現代を生きる私たちの心に響く、バレンシアガ流クチュール。
これまでにないほどクリエイティブディレクターの交代が相次いだ2026年春夏。新任者たちは、メゾンの伝統をどのように引き継ぎ、発展させていくのか。クリストバル・バレンシアガの精神をピエール パオロ・ピッチョーリはどう解釈し再提案したのか。
BALENCIAGA
by Pierpaolo Piccioli
ピエールパオロ・ピッチョーリ

美しい膨らみを持つロングドレス。新たに開発された生地、ネオ・ガザールが、フォルムの形成に大きな役割を果たしている。
バレンシアガ、クチュールの建築家の名作を想起する。
スペイン生まれのクリストバル・バレンシアガは、メゾンを1917年に創業。37年、パリで初のコレクションを発表した。クリストバルは「クチュリエは、デザインの建築家、形状の彫刻家、色の画家、調和の音楽家、そして、節制の哲学者でなければなりません」と語り、ユベール・ド・ジバンシィは彼のことを「オートクチュールの建築家」と呼んだが、クリストバルのものづくりを特徴づけるのがフォルム。着る人の動きも意識して服と身体の間の空間を重視しており、その理想を実現に導いていた要因のひとつが生地へのこだわりだった。
新クリエイティブ・ディレクターのピエールパオロ・ピッチョーリは、デビューコレクションにあたり、58年にクリストバルが考案したカッティングだけでボリューム感を出せるダブルフェイスの生地、ガザールを再解釈。外側の面のガーゼは踏襲しながら、2層目のオーガンザにシルクとウールの混紡のラミセット緯糸を加えてハリ感を和らげ、「ネオ・ガザール」として発展させた。
1950s
Cocoon
背中とサイドが膨らんだ卵の形に近いシルエットで、過去のクリエイティブ・ディレクターたちのクリエイションにも多く見られたメゾンの代表作。2026年春夏ではドレスやコート、ジャケットで表現された。

1950-60s
Balloon Dress
ドレープを寄せて波打つひだを表現しており、配する場所によってシルエットの印象が変わる。2026年春夏では、ミディ丈のショーツにも反映。まるでフレアスカートのようなボリュームが生まれている。

1950s
Sack Dress
縫い目やダーツは最小限。女性らしさを強調する当時の流行とは一線を画す、身体をゆったりと包み込みウエストラインを隠したシルエットは話題を呼んだ。2026年春夏ではさまざまな丈に。

1960s
Tulip Dress
チューリップの花びらの形状を思わせるフォルムで、「ペタル(花びら)」とも呼ばれた。ピエールパオロ・ピッチョーリは、一見カジュアルなデニムやチノのバミューダパンツやレザーのトップのカッティングに採用している。

こうしてクチュリエとして名高いピエールパオロはメゾンの名作を彷彿とさせる美しいシルエットを生み出した。しかし、ただアーカイブを再現しているのではない。強調したのは、今回の挑戦が「オマージュではなくリキャリブレーション(再校正)」であるということ。現代を生きる私たちの心に響くよう、なじみの深いワードローブに自然と組み込んでいる。
バレンシアガ クライアントサービス
0120-992-136(フリーダイヤル)
https://www.balenciaga.com/ja-jp
- photography: Masaya Tanaka (TRON)
- styling: Tomoko Iijima
- hair: Kenshin (EPO LABO)
- makeup: Suzuki
- text: Itoi Kuriyama
*「フィガロジャポン」2026年4月号より抜粋