「世界一臭い食べ物」が夏の風物詩? スウェーデン発祥の伝統珍味を現地レポート。
スウェーデンの夏は、ミッドサマーを祝う夏至祭がある6月後半から大体7月いっぱい。では8月は何もないのか?というとそうでもなく、食の2大解禁日が待ち構えている。ひとつはご存知のザリガニ。もうひとつはシュールストレミングだ。今回は、日本のくさやに負けずとも劣らずスウェーデンの発酵食であるシュールストレミング(Surströmming)のリアルな世界を現地からお届け。

発酵ニシンの発祥地、ウルヴ島へ。
8月の第3木曜日が解禁日となるシュールストレミングは発酵ニシンだ。魚の発酵という言葉を聞いただけで、すでに匂いが漂ってきそうなスウェーデンの伝統食だが、東海岸沿いの観光区域フーガクステン(Högakusten)からフェリーで片道2時間、シュールストレミングのメッカでもあり発祥の地でもあるウルヴ島(Ulvö)にその伝道師がいるというので会ってきた。

シュールストレミングを愛する伝道師、ヨハン。
長年料理人として様々なレストランで働いてきたヨハン・シンドベリィ(Johan Kindberg)はシュールストレミングをこよなく愛する第一人者。ヨハンが現在働いているウルヴウー ホテル(Ulvö Hotell)のレストランでは、スウェーデン全国でも数が少ないシュールストレミングのメニューがあり、レストラン内で味わうことが出来る。強烈な匂いゆえ、決まっているわけではないものの、暗黙のルールとしてアパート内での開封はご法度。隣近所が離れているサマーハウスや一軒家の庭で食べるのがマナーだ。
伝統的な食べ方とアレンジ。

伝統的な食べ方は、北のご当地パンでもあるトゥンブルード(Tunnbröd)という薄いクリスピーブレッドにバターを塗る。
シュールストレミングを載せて、付け合わせに、茹でて薄切りにしたじゃがいも、ヴェステルボッテンチーズ、サワークリーム、刻んだ赤玉ねぎ、お好みでディルやトマトやチャイブ(ネギ)をトッピングしてオープンサンド風に食べる。また、「クレンマ(klämma)」と呼ばれるトルティーヤのような柔らかいトゥンブルードを使い、巻き寿司のようにくるくると巻いて端から豪快にガブリと味わうスタイルも人気。
匂いを気にせず楽しめる、モダンタパススタイル。
好き嫌いが両極端に分かれるシュールストレミングだが、ヨハンは「もっと楽しんでもらいたい、シュールストレミングはおいしいんだよ」という事を知ってもらうためにモダンなタパススタイルで提供している。これは匂いがまったく気にならず(だからレストランでも提供できるのだが)、酢漬けの赤玉ねぎやブルーベリーなど、意外と思わせる組み合わせもいい感じでマッチしている。


左からロイロムという高級魚卵、ブルーベリー、りんご、酢漬けの赤玉ねぎがそれぞれトッピングになっている。土台の基本は一口大のトゥンブルードにサワークリームもしくはヴェステルボッテンチーズ、メインのシュールストレミング。
缶詰を開ける時はほとんどの人が水を張った桶の中など水中で開封するのだが、ヨハンは開ける前に30分ほど冷凍庫に入れるという。この方法が一番匂いが緩和されるからだ、と自身の経験から語っている。
本場のスタイルを味わう解禁日イベント。

でも「やっぱりシュールストレミングはあの匂いがあってこそでしょう!」というもの好きには、解禁日である8月の第3木曜日にホテルに来ると、ホテルレストランの前にある海沿いの船着場兼テラスで伝統スタイルのシュールストレンミングをイベントの一環として食べることができる。
世界の珍味が集結するミュージアム。

それでもまだまだ!という強者にはスウェーデン南部のマルメ市にディスガスティング・フード・ミュージアム(Disgusting Food Museum)というその名の通り「おぞましい食べ物ミュージアム」があるのでそちらを訪れてほしい。シュールストレミングやくさやなど、世界各地から、ある意味すごい食べ物(ほとんどが発酵食で幼虫や虫の卵などもある)が陳列されており、匂いを嗅ぐことができたり試食できるものもある。私個人の経験から言わせてもらえば、シュールストレミングは匂いはまぁまぁだが、味自体はそれなりにイケる。発酵食に慣れている日本人にはそんなに恐れられるものではないと思う。それよりもミュージアムで体験したアイスランドの発酵ザメ……地中に埋めて発酵というより腐敗させる伝統食だが、これに比べたらシュールストレミングなんて可愛いものだ(笑)。
Ulvö Hotell
ウルヴウー ホテル
https://ulvohotell.se/sv
*シュールストレミングのメニューあり
事前予約制でコースもある。
Disgusting food museum
https://disgustingfoodmuseum.com/
- text: Sakiko Jin