ガルニエ宮が5年クローズする前に見ておきたい、劇場の魅力も取りこんだ『天井桟敷の人々』。
9月28日にケネス・マクミランの『マノン』で開幕するパリ・オペラ座バレエ団の新シーズン2026/27。これは2027年7月に舞台の工事に入るガルニエ宮の最後のシーズンである。工事の予定が2年から5年に延長されてしまい、その間、劇場見学は可能とはいえ、ガルニエ宮の舞台でバレエ作品を見ることができなくなるのだ。クローズ前に一度オペラ・ガルニエでバレエを見ておこう!とパリ行きを目指すのであれば、2027年3月9~27日の公演『天井桟敷の人々』の時期を選んではどうだろうか。この作品のチケットは10月13日に販売がスタートする。

劇場フュナンブル座を舞台にしたこの作品。公演を観にきた人々はチケットコントロールが終わるや、その団員たちによって大階段で出迎えられて開演前からすでに作品の世界へと誘われる。幕間には会場上から降り落ちてくるチラシを手にした観客は、大階段へと急ぐ。そこでフュナンブル座による「オテロ」が演じられるからだ(作品を知る人は素早く見やすい場所に陣取る!)。つまり、バレエを観に来た観客が、エキストラ的にフュナンブル座の観客を演じるのである。作品の最後にはカーニバルで盛り上がるステージから
女性主人公がオーケストラ席の中央通路を辿って消えてゆき……と、オペラ・ガルニエの空間あっての作品だ。なお、ガラでよく踊られるパ・ド・ドゥ『スカルラッティ』は、この作品に際して創作されたものである。

1945年に上映されたマルセル・カルネ監督の映画『天井桟敷の人々』。ジャック・プレヴェールが脚本を担当し、フランス映画の名作のひとつに数えられている。その作品を現在の芸術監督ジョゼ・マルティネスが現役のエトワール時代に、当時の芸術監督ブリット・ルフェーヴルの依頼でバレエ作品として創作したのだ。初演は2008年。創作ダンサーとして彼が選んだのは夢見がちで内気な俳優バティスト役がマチュー・ガニオ、男心を捉える姉御キャラの美女役者ガランス役がイザベル・シアラヴォラ。このふたりの物語に女たらしの俳優フレデリック・ルメートル、悪事に長けたピエール・ラスネールなどが絡む作品で、ダンサーの個性がこうした役柄に厚みをつけるジョゼによる配役がなかなか見事だった。2011年の再演時には2008年の創作ダンサーたちのほとんどが現役だったけれど、さすがにいまは当時のソリストたちはマチアス・エイマン以外、誰も残っていない。配役の発表を待ちながら、組み合わせを想像してみるのも一興だろう。ジェルマン・ルーヴェ×オニール八菜かブルーエン・バティストーニ? ロレンツォ・レッリ×ロクサーヌ・ストヤノフ? そしてもしマチアスが再び踊るなら?? またこの作品には初演・再演時ともに、コール・ド・バレエからも大勢登用されていた。芸術監督となったジョゼが今度は誰を抜擢するか、を見るのも一興だろう。


もう15年前のことになるが、2011年6~7月の再演時の最終日7月15日は、創作したジョゼ自身が長年のパートナー、アニエス・ルテステュ(この作品で衣装を担当)をパートナーにバティスト役を踊ってアデュー公演を行っている。彼のバレエ人生で大きな位置を占める作品と言っていいだろう。過去に見たことがない人にも見たことがある人にも、16年ぶりで来年3月にガルニエ宮で踊られる『天井桟敷』は見逃せないのでは? 初演に先立って、2008年9/5号の「フィガロジャポン」で、この作品の創作について語ったジョゼ・マルティネスの記事を次に再録しよう。

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フランス名画『天井桟敷の人々』を、ジョゼ・マルティネスがバレエに創作。
『Les enfants du paradis』
Opéra Garnier
公演日(開演19:30)
2027年3月9〜13日、15〜20日、22〜27日
料)オペラ座サイト 30~165ユーロ、オペラ座窓口 10〜165ユーロ
チケット予約販売開始 10月13日(この日以前に、サイトのリセールのコーナーにリセールチケットが出ていることもある)