なぜ韓国には“歌姫”が少ないのか? K-POP大国が生んだ孤高のディーヴァたち。
日本とは異なり、ソロの女性シンガーの活躍が目立たない韓国。圧倒的なグローバル人気を誇り、“第二のハリウッド”となったソウルで、静かに、大胆に咲き誇る数少ないディーヴァとは? そこで、韓国エンタメ事情に精通するふたりのギークが孤高の歌姫についてとことん語り合った。
自ら音楽を創造し歌う宇多田ヒカル、アスリートのような人生を送った安室奈美恵など、日本には時代の縫い目、節目にアジアでも人気を博す「歌姫」が登場する。かつては、台湾からテレサ・テンという存在がグローバルの支持を得たことも。一方、アイドルグループが百花繚乱、世界基準となる韓国。ソロで活躍するアーティストはいるものの、ディーヴァとして君臨する歌手は相対的に考えて数少ない。本当に韓国ディーヴァはいないのか? なぜアイドルがここまで発展しているのにソロは希少なのか? そんな議題を、客観・主観の視点を交えながら分析していく。
知識と好みには偏りはあるが、そこは韓国エンタメをこよなく愛する音楽ライターの本田珠里とエディターの三谷徹、ふたりの「偏愛」と「情熱」だと受け取ってほしい。
韓国ディーヴァ発足の起点、1998年説。
三谷徹(以下三谷) なぜ、女性に限らずシンガーソングライターが少ないんですかね。本田さんにとっての、音楽も作る初のディーヴァは誰?
本田珠里(以下本田) 私の中の元祖は、ユン・ミレ(97年〜)です。韓国においての女性によるヒップホップの起源かも。

YOON MI RAE
ユン・ミレ|윤미래
1981年、アメリカ生まれ。16歳にてヒップホップユニット、UPTOWN のリードボーカルとしてデビューし、TASHA(ターシャ)名義でも活動。韓国においてブラックミュージックが広まるきっかけとなったレジェンド。
@yoonmirae
三谷 (映像を観ながら)え、めちゃくちゃカッコいいですね! ラップできて歌も厚みがあって。ソウルフル。
本田 J-JOPE(BTS)のソロ曲「Neuron」(2024年)に客演するなど、いまでもシーンの絶対的存在。夫はDRUNKEN TIGER(99年〜)のラッパー、タイガーJKで、最近でも一緒に楽曲制作を行っています。
三谷 ユン・ミレが登場した90年代って日本ではR&Bが隆盛で、音楽性の高いディーヴァがてんこ盛りでしたよね。UAやSUGAR SOULとかとか、USの“お色気爆弾”みたいな感じがなく日本のアイデンティティもあって。
本田 ほんと! 私はSAKURAが好きで、彼女の音楽性とどこか似た部分があるユン・ミレにハマって。
三谷 韓国って天然的にブラックミュージックが根付いているじゃないですか。音楽マニアじゃない層も自然にヒップホップで踊ったりするし。
本田 それなのに、なぜ?ってことですよね。私もなんで宇多田ヒカルのような人が韓国にいないのか考えたのですが、多分、男性の権力が強かったお国柄というか、政治、文化的背景が大きいと思います。
三谷 日本カルチャーを排除する時代がありましたしね。
本田 そう、98年に金大中(キムデジュン)政権になって、ようやく韓国は転換期を迎えます。日本のカルチャーが公に解放されたのも、その頃。想像以上に当時はまだまだ女性が進出する基盤はできてなかったのかなと。
三谷 98年から女性がエンタメの世界の中でいちから頑張ってきた……ってことか。すごく理解できます。
女性性を拡大した、2008年黄金期。
本田 実際にヒップホップではソテジワアイドゥル(92〜96年)、アイドルではH.O.T(96〜01年)など男性がシーンを席巻してました。
三谷 本当。男ばっかり。
本田 オム・ジョンファ(93年〜)など、男性優位な中でも地道にスターへの階段を上っていく歌手もいましたが、本格的に女性がエンタメ界で頭角を現してきたのは、デジタル化が始まってからですよね、やっぱり。
1990年代から2020年代まで羽ばたき続ける、韓国版マドンナ

UHM JUNG HWA
オム・ジョンファ|엄정화
1971年、韓国生まれ。93年、映画『風の吹く日はアックジョンへ行かなくちゃ』でデビューし、同年に音楽活動を開始。時代にアジャストしたカメレオンスタイルから“韓国のマドンナ”の異名も。
©Lee Young Ho/Sipa USA/amanaimages
三谷 YouTube爆誕(05年)。MVで音楽を拡散していったのは画期的でしたよね。僕が初めて射抜かれたディーヴァは、イ・ヒョリ(98年〜)です。安室奈美恵の信者(いまも)だった自分が、初めて同じくらいハマれる存在で。USを意識したセクシー路線でしたが痛々しさは皆無で、完全に自分のものにしてました。

LEE HYO RI
イ・ヒョリ|이효리
1979年、韓国生まれ。98年、Fin.K.L.(ピンクル)としてデビュー。2003年よりソロ活動を開始し、韓国初のセクシーさを前面に打ち出すキャラで大ヒット。ヨガに励み済州島で暮らすという真逆の生活を経て、いまにいたる。
©Lee Young Ho/Sipa USA/amanaimages
本田 「U-Go-Girl」(08年)は国民的な曲になりましたし、あの頃の彼女への熱狂はすごかったです。マイナーなラッパーを起用したり、うまくブラックミュージックを取り込んでいた。
三谷 同じ路線だとソン・ダンビ(07年〜)も好きでした。椅子の背を使って大股開きするパフォーマンス「Crazy」(08年)は伝説。
Y2K特有の女性性を謳歌するコンセプトで、大きく飛躍

SON DAM-BI
ソン・ダンビ|손담비
1983年、韓国生まれ。モデル活動を経て、2007年歌手デビュー。ヒットメーカー、勇敢な兄弟などのプロデューサーを起用し数々の楽曲がヒット。最近ではNetflixドラマ「マスクガール」(23年)に当時の楽曲が使用された。
©Lee Young Ho/Sipa USA/amanaimages
本田 (笑)。映像と歌詞のキャッチーさで惹きつける流れが完成した時期ですね。確かにこの頃の彼女たちはいまいないタイプのいわゆる“ゴージャスなディーヴァ”って感じ。
三谷 “歌姫”ではないですよね。イ・ヒョリさまはリップシンクを公言してましたし。
本田 口パク議論でしたら、私、持論があります。基本的にはNGですが例外はアリ。たとえば、この頃にも人気を博していたオム・ジョンファがそうです。
三谷 T.O.Pさん(BIGBANG)が客演の「D.I.S.C.O」(08年)を出していましたね。当時トレンドだった80年代調。
本田 同名アルバムの収録曲にはG-DRAGONも参加という豪華さ。こうやって彼女は時代時代の“いま”を掴んでいくんです。パフォーマンスの内容によっては生歌にするし、口パクにもする。歌い方も調整したり。その柔軟なエンタメ対応力もディーヴァの資質だと感じていて。
三谷 わかる気がします。歌を作ってないから浅い、歌ってないから完全にダメ……と判断はできないですよね。歌姫の基準って複雑だなあ。
本田 国民的な歌姫といえば、やっぱりIUになるのでしょうか。自ら楽曲も手がけていますしね。
パワーウーマン全盛期に独自のイノセント感で天下をとる

IU
アイユー|아이유
1993年、韓国生まれ。学生時代より多くのオーディションを受け続け、2008年、15歳でデビュー。高いソングライティング能力、純粋無垢なオーラで韓国国民の心を掴んだスター。俳優として数々のヒット作にも出演。
©Lee Young Ho/Sipa USA/amanaimages
三谷 2000年後半のセクシータイフーンが起きている中で突如として出てきた「Good Day」(10年)は衝撃でした。後半のハイトーンボイスと転調連打で一躍国民的スターになった記憶。
本田 品行方正でシーンと路線が真逆でしたし、自ら作詞も作曲も率先して手がけていた。韓国のポップの中では本当に新しい風になっていましたね。
三谷 俳優としての彼女が僕は大好き。ドラマ「ドリームハイ」(11年)ですでに才能が開花していた。是枝(裕和)監督の作品(『ベイビー・ブローカー』22年)に出たり、マルチな活動も歌姫という切り口で考えるとおもしろい。
本田 公然の事実ですが、チャン・ギハ(チャン・ギハと顔たち、のメンバー)と交際していて、アイドル的なところからまた抜けていった印象もあります。
三谷 え、マジですか? 韓国ロックの価値を上げたパイオニアですよね、彼。どおりで「Bbibbi」(18年)みたいなこなれた曲が生まれるわけだ。
グループ派生のソロ、歌姫の境界線。
本田 2000年代後半から10年代はボーイズグループに負けじとガールズグループの勢いが増した時期。おのずとスピンオフとしてソロ活動が目立ってきたのもこの時期でした。
三谷 となれば、あの人ですよね。
本田 そうです。あの人です。2NE1、CL(09年〜)です。

CL
シーエル|씨엘
1991年、ソウル生まれ。幼少期をフランス、日本で過ごし、2009年、2NE1のラッパーとしてデビュー。“ガールクラッシュ”という新概念で瞬く間にスターに。彼女に影響を受けたアイドルは多数。最近は2NE1としてライブも行った。
©Lee Young Ho/Sipa USA/amanaimages
三谷 やっぱり! 僕の中でのグループ派生系ディーヴァといえば彼女。初めてライブを観た時のステージの掌握術や“これでもか”という気迫にやられて。
本田 ラッパーとしての才能はもちろん歌のレベルもすこぶる高かった。初のソロ曲「The Baddest Female」(13年)の圧倒的な迫力……最高でしたね。
三谷 2NE1が解散した時期にスクーター・ブラウン(アリアナ・グランデやジャスティン・ビーバーを手がけたプロデューサー)と契約した報道があったけど、USデビューはお蔵入りになったみたいで。リークされた楽曲とMVをたまたま観ましたがめちゃくちゃカッコよかった!
本田 グループからソロ――この図式でいえば何人もいるじゃないですか。でもCLのような言語化できないオーラを纏っている人は限られますね。同じく、元SISTARのヒョリン(10年〜)も逸材。大好きです。

HYOLYN
ヒョリン|효린
1990年、韓国生まれ。2010年、SISTAR のリーダーとしてデビュー。セクシーでパワフルな独自のテイストで一躍トップへ。彼女をロールモデルとして挙げる声も多く、ソロになってますます歌唱力が上がっていると話題に。
三谷 韓国でスーパーマイナーな日焼け肌、ダイナミックなステージングは圧巻だし、年を追うごとにカッコよさが増してる。2年前、テレビ番組「The Seasons」で名曲「Ma Boy」(11年)を披露していて、そのパフォーマンスが最高すぎて泣きました。観客全員の心を鷲掴んでいて。
本田 CLやヒョリンみたいに、他者の目線を意識しない感覚というか、“これが私ですから!”みたいな周りを気にしない精神って、ディーヴァの条件。元BROWN EYED GIRLSのガイン(06年〜)もそうです。

GAIN
ガイン|가인
1987年、韓国生まれ。オーディション番組を経て、2006年、BROWN EYED GIRLSの末っ子としてデビュー。奇抜な世界観でファンを魅了し、ソロのMVでは、韓国において禁じ手となるセルフプレジャーを想起させるなど、独自の存在感を発揮。
三谷 本来の韓国らしい一重のアーモンドアイで、あそこまで支持されたのって偉業ですよね。自分という個を信じて突き進む姿勢を感じられるというか。
本田 ルッキズムがいまより強かった時期に、ガインのように整形に頼らず個性をまっすぐに前面に出すスタイルは、かっこいいのひと言。その意味でいえば、MAMAMOOのファサ(14年〜)のオーラも素晴らしい。

HWASA
ファサ|화사
1995年、韓国生まれ。2014年にMAMAMOOとしてデビューし、19年Twitでソロデビューも果たす。TVですっぴんを公開するなど、その飾らない姿勢に多くのファンが共感。グローバル人気も常に上昇する歌姫に成長した。
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三谷 確かに。ソロ曲の「Maria」(20年)など率先して自ら歌詞を書いている。
本田 DPR LIVE(ラッパー)のような音楽好きにも刺さるクリエイターとコラボしたりするし、時代に沿わせつつ自然体にディーヴァ像を創り上げていますよね。好きです。
三谷 ファサはルッキズムやボディポジティブといった視点でも影響を与えていますが、それをブランディングとしてやってない天然発動感がカッコいい。
本田 彼女はオム・ジョンファ、イ・ヒョリと一緒にREFUND SISTERS(払戻遠征隊、20年)として短期限定活動をしてましたね。ラッパーですが歌の実力も兼ね備えているので、メンバーのジェシー(05
年〜)も歌姫かも。
本場US仕込みのラップスキルと、気高いコンフィデンス

JESSI
ジェシー|제시
1988年、アメリカ生まれ。2005年にソロデビュー、14年には現在の名義で再びスタートを切った。大胆な発言やパワフルなラップ、歌の表現は韓国ではなかなか見られないタイプ。定期的に新曲を発表している。
©ZUMAPRESS/amanaimages
三谷 あの4人はまさに韓国のディーヴァ。20、30、40、50代と4世代が集まったのも画期的でした。ジェシーは曲を作っているのでしょうか?
本田 はい。ラップに軸足を置いているのでリリックを書くのはもちろんトラックメイキングにも関わっています。
三谷 セルフプロデュース能力に長けるアイドルグループ所属の人といえば、ソヨン(I-DLE、18年〜)も忘れてはいけませんね。本格的なソロの活動はこれからだと思いますが、ずば抜けたセンスとオーラがまぶしい。

SOYEON
ソヨン|소연
1998年、韓国生まれ。オーディション番組での落選をバネに、2026 年、ソロとして、同時に(G)I-DLE(25年、I-DLEへ改名)のリーダーとしてデビュー。プロデューサーとしての才能が開花し、ボーカルディレクションまで行う新型歌姫。
本田 I-DLEでリリースした「Mono」(26年)が非常にコンテンポラリーで斬新な楽曲。メッセージ性も強く話題になりましたが、あえて自分が作ったと主張せずクレジットを変えていたのも好感が持てる。
三谷 みな、ステージに立った時の堂々とした態度やダンスや衣装といった要素で惹きつける力がすごいですね。逆に、歌一本というか歌い上げることで勝負している人って誰なのでしょうか。
本田 そういった意味では、韓国のお家芸とも言えるドラマの劇中歌、壮大なバラードで才能を認めれたシンガーかな。
三谷 え、そこ僕はノーマークかも!
ドラマの“OST”から始まる、国民的なバズ。
本田 私、13年に福岡でGUMMY(03年〜)をライブハウスで観て。生歌が素晴らしかった。

GUMMY
コミ|거미
1981年、韓国生まれ。2003年、韓国で数少ない女性のソロシンガーとしてデビューし、ハスキーな歌声と確かな実力で認知度がアップ。ドラマの主題歌や劇中歌として多くの名曲を生み、バラード歌手としての地位を確立した。
三谷 YG ENTERTAINMENT(BIGBANG、BLACKPINKなどの事務所)に所属していましたよね。僕もYGファミリーコンサート(事務所主催のライブ)で観たことありますが、すごかったです。
本田 GUMMYはYGを出た後のほうがその歌唱力を評価されています。そのきっかけになったのが最高視聴率40%以上を記録したヒットドラマ「太陽の末裔」(16年)の主題歌「You Are My Everything」です。
三谷 あれがコミ姐(GUMMY姉さんの略)の曲? めちゃ流行りましたよね。
本田 あの後、彼女はドラマのOSTの主題歌、劇中歌職人と化してその卓越した歌声一本で国民から認められる存在になりました。
三谷 ほかにもいるんですか? 職人。
本田 います。ドラマのクライマックスで涙を誘うための仕掛けとしてもはや文化です。女性デュオのダビチ(08年〜)も同じく「太陽の末裔」の「This Love」(16年)や「愛の不時着」の「Sunset」(19年)など韓国のみならず、グローバルに知られている名曲がたくさんあります。

DAVICHI
ダビチ|다비치
イ・ヘリ(1985年、韓国生まれ)とカン・ミンギョン(90年、韓国生まれ)によるデュオ。2008年にデビューし、そのハーモニーは“ソロ”のようなシンクロ感。ひたむきに音楽と向き合う姿勢が共感を呼び、安定した人気を誇る。
三谷 (聴きながら)あ、コレってジョンヒョク(ヒョンビン)がアロマキャンドルでユン・セリ(ソン・イェジン)を探してたシーンで流れるやつ!
本田 バラードならではの歌唱力や抑揚に支持が集まる“OSTライン”の歌姫は、ほかにも数多くいます。
三谷 なるほど。韓国のパワーエンタメであるドラマが起爆剤となって、女性のシンガーが活躍する仕掛けができているのですね。日本にはない流れだ。
コリアン・ディーヴァの本質は、どこ?
本田 ドラマのOSTがヒットに繋がるのって、ドラマという物語に沿って一枚のアルバムができて、音楽の物語が完成するじゃないですか。デジタル配信に着手したのも早かった韓国では、基本は楽曲単品主義。MVのクオリティも高いけど、一曲、一曲で完結するイメージです。そこを変えないと“物語”を語れるアーティストは増えないのかもしれません。
三谷 パリパリ文化( 早く早く!と最速で動く姿勢)ですしね。ストーリーを綴るような感覚で全12曲のアルバムをしっかり作って、丁寧に音楽をアウトプットする方法で変わる何かは……ある、かも。
本田 アンビエントを取り入れながら実直に音創りに励むペク・イェリン(15年〜)や、R&Bにシティポップのエッセンスをうまくミックスして独自の音を奏でるBIBI(19年〜)など、高い音楽性と聴き込みやすいポップ感を兼ね備えたシンガーソングライターは少しずつ増えてきてはいます。ペク・イェリンはアルバムごとに世界観を変えていて、最近はポジティブなオーラも加わり、個人的にはもっともっと大物になると予想しています。単独コンサートを開催すればチケットは完売、韓国の音楽フェスでもヘッドライナーを務めるほどの存在です。

BAEK YERIN
ペク・イェリン|백예린
1997年、韓国生まれ。わずか10歳で「コンテンポラリーR&Bの天才」と称され、2012年、15&のメンバーとしてデビュー。15年にソロとして再デビューを果たした。メジャーシーンとマイナーシーンを結ぶ貴重な存在。

BIBI
ビビ|비비
1998年、韓国生まれ。2018年、ユン・ミレの紹介でオーディション番組に出演し、翌年ソロデュー。ヒップホップやR&Bをベースにしながら“ダークスイート”な相反する要素を織り交ぜる音楽スタイルで、多くの支持を集めている。
©ZUMAPRESS/amanaimages
三谷 あと思い出したのが、CIFIKA(16年〜)。アルバム『Bonfire』を軸にしたライブ映像をフルで観てかなり痺れました。アンビエント、エレクトロの使い方がオーガニックで魂が籠もっていて。

CIFIKA
シフィカ|씨피카
1990年、韓国生まれ。2016年よりSOUNDCLOUDに自身の楽曲をアップし、LAから韓国へ移住、ソロ活動を開始。エレクトロに軸足を置きながらも既聴感のないシックでエッジのある楽曲を生み出す、UKでも評価される新生。
© Kigon Kwak
本田 声の広がりも美しいし、かなりの実力派ですよね。着実にリスナーも増えてるし、年々評価が高まってきていてうれしいです。
三谷 90年代から女性のアーティストを追ってきた本田さんですが、これからの時代をつくるディーヴァってズバリ誰?
本田 イ・ヨンジ(19年〜)!

LEE YOUNGJI
イ・ヨンジ|이영지
2002年、韓国生まれ。ふたつのオーディション番組を経て、19 年デビュー。バラエティ番組の司会を務めるなど、音楽界以外でもその才能を発揮。たくましいボーカル、ラップは一度聴いたら耳から離れず人気急上昇中。
三谷 きた!!!!!
本田 ヒップホップサバイバル番組「高等ラッパー」(19年)出演時から追ってますが、23歳とは思えない圧倒的な歌唱、表現力とラップスキル、威風堂々としたオーラに加え、芸人ばりのユーモアセンスなど、司る要素の組み合わせがおもしろい。陽キャだけど、歌詞には真摯な部分や葛藤も表れていて人間性を感じるし、これからの進化に注目したいです。デビューEP『16 Fantasy』(24年)はいまでも愛聴盤!
三谷 系譜として、ちゃんみなに似ていますよね。ラップもできて歌のスキルもすこぶる高い。アイドルのようなスキニーな体形でもなければ、飾ったりもしない。まさにニュータイプ。SNSのショート動画だけでも感動できるほどです。
本田 SNSがメインストリームになり、以前のように音楽の余韻に浸る時間も少なくなってきました。だ
からいまこそ、余韻に浸らせてくれるようなストーリー性のあるアーティストが増えてほしいです。
三谷 アイドル、団体芸としては世界トップにまで君臨したのだから、きっとこれからソロのアーティストもどんどん育っていくはず。韓国カルチャー好きとして期待が高まります。
本田 ですね! ひとまず、若き逸材でもあるイ・ヨンジのアーティストとしての成長を母目線で応援していきたいです。
三谷 僕も同じく!
JURI HONDA
本田珠里。音楽ライター。2002年、ユン・ミレのCD『GEMINI』を手に取って以来、K-POPからインディーズまで多彩なジャンルを嗜むように。渡韓の度、ライブハウスや音楽フェスを巡る、無類のライブ好き。
TORU MITANI
三谷徹。エディター、アートディレクター。ドラマ「フルハウス」(2004年)で韓国が好きになり、08年、BIGBANG、イ・ヒョリに出会い本格的にダイブ。好きな韓国映画の監督はイ・チャンドンとホン・サンス。
- editing: Toru Mitani
*「フィガロジャポン」2026年6月号より抜粋