KRUG 作曲家マックス・リヒターが奏でる、クリュッグの2008年を表現した3部作。
Gourmet 2026.03.03
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ロンドンという街を象徴するような細かい雨の降り注ぐ中、世界中から集ったゲストたちを乗せたハイヤーが走る。ロンドンの中心部にあるライブ会場・ラウンドホールでこの日開催されたのは、作曲家マックス・リヒターがシャンパーニュメゾン クリュッグのために書き下ろした3部作のローンチイベントだ。
マックス・リヒターはドイツ生まれ、イギリス育ちの作曲家でありピアニスト。伝統的なクラシック音楽と電子音楽を融合させるスタイルでダンス、アート、ファッション、映画音楽など幅広いジャンルで活躍する現代音楽の第一人者。代表作品「On the Nature of Daylight」をはじめ、その作品は合計30億回以上のストリーミング再生を記録している。美しい旋律が何度も繰り返され、波のように寄せては返すリフレイン......彼の多くの音楽に共通するテーマを、本人はこう語る。
「音楽のルネッサンスの時代からリフレインという手法は使われてきました。音楽を繰り返すことによって、そしてそれを幾重にも聞くことによって、一瞬を体験すると同時に、時間の流れを体験できる。不可逆な、積み重なる時間を体感でき、音楽そのものをより深く考えることができるのです」
その言葉はそのまま、シャンパーニュというスパークリングワインにも当てはまる。フランスのワインブドウ栽培北限の地であるシャンパーニュ地方。冷涼な気候によりブドウには高貴でフレッシュな酸味が生まれ、石灰質の混ざり合う複雑な土壌が硬質なミネラル感を育む。瓶内でゆっくりと時間をかけて熟成されることで微細な泡と、酵母によるパンやブリオッシュ、ナッツを思わせるようなふくよかな香りまで纏わせていく。
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「クラシックビューティ、時を越えた美しさ」と呼ばれた2008年のクリュッグ
特に、2008年という年はクリュッグにとって特別な年なのだ、とセラーマスターのジュリー・カヴィルは語る。
「『どんな気候にも左右されず、最高品質のシャンパーニュを毎年世に送り出す』をモットーにするクリュッグですが、2008年というヴィンテージはなかでも興味深いです。気候変動の影響はシャンパーニュ地方にも顕著に表れていますが、2008年は『クラシックビューティ、時を越えた美しさ』と名付けたほど、同地らしい冷涼さを保った最後の年。背骨の通ったような力強いボディを持ち、地から天に美しくエレガントに伸びるような酸の広がりがある。なので、シャンパーニュとしてリリースした直後には味わいに硬い部分もあり、解釈が難しいところもありました。20年近く時間が経過して、ようやくその進化が華開いた......そんな素晴らしさがあります」
複雑さ・バランス・繊細さを併せ持つ味わいや、特定の品種にこだわらずに最高の一本を目指すクリュッグの姿勢はクラシック音楽にたとえられることも多い。そんなクリュッグはこれまでも長い歴史の中で、さまざまなミュージシャンとのコラボレーションを行ってきた。
2008年という卓越したヴィンテージに感銘を受けたマックス・リヒターが「Every Note Counts(「エヴリー・ノート・カウンツ」すべての音に意味がある)」というプロジェクトを始めたのは2年前。リヒター自ら畑やメゾン、セラーに赴き、そこで感じたあらゆる感覚を音楽へと変換していった。2008年という最後の冷涼年からは、3つの素晴らしいキュヴェが誕生。リヒターがシャンパーニュから受けたインスピレーションは、それら3つのキュヴェそれぞれに共鳴する3部作「Krug from Soloist to Orchestra in 2008」として結実した。
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共鳴し合う、クリュッグとサウンドの世界
コンサート会場の座席に座ると、オーケストラの団員たちが楽器を手に静かに入場し、そしてマックス・リヒターが姿を現す。同時にボトルを携えたウェイターたちがグラスにシャンパーニュを注いでいく。
初めに注がれたのは「クリュッグ クロ・ダンボネ 2008」。「クリュッグ家がもっとも愛する畑」と言われる、アンボネイ村の0.68ヘクタールしかない畑のみで収穫されたピノ・ノワールを100パーセント使用したブラン・ド・ノワール(黒ブドウから生まれる黄金色のシャンパーニュ)だ。ピンクゴールドを思わせる液体を口に含むと、ピノ・ノワールが持つ力強さと膨らみのあるふくよかさに圧倒される。レモンの皮のような苦味のある鮮烈な香りの奥に、アーモンドのようなナッツを思わせる香ばしい香り。
キリッとした酸味がどこまでもピュアで、ビターさを感じながらも心地よい余韻を堪能していると、リヒターがピアノのトリルを奏で始める。リフレインを穏やかに重ねるうち、ヴァイオリンが寄り添い、さらに重ねていくとチェロのソリストが加わる。第1楽章「Clarity(クラリティ)」と名付けられた楽曲は音の高低を行き来しながら、どこまでも穏やかなリズムが続き、それはまるで波打ち際を眺めているかのようで、シンプルなメロディの連続が心をゆっくり、大きく揺する。
ふたつ目のグラスに注がれるのは、「クリュッグ 2008」。先ほどのブラン・ド・ノワールよりやや明るさのある液色から想像できるとおり、どこまでもフレッシュな酸味に驚かされる。ジュリー・カヴィルは「素晴らしいヴィンテージで生まれたアイ、ブジー、アンボネイといった区画それぞれのブドウの大きく異なった味覚と芳香を、対比するように互いに補い合いながらブレンドをすることでクラシックの傑作を生み出した」と表現する。オレンジピール、グレープフルーツの爽やかな香りに、爽やかな白い花の香り。味わいは爽快な酸味の奥に柑橘、焼きリンゴやハチミツ、バタークッキーのような香ばしさもあり、長い余韻にしっかりとしたミネラル感が引いていく。
第2楽章「Ensemble(アンサンブル)」は、弦楽とピアノの弾むような旋律からスタートし、まるでグラスの中で微細な泡が立ち上り弾けるかのような心地よさに浸れる。こちらも徐々に楽器が増えていき、管楽器のリズム感が響く頃にはグラスのシャンパーニュが空気と触れ合い、味わいが花開いたような空間が広がる。高音と低音の対比構造は、まさにカヴィルが話していた区画の対比を思わせるようで興味深くもある。室内楽のメンバー構成で、音楽は決して膨らみすぎず、一定のメロディのリフレインでグラスの中の味わいが変化していくような、まさに不可逆な時間の流れを体感するような美しさだ。
最後のグラスに注がれたのは、「クリュッグ グランド・キュヴェ 164 エディション」。クリュッグ グランド・キュヴェは「どんな気候にも左右されず、最高品質のシャンパーニュを毎年世に送り出す」というクリュッグの姿勢を表現する、個性の違う区画から生まれる250種類のワインと、10以上の年代から選び抜かれたリザーヴワインから生まれるキュヴェだ。2008年のワインを中心に、1990年から2008年にいたるまで127種のワインをブレンドして造られた164 エディションの香りを嗅ぐと、その圧倒的な熟成感に思わず笑みがこぼれる。トーストしたバゲットのような香ばしい芳香に、スパイスのようなニュアンス、満開の花であふれるフラワーショップに立ち寄ったような高揚感。口をつけると、オレンジ、ジンジャーブレッド、アーモンド、ハチミツ、ブリオッシュ、コーヒー......そのさまざまな要素と複雑さに、心が躍る。
会場に響きわたるのは第3楽章「Sinfonia(シンフォニア)」。リヒターの穏やかなピアノから始まり、管楽器が静かに寄り添う。これまでの楽曲と同じように主旋律を重ねていくが、楽器の数が多くなり、それぞれが美しく響き合う様子はまさにシャンパーニュの複雑性を表しているかのようだ。対比があり、同調があり、そしてそれらは決して後退しない。盛り上がりを経て、終わりに向かっていく予兆に寂寥感さえ覚えながら、緩やかに、静かに、指揮者はタクトを止める。グラスのなかのシャンパーニュもついに空になってしまったが、その残り香と余韻はいつまで経っても無くなりそうにない。世界中のゲストはスタンディングオベーションで、マックス・リヒターと楽団、そしてジュリー・カヴィルに惜しみなく拍手を送っていた。
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クリュッグを片手に、音楽に浸る時間を。
「ワインと音楽はとても近しいもの。両方とも『言語を持たない』ながら、あらゆる人に同じ感覚が届き、心を揺り動かすことのできるユニバーサルランゲージ(世界共通語)なのです」とリヒターが言えば、カヴィルもその言葉に大きく頷く。
「マックスと私は、普段話す言語も違えば暮らしている場所、仕事の内容も全然別です。しかし、手がけているプロセスにとても共通点があった。それは、お互いの仕事が時間をかけることでしか生まれないものであること、とても多くの人々がプロジェクトに関わっていること、生み出したワインや音楽を通じて、世界中の人々に感動や美しい時間を届けられることです」
今回の3部作「Krug from Soloist to Orchestra in 2008」は、各種ストリーミングサイトにて配信が開始され、家に居ながらにしてこれらの楽曲を楽しむことができる。
「ストリーミングによって、音楽が民主化されたという素晴らしい側面がある一方で、音楽を聴くという体験自体が薄くなったような面もあるのかな、と感じている」とリヒター。
「シャンパーニュは喜びの時を祝うもの。そして音楽というものも、ぜひ意識的に聴く、という時間を大切にしてほしいと思います。感覚であり、香りであり、味であり、音である。それら全てに身を委ねる、『そのひと時を生きる』感性を味わっていただけたら、と思います」
KRUG& MAX RICHTER「Every Note Counts(すべての音に意味がある)」特設サイトはこちら




