ワインラバー憧れの地、シャンパーニュ・ランスへ。【クリュッグ編】
ワイン好きなら一度は訪れたい場所がある。それがフランス・シャンパーニュ地方。美しいスパークリングワインを生む、唯一無二の地。この夏、初めてランスを旅した。


シャンパーニュ地方はランス、エペルネ、トロワと3つの主要都市があるが、この地方を訪れる人のほとんどが、最大の都市でもあり玄関口でもあるランスを訪れる。
ちなみにエペルネにはモエ・エ・シャンドンなど大手メゾンがあり、その目の前を走るシャンパーニュ通りも有名。トロワは16世紀に建てられた木骨造りの家が並ぶ美しい町。シャンパーニュ地方に数日間滞在できる場合は、3エリアを巡るのもいいかもしれない。
パリからランスは、TGVで1時間弱。到着したらまず訪問したいのが、世界遺産のランス・ノートルダム大聖堂だ。シャルル7世など歴代のフランス国王が戴冠式を行った歴史的な場所。荘厳なゴシック建築とステンドグラスは必見だ。
歴史が息づく、クリュッグ家の邸宅へ。
大聖堂の周りに立つブーランジュリーやフロマジュリーを見ながらいざ、最初の目的地、クリュッグへ。

クリュッグといえば1843年にヨーゼフ・クリュッグが創業、初代当主となってから、現在6代目を務めるオリヴィエ・クリュッグまで脈々と一家で歴史を紡いでいるブランド。メゾンが“邸宅のよう”に感じるのは当然で、実際にオリヴィエは、ここで幼少期を過ごしていた。
館内は、随所にアイコンカラーであるダークチェリーが利いた空間。差し出された「クリュッグ グランド・キュヴェ 173 エディション」をひと口飲むと、一家に温かく迎え入れてもらえたような気持ちになる。


創業から173回目にブレンドされた173 エディションは、2017年に収穫されたブドウを中心に、150種のワインをブレンドしたもの。しっかりとした骨格がありながら繊細、長い余韻を持つこの味わいはクリュッグならでは。初代当主の夢は「気候の変化に左右されず、最高品質のシャンパーニュを毎年世に送り出す」こと。ドイツのマインツからランスへ、シャンパーニュメゾンのジャクソンで修業し、自身のメゾンを立ち上げ……そんなヨーゼフの歴史を聞いたり、ダークチェリーのレザーケースの中の、ヨーゼフ直筆のノートを見ながらクリュッグを口に含むと、まさにその“夢”を具現化したものだと実感できる。


一家の歴史、シャンパーニュ造りへの思いを聞きながら、いざ地下のセラーへ。アッサンブラージュ(ブレンド)の要であるリザーヴワインが静寂の中に並ぶ。さらに奥に進むと、格子に囲まれ施錠された一角が。ここは20世紀初頭のクリュッグなど、特別なヴィンテージが眠っている場所。なかには1915年など戦時下のボトルも。第一次世界大戦時、ランスの街は焼け野原となったものの、ヨーゼフの孫のジャンヌ・クリュッグは女性ひとり奮闘し、ブドウ畑そしてメゾンを守り続けた。そんな過去のストーリーとセラーの凛とした空気とあいまり、自然と背筋がピンとなる。
セラー見学の後に訪れたのはテイスティングルーム。ここではセラーマスターのジュリー・カヴィルを中心に、テイスティング委員会のメンバーが集まり、毎年400ものワインをチェックする。その結果5000以上のテイスティングノートが記録されていくという。
そんな特別な場所で体験したのは音楽とシャンパーニュのペアリング。オリヴィエ・クリュッグが6代目当主になってから考案されたのがクリュッグエコープロジェクトだ。2022年には坂本龍一が、今年はドイツ生まれのマックス・リヒターが楽曲を提供。
たとえば「クリュッグ クロ・ダンボネ 2008」はアンボネイ村のピノ・ノワールを100%使用したブラン・ド・ノワール。リヒターがこちらにインスパイアされて生まれた「Clarity」はピノ・ノワールの力強さ、単一畑の純度を表現。127種のワインをブレンドして造られた「クリュッグ グランド・キュヴェ 164 エディション」から生まれたのは「Sinfonia」。ピアノから始まり、管楽器が重なる交響曲は、巧みなアッサンブラージュから紡がれるクリュッグのハーモニーを感じさせてくれる。

メゾン内には録音が可能な音響施設、クリュッグ・スタジオも完備。クリュッグと音楽の親密さを感じさせてくれる空間だ。
メゾンを訪れ、セラーを歩き、歴史に耳を傾ける特別なランス時間。
初代当主が抱いたシャンパーニュ造りへの夢。180年以上たったいまなお、6代目オリヴィエ、セラーマスターのジュリー・カヴィル、プロフェッショナルなメンバーによって受け継がれ、クリュッグは美しいハーモニーを生み出している。
クリュッグ
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