時計とジュエリー、永遠のパートナーともなりうるこのふたつ。だからこそ、ブランドやそのモノの背景にあるストーリーに耳を傾けたい。いいモノにある、いい物語を語る連載「いいモノ語り」。
今回は、ショーメのブレスレット「BEE DE CHAUMET」の話をお届けします。
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CHAUMET
BEE DE CHAUMET

シャイニーなハニカムモチーフには意味がある。
ショーメの数あるアイコンの中でも、とりわけスタイリッシュなコレクション「ビー ドゥ ショーメ」。今年、ほどよいボリューム感が魅力のモダンなブレスレットが仲間入りした。
ハニカムモチーフをあしらったブレスレットを手に取ってみると、驚くほどしなやか。小さなハニカム状のパーツを丁寧な職人技でリンクさせ、手首に柔らかくフィットする仕立てを実現しているのだ。しかも、そのパーツを丹念なポリッシュで仕上げているので、ひとつひとつのハニカムが鏡のような光沢で輝く。身体の動きにつれて白い光を反射し、質の高いダイヤモンドの煌めきも加わって、しっかりとした存在感があるブレスレットになっている。
ミツバチをテーマにした「ビー ドゥ ショーメ」は、さまざまなアイテムが豊富に揃い、ジュエリーのミックス&マッチを自由に楽しませてくれるコレクションだ。自然に敬意を払い、さまざまな表現で自然の豊かさを描き出すナチュラリスト ジュエラー(自然主義のジュエラー)ショーメにとって、ミツバチは特別なモチーフだ。花から花へとせっせと飛び回り、巣を蜜でいっぱいに満たすので、ミツバチは勤勉さや繁栄を表すシンボルになっている。
また王権や統治のシンボルでもあったため、かつてフランス皇帝ナポレオン1世はミツバチを自らの紋章と定め、身の回りのさまざまなものにあしらっていた。ナポレオン1世は、ショーメの創業者マリ=エティエンヌ・ニトを引き立て、宮廷のためのジュエリーを数々オーダーした歴史的顧客なので、そんな意味でもメゾンとミツバチは深い縁で繋がっている。パリのアーカイブにはミツバチを描いたドローイングが数多く保管され、現代の「ビー ドゥ ショーメ」のインスピレーションの源ともなっているのだ。

そして、もうひとつ覚えておきたいのは、ラッキージュエリーとしての意味。ヨーロッパでは「ミツバチが幸せを見つけて運んできてくれる」という言い伝えがあり、お守りとしても古くから大切にされているモチーフなのだという。
チャーミングで働き者のミツバチたちの巣を、コンテンポラリーな造形でグラフィカルにデザインしたショーメ。精緻を極めたハニカムモチーフは、1780年の創業以来、途絶えることなく進化を続けてきたメゾンのサヴォワールフェールの賜物。デザインと仕立てが優れているからこそ、タイムレスに愛してゆけるブレスレットになっている。
ジュエリー&ウォッチジャーナリスト
ジュエリー関係者の視察旅行でソウルへ。ロッテ百貨店内の「海南千日館」で食べたコースが絶品! 韓豚サムギョプサルなど、仕事を忘れるほどの美味でした。
*「フィガロジャポン」2025年7月号より抜粋
photography: Ayumu Yoshida styling: Tomoko Iijima text: Keiko Homma editing: Mami Aiko