プリンスからヴィランへ。俳優チョン・イル、イメージを覆す新挑戦。【私のパリシック。vol.6 チョン・イル】

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自分らしく人生を謳歌するパリジャンの生き方には、いまの私たちが力強く生きるためのヒントが詰まっている。そんな彼らのスタイルに共鳴する現代のアイコンにフォーカス。vol.6は、俳優のチョン・イルが登場。

もっといい俳優になりたい。その一心で走り続けてきた20年

デビュー以来、甘いマスクで多くの韓国ドラマファンの心を奪ってきた俳優チョン・イルが、Prime Originalドラマシリーズ『犯罪者』(松永大司監督)で、キャリア初のヴィラン役に挑戦。日本で俳優活動をするのが長年の夢だったという、チョン・イルの誠実な素顔に迫る。

ー今年で俳優デビュー20周年。改めてご自身のキャリアを振り返ってみて、どのような人生でしたか?

まずは20年間、俳優として活動してこられたことに感謝しています。デビューから今までを振り返ると、本当に前だけを見て走り続けてきました。今でも未熟な部分や失敗も多く、心残りもあります。それでも、もっといい俳優になりたい一心で続けてきたからこそ、家族や仲間、そして何よりファンの皆さんのおかげで、その困難を乗り越えてきたと思っています。

ーこれまで女性心をくすぐる役のイメージが強かったイルさんですが、『犯罪者』の<滝川>はヴィラン役。新たな挑戦となる本作に出演を決めた決定打は?

松永監督とは、映画『エゴイスト』の韓国公開のときに、ご挨拶する機会があったんです。その後、僕の主演映画『高速道路家族』を見た監督から「必ず一緒に作品を作りましょう」と言われ、3年越しで「『犯罪者』という作品にとても強烈なキャラクターがいて、是非チョン・イルに演じてほしい」と直接オファーの電話をいただきました。お話を聞くうちに、“滝川”のキャラクターに惹かれ演じてみたいという願望が膨らんで、出演したいと即答しました。日本で俳優として活動したいという長年の夢を叶えてくれた松永監督には心から感謝しています。

豊かな色彩を持つ演技者になりたい。だからこそ『犯罪者』に出会えて幸運だった

ー今までのイメージを覆す役作りはどのように?

原作を読み込み時間をかけて分析して、既存の彼にはない行動や習慣、癖などのアイデアを監督に伝えました。なぜ滝川が悪行に走るのか…その心理を僕なりに考えた結果、虚無感という答えを導いたんです。そこから、チョン・イルが表現する<滝川>が誕生しました。滝川自身のバックグラウンドから生まれた虚無感を、裏世界で生き抜くことで正当化しようとする人間的な部分が垣間見られるよう細部にこだわって演じました。そんなところにも注目してもらえたら、また違う視点で作品を楽しんでいただけると思います。

ー確かに、今まで見たことのないイルさんの雰囲気にとても惹きつけられました。

俳優って、パーソナルカラーのようにハマり役があると思われがちですが、あらゆる役に挑んで豊かな色彩を持ってこそ、その人の持つ香りが長く続くと思っていて。僕自身も20代はラブコメや史劇に多く出演しましたが、40代ではまた少し異なる香りを出せる演技者になりたい。そういった意味で、20周年のスタートを切る作品が『犯罪者』で幸せですし、運がよかったと言えます。

ー現場で刺激を受けたこと、新鮮だったことはありますか?

俳優が情熱的なのは日本も韓国も同じです。ただ、松永監督のディレクションは本当に特別で感動すら覚えました。本読みも毎回行って、リハーサル含め基本的に30回ほど演じていた気がします。ワンシーンごとに全エネルギーを注ぐ監督の求める姿に僕たちも応えようと、集中力を高め演技を繰り返しているうちに、無意識的に自分でも見たことのない表情が引き出されていて、とても新鮮な感覚でした。

ー言語や文化が異なる環境で大変だったのでは?

海外での撮影は今までも経験があり、何より昔から日本文化が好きなので問題ありませんでした。地方ロケも多く、監督をはじめスタッフの方々と有意義な時間を過ごしました。一番大変だったのは、<滝川>として生きることでしたね(笑)。

ー日本で自炊しているYouTubeが話題となりましたが、『犯罪者』の撮影中だったんですね。料理の腕前も素晴らしかったです。

思った以上に話題になってしまい、日本で『犯罪者』の撮影中とも言えないので、「出張中」とごまかしました(笑)。昔から料理は好きなんです。その時は梅干しを使ったボンゴレパスタを作ったんですが、創作料理にはちょっとセンスがある気がします(笑)。あ!今、思いついたんですけど、日本の蕎麦と韓国のユッケって合いそうだなぁ。ユッケ蕎麦、美味しそうじゃないですか!?

ー家族旅行でもよく日本に来ていらっしゃいますが、特にお気に入りの場所はありますか?

普段から美術館に行くのが好きなので、直島が印象に残っています。小さい島がたくさんある中に素敵な建築物が散らばっていて。有名なうどんはもちろん、家族全員で美味しいものをいっぱい食べて、生ビールを飲んで…夢のようないい思い出です。

人生は幸福と不幸が常に共存している。だからこそ、余裕を持つことが大事。

ーフィガロでは、アール・ドゥ・ヴィーヴル(暮らしの美学。自分の感性をもとに知恵と工夫を凝らして何気ない日常を楽しく生きること)の考えを大切にしています。イルさんが考える「豊かさ」とは?

うーん…「余裕」かな。何かに没頭しすぎたり、辛い状況に置かれたりすると、すごく視野が狭くなりますよね。でも人生って幸福とそうでないことが常に共存している。だからこそ余裕を持って対処することが大事だと思います。もちろん、そのためには経験や自らの気づきも必要ですが、余裕を持ってこそ豊かな人生を送れるんじゃないかなと。

ー以前から国内外での奉仕活動をはじめ、文化や芸術分野においても尽力されています。そのような活動に関心を持ったきっかけとは?またそういった活動で得られるものとは?

幼いころからさまざまな文化を共有してくれた母(韓国伝統大学の元教授)の影響が大きいです。奉仕活動は、自身を振り返ることができる時間でもあります。直近ではアフリカのマダガスカルへ行ってきました。僕の活動が大きな影響を及ぼすことはなくても、それを目にした方々に少しでも関心を持ってもらえるかもしれないという思いもあって。また俳優として本当にたくさんの方に支えていただいていることに何かお返ししたいという気持ちが、行動力につながっています。

俳優としての成長はもちろん、寛容さを備えた大人になれるよう努力していく”

ー昨年は長編ドラマ『華麗なる日々』で主演を務め、2025年KBS演技大賞で男性優秀賞を受賞しキャリアハイを更新されています。これからどんな俳優、もしくはどんな大人を目指したいですか?

俳優としては初心を忘れず、未熟な部分を補いながら続けていきたいです。大人としては…うーん、難しい質問ですが、寛容さ、理解や許しの心を持って生きること。今の僕がそんな大人と言えるのかはわかりません。だけど、常に感謝の気持ちを忘れず生きていれば成長できると思いますし、そんな大人になれるよう努力します。

着用衣装:ジャケット¥540100、シャツ¥239800、パンツ 参考商品、シューズ 参考商品、バッグ¥1,094,500(H34×W45×D23cm)表参道フラッグシップ 先行商品/ボッテガ・ヴェネタ(ボッテガ・ヴェネタ ジャパン)

Profile
チョン・イル

2006年俳優デビュー。ドラマデビュー作『思いっきりハイキック』でブレイク後、多くの人気ドラマに主演。’25年には長編ドラマ『華麗なる日々』で等身大の大人の男を演じ好評を得た。Prime Originalドラマ『犯罪者』では、謎の男・滝川として初めて日本作品に出演。

問い合わせ先

ボッテガ・ヴェネタ ジャパン
0120-60-1966

  • photography: Riho Harashima hair & makeup: Yukiko Imanishi interview & text: Juri Honda