メッテ=マリットとエプスタイン文書。ノルウェーの新王妃を揺るがすスキャンダル。

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ノルウェー国王ハーラル5世が死去、夫ハーコン8世の即位に伴ってメッテ=マリットは王妃となった。深刻な健康問題や息子マリウス・ボルグ・ホイビーの裁判に加え、ハーコン8世の妻はエプスタイン事件にも巻き込まれている。

photography:Splash/Aflo

ノルウェーの新王妃は2026年を大変だった年と記憶するに違いない。8月28日、ハーラル5世が89歳で死去してハーコン8世が即位、妻のメッテ=マリットは王妃となった。しかし、この即位は王室にとって微妙な時期に起きた。新王妃は健康上の問題を抱えて6月半ばに肺移植を受けたことに加え、以前の交際相手との間にもうけた息子マリウス・ボルグ・ホイビーが強姦・性的暴力事件で有罪判決を受け、さらに今年初めに公開されたエプスタイン文書のなかで何度も名前が挙がっているからだ。2026年1月30日、ジェフリー・エプスタインの捜査に関する米司法当局の文書が公開されると直ちに各国の上流階級に激震が走った。以来、この文書にどんな公人の名前が挙げられているのか突き止めようとする大がかりな調査が始まった。

名前のひとつが2001年にハーコン8世と結婚したメッテ=マリットだった。ノルウェーの「ヴェルデンス・ガング」紙によれば、王妃の名前は文書のなかに「少なくとも1000回は」登場するそうだ。このスキャンダルは53歳の母親がすでに抱えていた数々のトラブルに追い打ちをかけた。メディアがこのニュースを報じたのは、彼女の息子の裁判が始まる5日前だった。ハーコン8世と結婚する以前の交際相手との間に生まれた息子は、38件もの罪で訴追されていた。さらに彼女自身の健康も悪化していた。肺線維症を患い、同紙の報道の6か月後には肺移植を受けることになる。

メールのやり取り

エプスタイン関連文書によれば、53歳の王妃とアメリカ人実業家は2011年から2014年にかけてやり取りしていた。クリスマスのお祝いメッセージ、面会や訪問の予定、お薦めの本、はたまた「妻候補」の評価まで含まれており、ふたりがかなり親しかったことをうかがわせる内容だ。2012年の電子メールでは当時パリにいたジェフリー・エプスタインが、皇太子妃だったメッテ=マリットに「結婚相手を探している」と打ち明けている。それに対してハーコン8世の妻は、フランスの首都は「不倫にはいい場所」だが、「スカンジナビア女性のほうがよい妻になる」と返していた。

さらに2013年1月、メッテ=マリットが友人とともにフロリダ州パームビーチにあるエプスタインの邸宅に4日間滞在していたことも明らかになった。ジェフリー・エプスタインはその前の2008年、未成年者の売春斡旋の罪で1年余りの禁錮刑を言い渡されていた性犯罪者だっただけに、この事実は衝撃的だ。文書のなかから見つかったエプスタイン宛のメッセージによれば、メッテ=マリットはこの有罪判決を知っていたようだ。「前回のメールのあと、あなたのことをGoogleで検索しました。あまりいい印象ではなかったことは認めるわ……」とメッセージにあったからだ。しかし1か月後にノルウェーのテレビ番組に出演した彼女は、このことを否定した。

自分はだまされていた

報道を受けてノルウェー王室はすぐに声明を発表し、そのなかでメッテ=マリットは「ジェフリー・エプスタインとの友情」について「深く後悔している」と表明した。「失望を感じたすべての方々に謝罪することが私にとって重要です」と声明には記されている。「また王室、とりわけ国王と王妃をこのような状況に巻き込んでしまったことも後悔しています」とも。その後の彼女は一切発言せず、ほぼ1か月にわたって完全な沈黙を貫いた。そして世界中のメディアで自分の名前が大々的に報じられるのを目にしながら、息子の裁判を遠くから見守り、自らの健康を守るために闘っていた。2026年3月、ハーコンの妻はついに、自宅でノルウェー放送協会(NRK)テレビの取材に応じた。そして夫の同席のもとで、エプスタイン事件について初めて自らの言葉で語った。

NRKテレビの公式サイトには、本人がまもなく肺移植を受ける予定であることを理由に王室が取材時間を20分に制限したとある。ジェフリー・エプスタインとやり取りしたことに関しては、「彼の経歴をもっと注意深く調査しなかったこと、そして彼に操られ、だまされていたことの責任を認めることが私にとって非常に重要です」と語っている。また、性的人身取引で告発された実業家との関係は、あくまで「友人」だったと強調した。「私にとって彼は友人でした。あなたの質問が、私たちの関係にそれ以外の要素があったのかということであれば、答えはノーです」と彼女は断言し、彼と交流していた年月の間、違法なことを目にしたことは一度もなかったと付け加えた。

この取材で彼女はそもそも彼と出会わなければよかったと語った。2019年に刑務所の独房で亡くなったジェフリー・エプスタインが最初に有罪判決を受けたのは2008年のことだ。それについて質問されるとメッテ=マリットは、彼が女性を食い物にする性犯罪者であるとは知らなかったとNRKテレビに語った。「覚えていません。15年も前のことです。当時、そうした虐待が行われているとは全く知りませんでした。でも関わるべきではない悪い人だと判断するだけの十分な材料はあったのです。彼がほかの人たちを脅している様子を間近で見ました。だから色々な人に相談しなかったことを後悔しています。本来なら、そうすべきだったのです」

さらに自分が出会った人を容易に信用してしまうこと、相手のいいところを見ようとする傾向があることを語った。エプスタインとの連絡を絶った理由については、彼との間で気まずい出来事があったことを認めたものの、それ以上詳しく語ることはしなかった。ただ、そのとき夫に電話をしたことを明かし、夫はその時の妻が不安そうだったことを今でもはっきり覚えていることを語った。「彼とじかに接触することを一切やめたのはそのような出来事があったからです」と彼女は付け加えた。

沈黙を保つ

一方、ノルウェーの新国王ハーコン8世は沈黙を保っている。NRKテレビのインタビューでは妻のかたわらにいたものの、彼が口を開いたのは、何があっても妻のそばにいると断言するためだった。「メッテは思いやりがあり、賢明で真に強い女性です。だからこそ困難な時期にはいつも彼女を頼りにし、私のそばにいてもらいたいと思っています」と彼は語った。しかし4月、ロムスダール地方の複数の企業を訪問した折には記者たちの追及を逃れられなかった。「今ここで、この件について詳しく話すつもりはありません。私は妻のメールをすべて読んでいるわけではありませんし、誰にもそうしてほしくないと思っています」と、ハーラル5世の息子は、エプスタイン事件の文書に妻の名前が登場することについて質問したメディア「VG」の記者に答えた。それ以来、ノルウェー王室は目立った動きを控え、この事件が自然に収束していくのをおそらく期待している。

その戦略は、今のところ功を奏しているようだ。「メッテ=マリットは自らの非を認めました。謝罪し、ジェフリー・エプスタインとの友情を後悔していると語りました。そして、自分の行動が軽率だったことも認めています」と、ハーラル5世が亡くなった日にフランスのジャーナリスト、ステファン・ベルンは語っていた。「あとは、今後彼女がどのような立場を占めるかでしょう」一方、ハーコン8世は難しい立場に置かれている。ここ1年で家族を襲ったすべてのスキャンダルに向き合うしかないからだ。ステファン・ベルンは、王の透明性こそが強みのひとつだと見ている。「混乱の時期に即位することになりますが、とても人気のある国王だった父親の死後、支持されやすい状態にあります」と、王室事情に詳しいステファン・ベルンは言う。困難な状況だが乗り越えられなくはない。治世を揺るがすさらなる事件が起きなければ。

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  • text: Leonie Dutrievoz (madame.lefigaro.fr)