フランスのシンガーソングライター4人が自身を語る。

Culture

伝統的なシャンソン、ピアノの弾き語り、エスニック、アフロポップ……、音楽のテイストも異なる4人が、それぞれのアルバムの紹介とともに自分自身を語ってくれた。


Barbara Pravi|バルバラ・プラヴィ

多国籍なルーツを持ち、正統派シャンソンを継承。

©Thibault Manuel

バルバラ・プラヴィ
1993年、パリ生まれ。2014年より音楽活動を始め、21年ユーロヴィジョン・ソング・コンテスト「Voilà」を歌い2位に輝く。25年に放送されたテレビドラマ「La Rebelle, les aventures de la jeune George Sand」にも出演。@barbarapravi

専門家から高い評価を受けたファーストアルバムに続き、2024年、バルバラ・プラヴィはアルバム『La Pieva』をリリースした。このアルバムのことは自ら「多様性があり、かつパーソナルなアルバム」と評している。25年4月からスタートしたツアーは今年3月まで続き、昨夏はラ・ロシェルのフランコフォリーのメインステージにも立った。

――『La Pieva』はどのように誕生したのか?

約10年前に音楽活動を始めた時、祖父から自分たちのルーツを書いた紙をもらいました。祖先は1750年代にセルビアとボスニアの間の山岳地帯を行商していたジプシーの女性で、とても歌が上手だったので、村人から「La Pieva(ラ・ピエヴァ=セルビア語で女歌手)」と呼ばれていたそうです。新曲を作っている時にこのことを思い出し、何かのお告げのように感じました。

――アルバムの内容は?

初のツアーやユーロヴィジョン・ソング・コンテストを体験して人生が一変したので、自分という女性についてあらためて考察してみました。自分のルーツ、大切にしている価値観、愛、母、さらには自分には理解し難く、なじめないと時折感じるこの世界についても触れています。

――このアルバムでの進化は?

自分自身の作詞・作曲スタイルがわかってきて、自分とじっくり向き合うようになりました。10代の頃に友だちと純粋に楽しくて音楽をやっていた頃のような、創る喜びも取り戻しました。

――制作過程で好きな段階は?

何もない無の状態、白紙の段階です。何も信じられない段階でもあります。蛇口をひねって出てくるものは大抵の場合、使い物になりませんが、その後の土台となることが多いものです。

――最新作がベストな作品?

いいえ。でも、いまの不完全な自分と調和している感じです。

――誰とコラボしたい?

実現するならマイリー・サイラス。彼女は完全にクレイジーで、超ロックで、スーパークールな人だと思うから。

――プロモーションで自分のことを話すのは億劫?

全然。とても楽だし、逆に自分に制御をかけないといけないかも。

――嫌な質問、答えないと決めている質問は?

政治に偏った質問でしょうか。政治について自分なりの考えはありますが、いずれにせよ「わからない」とか「答えたくない」と言っても構わないと思っています。誠実であれば物事はうまくいく。それは人生のすべてに当てはまります。

――何に怒りを感じる?

女性に対する暴力や、マイノリティに対するいじめ。街で攻撃的な人々を見ると本当に腹が立ちます。私たちは日々、自らの人間性を磨かなくては。

――言われてうれしい言葉は?

親切な人、プロ意識のある人だと言われること。

――誤解されていると思うことはある?

ユーロヴィジョンで優勝できなくて悔しがっていると思われているのなら、それは違います。2位でとてもハッピーです。

――自分を鏡で見て何を思う?

時と場合によりますね。とてもハッピーな気分になることもあれば涙ぐむこともあります。いずれにせよ、33歳の現在、自分で選んだ人生と仕事があり、自立していることを誇りに思います。

『La Pieva』
Barbara Pravi|バルバラ・プラヴィ
ヴァージン・ミュージック・フランス
>>Spotify

text: Marion Géliot (Madame Figaro)

Jeanne Cherhal|ジャンヌ・シェラル

スランプを乗り越え、ピアノの弾き語りで魅了する。

©Jean-François Robert/Modds

ジャンヌ・シェラル
1979年、ナント生まれ。12歳からピアノを習い始め、大学で哲学を学びながら音楽活動を続ける。2002年に自主制作のアルバムでデビュー。04年のアルバム『Douze Fois par An』がアカデミー・シャルル=クロ賞を受賞。@jeannecherhal

シンガーソングライターとして定評のあるジャンヌ・シェラルがピアノに向かい、書き上げた珠玉の13曲、7作目のアルバムタイトルはその名も『Jeanne』。アレンジを引き受けたのはバンジャマン・ビオレで、2011年の短編映画『Brandt Rhapsodie』の主題歌を一緒に作った仲だ。勇気にあふれ、時に自分を笑い飛ばす。詩情豊かなアルバムとなった。

――アルバムのきっかけは?

とても尊敬している友人、バンジャマン・ビオレのおかげです。2年以上前に、アルバムを作るよう勧められ、自分がアレンジするからと言ってくれたのです。スランプから抜けるきっかけとなりました。『Jeanne』は、私が立ち直った証であり、それまでの失敗が糧となりました。アルバムでは13の側面から自分を語っています。バンジャマンは金銀細工師のごとく、巧みに作り上げてくれました。

――アルバムで扱われているテーマは?

女性であること、性差別、さまざまなタブー。自分のことを語りたい気持ちがある一方で大げさにはしたくない。これは自分自身についてのアルバムです。時にユーモラスに、時にメランコリックになりながらも決して感傷的にはなりません。愚痴をこぼすのは好きではない。だからこそバルバラの歌が大好きなのです。彼女は悲しみにどっぷり浸るのではなく、純粋な悲しみそのものを舞台で表現します。

――いまの心境は?

幸せです。ツアー中は多くの人に囲まれていました。かつて自信を失ったのは孤独を感じたからでした。前作『L’An 40』が発売された直後にコロナ禍となり、ツアーも中止になってしまいました。さらにその後、レコード会社との契約も終了。今回のアルバムはどこのレーベルにも属さずに自主制作しようと決心しました。大きな賭けでしたが、とても満足しています。

――2025年のツアーはどうでしたか?

最大限楽しみました。舞台演出はローラ・レオナールというコレオグラファーに頼んだのですが、彼女は向かい合った2台のグランドピアノを重ねてひとつにした「双子のピアノ」を考案してくれました。実際に上がれる階段付きです。

――自分はどんな人?

血の気が多く、感性で動くタイプ。気持ちが高ぶると困った状態になりかねません。自由を渇望する気持ちも強いですね。それは自分にとってかけがえのないものです。仕事のおかげでますます自由になりました。

――何に怒りを感じる?

性的暴力の被害者の証言に対して勝手なことを言う人たち。「もっと早く話せばよかったのに」なんて発言は不謹慎だと思います。被害者が思考停止状態にあることを散々説明されたうえでそんなことを言うなんて。こうした機械的な反応にイライラします。その人たちが理解するまでにある程度時間が必要だとわかっていても。

――プロモーションで自分のことを話すのは億劫?

逆に光栄なことです。ただ、取材側の熱意が感じられない、明らかに準備不足のインタビューはシュールに感じます。

――インタビューに理想的な服装は?

私のベストは、ジミー・チュウの黒いヒールブーツに、スリムジーンズとダブルのブレザーを合わせたスタイルです。

『Jeanne』
Jeanne Cherhal|ジャンヌ・シェラル
Tibia/Décibels Productions
>>Spotify

text: Paola Genone (Madame Figaro)

Clara Ysé|クララ・イゼ

言葉にこだわり、自身の声の領域を広げ続ける。

©Jean-François Robert

クララ・イゼ
1992年、パリ生まれ。幼い頃から声楽を学び、2019年に初のEP、23年にデビューアルバム『Oceano Nox』をリリース。一方で作家活動も行い、21年に小説『Mise à Feu』、24年には詩集『Vivante』(Seghers刊)を出版。@clara_yse

歌手、詩人として活躍するクララ・イゼは2023年のデビューアルバム『Oceano Nox』によって脚光を浴びた。声楽家としての訓練を受けた声に重層的なエレクトロサウンド、そして硬質でミネラルな響きを重ね合わせたポリフォニーは、金管楽器に加え、イランのドゥドゥクなどの楽器を使用している。舞台での表現力にも定評があり、25年の夏は各地の音楽フェスティバルに出演、9月にはパリ・オランピア劇場で初
公演を行った。

――あなたの音楽活動を支えているものは?

自分にとって音楽とは、聖杯探求の旅のようなもの。作曲する時は捉えられないものを捉えたい欲求に動かされています。この感覚はラカンの「欲望とは、人間を突き動かしながらも常に曖昧で幽霊のようなもの」だそうです。『Oceano Nox』は一連の直感や、エモーショナルな音楽言語の追求から生まれ、制作には4年を要しました。

――あなたの音楽はどんなものでできている?

詩人として、音楽家として、集めてきたツールで成り立っています。ひとつはクラシック音楽との関係性。声楽を子どもの頃から学んできました。もうひとつは詩への愛着。詩は妥協を許さない言語だからです。『Oceano Nox』の旋律は南米や中東、特にイランとギリシャの伝統音楽の影響も受けています。いつだって自分の声の領域の可能性を広げたい、過去からの継承も伝えたいと思っています。人の記憶は、儚いものですから。

――自分はどんな人?

中途半端が嫌い。白黒はっきりさせる性格です。でも人はそう単純じゃないとも思っています。社会の中ではひとつの固定的な人格を作らなくてはならないけれど、音楽や芸術は人間が矛盾や逆説に満ちていることを思い出させてくれます。

――プロモーションで自分のことを話すのは億劫?

全然。プロモーション活動は、ひとつの事柄に関して対話をし、思考を喚起してインスピレーションが得られる非常に有意義な方法。自分の考えを言葉でまとめることで、それが明快できちんと組み立てられているか、破たんしていないかが見えてきます。

――インタビューに理想的な服装は?

ステージではいろいろ変身して楽しみますが、取材の場では着ていることを意識しないようなシンプルな服装がいいですね。

――受けたくない質問は?

あまりに個人的な質問。創作活動と直接繋がりのある要素以外、アーティストのプライベートを知りたがる意義を見いだせません。メンタルヘルスへの関心は最近高まっていますし、自らの体験を語るのは興味深いことでしょうが、共有すべきは熟考の末の成果であるべきです。

――いま、気がかりなことは?

1年半で200回のコンサートをこなして気付いたのは、地理的要素や建物によって自分の声や楽器の演奏が変化することでした。この相互作用は毎回異なる結果をもたらします。また、最近実感しているのは、喉を鍛えれば声域は豊かになり、1本の筆のように巧みで明瞭なものになる。でも、完全に思いどおりの声を出すテクニックは存在しません。なぜなら声にはそれまで目にしてきた風景、心に刻まれた人たちの顔、模倣で得た音が含まれているからです。声は自分が意図した以上に雄弁です。

『Oceano Nox』
Clara Ysé|クララ・イゼ
Tôt ou Tard
>>Spotify

text: Paola Genone (Madame Figaro)

Aya Nakamura|アヤ・ナカムラ

いまフランスで最も人気のアフロポップシンガー。

©Fifou

アヤ・ナカムラ
1995年にマリ共和国で生まれ、フランスに移住。2015年より音楽活動をスタート。18年のセカンドアルバム『Nakamura』に収録された「Djadja」が世界的に大ヒットし、24年のパリ・オリンピック開会式でパフォーマンスを行った。@ayanakamura_officiel

現在、ツアーを準備中で、今年5月にスタッド・ドゥ・フランスで開催される3公演はすでに完売。2018年の大ヒット曲「Djadja」の歌手アヤ・ナカムラは、Netflix「リズム+フロー:フランス編」シーズン4にも出演中だ。23年よりランコムのグローバルアンバサダーのひとりでもある。

――最近の活動は?

昨年11月にアルバム『Destinée』をリリースしました。

――ランコムとの共通点は?

自分らしくあることを恐れないブランドです。多様性、成功、大胆さ……だからミューズにジュリア・ロバーツやイザベラ・ロッセリーニのようなアイコンだけでなく、現代に生きる中国人女優のニーニーや私もいるのです。昨年のホリデーキャンペーンには4人で登場しました。

――これまでにいちばん役に立った美容のアドバイスは?

「美は内面がもたらす」。やや陳腐なセリフですがこれは真実です。自信は人に伝わるし、外見に現れます。

――自分を鏡で見て何を思う?

強さと弱さを併せ持つ自分が見えます。自分という人間、自分の出自、挑戦する自分を誇らしく思います。

――自信を持たせてくれる化粧品は?

良質のグロス。たとえばランコムのジューシー チューブが大好きです。若い頃からつけていて、ダークな肌に合う2色のキャンペーンに起用されたのは、ちょっと達成感がありましたね!

――プロモーションで自分のことを話すのは億劫?

時と場合によります。取材を重ねると、自分の言葉が軽くなったように感じてしまうけれど、それも仕事ですからね……。

――誤解されていると思うことはある?

たくさんあります。生意気だとよく言われますが、実際の私はいつも夢を追いかけて、その実現のために闘うひとりの女性なのです。そばにあまり人を寄せ付けないのは傲慢だからではなくて、自分を守るためです。

――嫌な質問、答えないと決めている質問は?

プライベートに関する質問。自分はアーティストで、セレブじゃない。私生活があり、家族もいます。そこは私だけの空間。何もかもさらけ出す必要はないと思います。

――言われてうれしい言葉は?

私の音楽に助けられた、インスピレーションを受けた、ハッピーになったと言われることです。それが最高のご褒美。ファンからの支えが大事です。

――あなたの人生のヒロインは?

身内のパワフルな女性たち。そして娘ふたりは最高のインスピレーション源です。

――自己肯定感をどう高めている?

自分にとっては音楽こそが、完全に自分らしくいられる場所です。自分が作る曲、歌う曲のどれもが自分の内なる強さを表現しています。すべてを自分でコントロールしているので、何を見せて見せないかも自分で決めます。

――最近、自分をほめてあげたいと思ったことは?

特定の瞬間ではないですが、これまでの自分の道のりを誇りに思っています。迷う時期もありましたが、いまもここで頑張って働いています。

――最も自由を感じる場所は?

スタジオにいる時。無制限、無批判でなりたい存在になれる場所だから。音楽は私を解放してくれます。

『Destinée』
Aya Nakamura|アヤ・ナカムラ
ワーナーミュージック・フランス
>>Spotify

text: Victoria Hidoussi (Madame Figaro)

*「フィガロジャポン」2026年6月号より抜粋