なぜ多くのサッカー選手がピッチ上でピンクのシューズを履いているの?【ワールドカップ2026】
サッカーワールドカップは開幕からまだ数日しか経っていないが、すでに試合ではある傾向が浮き彫りになっている。
ワールドカップ2026を象徴するカラーは……ピンク! サッカーのワールドカップは開幕したばかりだが、すでにピッチ上ではひとつの傾向が目立っている。本来なら観客は各チームを簡単に見分けられるはずだが、選手たちの足元に注目すると、今年は少し事情が違うようだ。というのも、一部の例外を除いて、蛍光ピンクのシューズが多くの選手たちの足元を彩っているからだ。その結果、フランス代表、南アフリカ代表、さらにはアメリカ代表の選手たちまで、どのメーカーのシューズを履いているのか見分けるのが難しくなっている。

(2026年6月16日、イーストラザフォード)photography: Behar Anthony/SPUS/ABACA
各ブランドがワールドカップのために特別に用意したコレクションを見ても、その傾向は変わらない。プーマの「ショータイム・パック」にはオレンジやブルーのディテールが施され、アディダスの「ロード・トゥ・グローリー・パック」にはホログラム仕様のソールが採用されている。ナイキの「ブレイクアウト・パック」には蛍光イエローのアクセントが加えられ、ニューバランスの「ピュア・アンビション・パック」にはゴールドのロゴがあしらわれている。さらに、スケッチャーズの「サンセット・パック」は夕焼けを思わせるグラデーションデザインが特徴だ。しかし、こうした違いがありながらも、これらのシューズに共通しているのは、いずれも鮮やかなピンクを基調としていることだ。かつてこの色は、ファッション面で特に先進的な選手たちだけが身に着けるものだった。2008年、ピンクのスパイクを履いて試合に出場した初のサッカー選手として、ニクラス・ベントナーが大きな物議を醸したことを覚えている人も多いだろう。だが今では、ピンクのサッカーシューズはごくありふれた存在になっている。
ピンクに込められた意味
かつて濃いピンクは、単なる赤色の一種とみなされていた。しかし、この色を広く知らしめたのは、1910年代に活躍したフランスの著名なデザイナー、ポール・ポワレだった。「フューシャピンクや鮮やかなピンクは、当時、モダニティを象徴する色となり、エキゾチシズムやスピード感、都市的な視覚文化と結び付けられるようになりました」と、色彩史を専門とする美術史家のアレッサンドラ・ロネッティは説明する。そして、この流れは1936年、ファッションデザイナーのエルザ・スキャパレリが生み出した「ショッキングピンク」によって頂点を迎えた。その後、この色は「ホットピンク」へと姿を変え、1953年公開の映画『紳士は金髪がお好き』で、マリリン・モンローが身にまとったことで世界的な注目を集めた。しかし、その後は1950年代から1960年代のファッションシーンで次第に姿を消していった。
1980年代にはネオンピンクが大流行し、エアロビクスを通じて徐々にスポーツ界へと浸透していった「フューシャピンクやアシッドピンクは、視覚的なインパクトを重視する時代を象徴する色となり、ポップミュージックやミュージックビデオ、そして躍動する身体の美学と強く結びついていました」と、アレッサンドラ・ロネッティは説明する。そして2022年、この色は再び脚光を浴びることになる。グレタ・ガーウィグ監督による実写版『バービー』で、マーゴット・ロビーが主人公バービーを演じたことが、その復活の大きなきっかけとなった。
ピンクは一般的に女性らしさを象徴する色とされてきたが、今では男女を問わず身に着けられている。また専門家は、ピンクが緑色の芝生の上でひときわ目立つ色であることにも言及している。「ピンクは視線を引きつけ、スピード感や現代性を演出します。また、ブランドにとっては、一目でそれと分かる製品を生み出すことができる色でもあります」と彼女は説明する。もっとも、その戦略は今年に限って言えば、必ずしも期待通りの成果を上げたとは言えないかもしれない。なぜなら、多くのブランドがそろって鮮やかなピンクを採用した結果、かえってどのメーカーのシューズなのか見分けにくくなってしまったからだ。
予言か、それともインスピレーションか?
もしかすると、各ブランドがそろって同じアイデアにたどり着いたのは偶然ではなかったのかもしれない。誰かが事前にその流れを示していた可能性がある。実際、2024年に世界最大級のトレンド予測企業のWGSNは、「エレクトリック・フューシャ」を2026年春夏シーズンを象徴するカラーとして選定していた。そしてこの予測は、いわば“自ら実現する予言”のような形となる。2026年5月から6月にかけて、「フューシャ」や「ビビッドカラー」といった検索ワードのGoogleトレンド上の検索数は、2025年の同時期と比べてそれぞれ18.3%、41.3%増加した。つまり、2026年ワールドカップでピンクのサッカーシューズが目立つ現象は、単なる偶然ではなく、数年前に示されたトレンド予測が現実を後押しした結果とも言えるのだ。

(ベルリン、2026年6月16日)photography: DPA/ABACA
サッカーの男性用シューズにおいて、ピンクは全体のカラーパレットに占める割合を1%強伸ばした。そして、この流れはほかのスポーツにも広がっている。テニスコートやバスケットボールのコートでも、ピンクはいたるところで見られるようになった。今週、ベルリンで行われた試合では、チェコのカロリーナ・ムチョバとダブルスのペアを組んだセリーナ・ウィリアムズが、ピンクのシューズを履いて登場した。気分まで明るくしてくれるピンクトレンドが、まもなく私たちの足元にもやってきそうだ。
From madameFIGARO.fr
※この記事は、フランスの新聞社「Le Figaro」グループが発行する「madame.lefigaro.fr」で掲載されたものの翻訳版です。データや研究結果はすべてオリジナル記事によるものです。
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- text: Axelle Dusart (madame.lefigaro.fr) translation: Hanae Yamaguchi