触れる機会。来シーズンからはガルニエ宮の見学者だけとなるけれど、今シーズン中なら公演の際にも鑑賞ができる。おそらく大層な人だかりとなるだろうけれど、公演開始前や幕間にぜひ!

有名な8トンのシャンデリアもミニチュアで! 模型の製作はパリ・オペラ座の支援協会Aropのメセナたちの寄付により実現した。photography: ©︎Studio Lazareff – Arop

Palais Garnier
Place de l’Opéra,
75009 Paris
https://www.operadeparis.fr/
Google Map

大村 真理子

madameFIGARO.jpコントリビューティング・エディター

東京の出版社で女性誌の編集に携わった後、1990年に渡仏。2006年から「フィガロジャポン」パリ支局長を務めた後、フリーエディター活動を再開。主な著書は『とっておきパリ左岸ガイド』(玉村豊男氏と共著/中央公論社刊)、『パリ・オペラ座バレエ物語』(CCCメディアハウス刊)。