「エミリー、パリへ行く」、新シーズンで「ワインを飲む妊婦」のシーンが話題に。

Culture 2024.09.12

前シーズンと同様に、Netflixで配信中の「エミリー、パリへ行く」の新シーズンでは、フランス人女性に関するステレオタイプが見られるが、今回は妊娠中でもアルコールを好むという点が取り上げられている。

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シーズン4で、リリー・コリンズ演じるエミリーが、レストランで赤ワインを飲んでいる妊娠中のふたりの女性を目にする。photography: Netflix

2020年からNetflixで配信されているダレン・スターが手がける「エミリー、パリへ行く」は、批判的になりながらも、ついつい見てしまうシリーズだ。おさらいすると、アメリカ人女性のパリでの冒険を描いており、「セックス・アンド・ザ・シティ」のようだが、かなり美化されており、ステレオタイプにあふれている。エピソードを重ねるごとに、フランス人は不平を言い、喫煙し、ナンパし、特に飲み食いをする様子が描れている。これは、8月中旬に公開されたシーズン4の前半部分のことである。この描写は、世界的に有名なワイン産地であるフランスでは決して虚偽ではないが、保健当局は数年前からアルコールが健康に与える危険、特にそのがん誘発性について警鐘を鳴らしている。このメッセージは「エミリー、パリへ行く」の脚本家たちに届いていないようだ。というのも、9月12日に公開される予定の新シーズン第2部の第3話では、ふたりの妊婦が赤ワインを飲むシーンが描かれているからだ。

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危険なトレンド

このシーンは、首都パリの高級レストランで展開される。エミリーは友人のミンディとディナーを楽しんでいる。アペリティフの際、主人公は失望した様子のウェイターに、店が提供するノンアルコールドリンクについて質問する。マーケティング会社で働く彼女は、ノンアルコール市場の可能性に非常に興味を持っている。しかし、それに対して、ウェイターは全く逆の意見を述べる。エミリーは自分の意見を通すように、隣のテーブルを指して「妊婦が(ノンアルコールドリンクを)飲んでいるわ」と証拠を示す。しかし、ウェイターはそれ以上の説明もせず、「いいえ、あれは普通のワインです」とだけ答えた。

1960年代のフランスでは、妊娠中のアルコール摂取に関する規則は比較的緩やかで(1日に2杯まで許容されていた)が、2024年には、保健当局は妊娠中だけでなく授乳中も含めてアルコールの摂取を完全に禁止している。その理由は、アルコールが胎児に与える不可逆的な影響が重大であるためだ。「胎盤はアルコールを遮断しないため、アルコールの摂取は胎児に対して奇形や神経発達の障害を引き起こす可能性がある。摂取量や飲み物の種類に関係なく、影響がある」と、アルマンド・トルーズ病院の胎児影響物質センター(CRAT)はウェブサイトで示している。

さらに、妊婦が大量にアルコールを摂取した場合、胎児にアルコール中毒症候群(SAF)が発生する可能性がある。これにより、顔の異常、成長の遅れ、行動障害や認知障害、また神経系、心臓、骨などの臓器の奇形がより頻繁に見られることが、保険会社のウェブサイトに詳述されている。

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アルコール摂取は減少

注意喚起のメッセージが一切ない「エミリー、パリへ行く」のシーンは、医療専門家からすると非常に問題視されるものであり、特に最近の保健当局のデータを考慮すれば、その問題はさらに深刻である。2024年9月9日に発表された、胎児アルコール症候群の啓発デーを記念して行われた最新の公衆衛生フランスの調査によると、完全な禁酒が推奨されているにもかかわらず、2021年には約7%の妊婦が(ほんの一口でも)アルコールを摂取したことがあると回答したことが明らかになった。この傾向は以前のデータ(2017年の12%)に比べて減少しているものの、フランス国立公衆衛生局の報告書は、「予防活動を続け、妊娠中にアルコール摂取をしてしまう女性を支援することが重要である。影響を受ける女性と子どもたちの数は決して無視できるものではない」と述べていると、AFP通信は報じている。

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text: Tiphaine Honnet (madame.lefigaro.fr) translation: Hanae Yamaguchi

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