ヴァレンティノ 2026-27年秋冬――ローマに響く「干渉」の美学。
Fashion 2026.03.26
石畳を打つ雨に包まれたローマ、バルベリーニ宮殿の大広間。ヴァレンティノは、相反する美が干渉し合う"Interferenze"の世界をここに立ち上げた。
1960年にこの街で創設されたメゾンは、通常パリでショーを行うが、アレッサンドロ・ミケーレは今回、舞台を本拠地へと戻した。ローマは彼自身の出身地であり、1月に93歳で逝去した創業者ヴァレンティノ・ガラヴァーニへの哀悼を込めた初のプレタポルテでもある。

会場となったバルベリーニ宮殿は、ベルニーニによる厳格な直線階段と、ボッロミーニの流麗な楕円形の螺旋階段が共存する、秩序と逸脱が同居する建築だ。ピエトロ・ダ・コルトーナの壮大な天井画「神の摂理の勝利」が広がる大広間は、今季のテーマ"Interferenze(干渉)"を象徴する舞台となった。ミケーレは事前のノートで「この宮殿は静穏な建築物ではありません。尺度、明晰性、階層構造を特徴とするアポロン的原理と、歓喜と漂流、境界の消滅からなるディオニュソス的な衝動のあいだにある解消されることのない緊張の場なのです」と記し、相反する力の緊張をコレクションの核に据えた。

700人のゲストがフロアを埋め尽くし、シネイド・オコナーの歌声が響く中、ショーは、静かに、しかし確かな緊張を孕んで始まった。構築的なテーラリングを軸に、装飾がシルエットに"干渉"するように配される。重厚なウールやレザー、ベルベットに、シフォンやオーガンジー、レースといった軽やかな素材を重ね、直線的なカッティングと柔らかなフリル、豊かなドレープが対置される。透明と不透明、硬質と柔和、規律と過剰──二面性が幾層にも重なり、深い色調が静かな官能を生み出した。

ルック23

ルック34

ルック30

ルック46

ルック42

ルック66
80年代のガラヴァーニを想起させる巨大なパールやスモーキングベルト、鮮やかなカラーの衝突もミケーレらしい。深紅と翡翠、鮮やかなターコイズと赤紫、あるいは淡いローズと深いブラック。色彩の干渉が視覚的な緊張を生み、シルエットの構築性を際立たせた。メンズは全84ルック中30体と例年より多く、ジェンダーを横断するミケーレの美学がより強く反映されている。

ルック12

ルック13

ルック16

ルック60
---fadeinpager---
アクセサリーにも、ヴァレンティノらしさを踏まえながら更新の気配が色濃く表れていた。バッグでは、クロコダイルを用いた「パンテア」や刺繍に覆われた「ドゥ ヴェイン」が存在感を放ち、シューズではバイカラーの配色やスタッズが特徴の「ロックスタッズ」のシルエットが新たに再構築されている。さらに、蝶のモチーフのネックレスや装飾的なシューズが、全体にポエティックな華やぎを添えた。

クロコダイルの「パンテア」

刺繍やビーズで覆われた「ドゥ ヴェイン」

バイカラーの新しいシューズ

ロックスタッズの新しいシルエットとメタル入りのトウ

とても小さな蝶のネックレス

蝶のあしらわれたミュール
フィナーレを飾ったのは、ヴァレンティノ・レッドのロングのトレーンドレス。鮮烈な赤が空間を染め、古典と前衛が交差するその余韻だけが残った。バロックの混沌を抜けた後の静かな"秩序"が訪れたかのようだった。

ルック84
ショーが終わる頃、外の雨は止んでいた。ゲストたちは楕円の弧を描くボッロミーニの螺旋階段を降り、ルドヴィージ邸でのアフターパーティへ向かう。ローマの夜は、永遠の香りを湛えたまま、コレクションの余韻を静かに残して幕を閉じた。

---fadeinpager---
来場セレブリティをチェック!
グウィネス・パルトロー

リリー・アレン

フィリピーヌ・ルロワ=ボリュー

ピエルフランチェスコ・ファヴィーノ

ブランドアンバサダーのフリーン・サローチャ

ブランドアンバサダーのジェフ・サター

ブランドアンバサダーのコールマン・ドミンゴ

アイリス・ロウ

text: Izumi Fily-Oshima






