合成麻薬を使用しての性行為、フランスの若年層に急増中。
Lifestyle 2024.11.18
ここ数年、フランスの若者の間で、性行為中に合成麻薬を使用するリスクの高い行為が急増している。依存症や過剰摂取が問題となる中、多くの若者がそれらを断ち切るために必死に戦っている。
俳優ピエール・パルマドの事件は、ケムセックス(性行為を激しくするために薬物を服用する行為)に再びスポットライトを当てた。photography: Getty Images
2018年5月29日、クリストフ・ミシェル(31歳)の無残な遺体がパリ郊外の男性のアパートで発見された。周囲には注射器、吸引器具、酒瓶、セックストイがあった。数ヶ月にわたる捜査の結果、警察はジャン=リュック・ロメロ(パリ市の副市長)の夫が、性行為の後にオーバードーズで亡くなったと結論付けた。この行為は「ケムセックス(化学物質と性行為を意味する)」と呼ばれ、英語圏のゲイ文化から始まり、2000年代初頭からフランスにも広まったが、依然としてあまり認識されていない問題である。ジャン=リュック・ロメロは2021年に「マダム・フィガロ」誌にこう語っている。「このような形で彼の死を知ることは、言葉にできないほどの衝撃でした。ケムセックスはもはや一部の現象ではありません。今こそ、政府がこれに取り組むべきときです。」
当時、パリの政治家であり、『Plus vivant que jamais, comment survivre à l'inacceptable(原題)』の著者としても知られるジャン=リュック・ロメロは、この問題について公に語った数少ない政治家のひとりだったが、俳優ピエール・パルマドの事件は議論を再燃させた。2023年2月11日、54歳の俳優ピエール・パルマドは、複数の負傷者を出した重大な交通事故を起こし、警察に拘束された。『フィガロ』紙の情報によると、24時間のパーティを終えた直後、彼はふたりの若い男性と一緒にいて、まだ薬物の影響下にあったという。ケムセックスという言葉は公式には言及されていないが、この事件は、ケムセックスの存在とその危険性を浮き彫りにした。
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自信を高める
ケムセックスとは、性行為を促進し、延長し、強化することを目的に、精神活性物質(3-MMC、メタンフェタミン、GHBなどの合成薬物)を服用することを指す。「ケムセックスを行う人は、数日間続く"セッション"の中で複数の薬物を併用することが多い。彼らはアルコール、ポッパー、あるいは勃起を助けたり、長引かせたりする薬を加える。要するに危険なカクテルで、そこから立ち直れない人もいる」と、パリの薬物依存症評価・情報センター(CEIP-A)の薬剤師アンヌ・バティスは説明する。
2018年、地域保健機関が始めた DRAMES調査(1)によると、2015年以降、これらのパーティで年間約10件の死亡が報告されている。しかし、この数字は実際には過小評価されている可能性が高く、「死亡とその背景、そして薬物使用との関連性を明確にするのは非常に難しい」と指摘されている。都市部での急増を考えると、その数値は低く見える。実際、『ニューヨーク・タイムズ』紙は、ケムセックスを新たなエイズの流行になぞらえたほどだ。昨年、私たちはこのアンダーグラウンドで起こる歪んだ現象について調査を行った。
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再発はしょっちゅう
毎週金曜日、エティエンヌ(仮名)はパリ5区にある教会のドアを開ける。もう2年近く、彼はこの教会でLGBTのためのナルコティクス・アノニマスの集会を開いている。38歳の元 「ケムセクサー」である彼は今、一層若年化し、一層増えていく新参者たちの紆余曲折の人生の旅路に耳を傾けている。その中に、21歳の建築学生マティアス(仮名)がいる。
成人してパリにやってきた若者は、出会い系アプリ「Grindr」で出会った自分の年齢の2回り年上の男性をきっかけにケムセックスの世界に足を踏み入れた。最初のデートでは、友人たちとともに、テーブルの下で合成麻薬が手から手へと渡されていたという。「あれは自分の『最高の夜』のひとつだった」と彼は振り返る。「当時、カミングアウトしていない若いゲイだった。突然、自分に自信が湧き、幻想が現実になり、命を感じるようになった。それで、毎回のセックスで薬を使うことが強迫観念になった。週末ごとに、たくさんの男性と一緒に何日もアパートで過ごすようになり、ついにはコントロールを失ってしまった。」
マティアスは、4ヶ月間再発していないことを誇らしげに笑顔で見せているが、ガエルはその怒りと絶望を隠せない。「ケムセックスの誘惑は強すぎる」と、28歳の彼は語る。彼の最後の経験からは1週間も経過しておらず、寝ることも食べることもなく、4日間続いた。
1年前、見知らぬアパートで、裸で目覚めたガエルは、自分が道を踏み外していることに気づいた。ジャン=リュック・ロメロの夫であるクリストフ・ミッシェルと同じように、彼はガンマブチロラクトン(GBL)のオーバードーズの犠牲者だった。これは非常に多く、また軽視されがちなオーバードーズで、かなり運が良くても一時的な昏睡状態に陥る。「何も覚えていない」と彼は説明する。「ただ、何人かにレイプされて、撮影されていたことだけは覚えている。それから、何度も自殺しようと思った。それなのに、毎回戻ってしまう自分がいる。」
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複数の専門家によるケア
リヨン大学病院の精神科医で依存症専門医であり、「Sea, Sex and Chems(原題)」(2020年)の著者であるドリアン・セッサにとって、ケムセックスのもたらす結果は、被害者にとっても、加害者にとっても深刻だという。「記憶にないことをした患者もいます。眠らず、飲まず、食べず、多くの物質を摂取することで、彼らは現実感を失ってしまう。ここには被害者しかいないのです」と彼は主張する。
どうすればケムセックスと闘えるのか? なぜ、この災いから逃れることが難しいのだろうか? 医師は警鐘を鳴らすように指摘する。「依存症治療センターは、これが薬物の摂取と性行為の両方に関連する共依存であることを理解していない」と彼は言う。さらに、治療は個別に行われ、依存症専門医、性科学者、精神科医などによる複数の専門家の支援が必要だと説明する。「重要なのは、患者が薬物依存は治療しても、性依存を治療しなければ、性行為の際に必ず薬物に手を出すことになるということ。なぜなら、その患者にとって、そのふたつが関連付けられているから」とドリアン・セッサは続ける。
被害を軽減しようと、問題の根源に迫ろうとする動きもある。その一例が、パーティ環境のリスク軽減に取り組む団体「プレイセーフ」のミシェル・マウ会長だ。彼は、これらの違法物質が販売されているサイトやアプリ(Snapchat、Tinder、Grinderなど)を追跡することを決めた。2020年、フランス薬物・依存症観測所(OFTD)は、約600種類の合成麻薬が市販されていることを報告している。「この市場を軽視することこそ、ケムセックスの台頭を助長している。ドラッグはクリックひとつで手に入るようになり、ますます安価になっている」とミシェル・マウ会長は強調する。
ミシェル・マウは、ゲイコミュニティでの犠牲者が増えないよう、公共機関に対して意識改革を呼びかけている。「ケムセックスは広まり、今ではあらゆるセクシュアリティに影響を及ぼしている」という。ジャン=リュック・ロメロはかつて、保健省にこの問題を提起した際、周囲から鼻であしらわれたことを嘆いていたが、パルマドの一件がきっかけで、状況は変わるかもしれない。「ケムセックスは多くの命を奪った。これ以上クリストフのような命を奪われたくはない」と彼は語る。
(1) 薬物・物質乱用に関連した死亡者数。
From madameFIGARO.fr
text: Léa Mabilon (madame.lefigaro.fr) translation: Hanae Yamaguchi