クラシックホテルに早春の訪れ。
林の中にひっそりと佇む静謐な館
<font size="1"> 万平ホテル
~軽井沢/長野県~</font>

Lifestyle

 日本を代表するクラシックホテルとして時を刻む「万平ホテル」は、軽井沢の高級別荘地を通る林の中の細道を抜け、最奥の静かな場所にひっそりと佇んでいます。駅からほど近い場所であって、この静謐な環境は軽井沢らしいと思います。2013年2月22日、今年も例年の冬期休業を終え、春到来のシーズンに向けて早々と玄関の扉を開けました。目覚めたばかりのホテルを訪れたのは、3月初日。今年は3月の声を聞いても、まだ雪の残る軽井沢でした。

「万平ホテル」のメイン・エントランス。中はロビー、奥にダイニングルーム、向かって左はカフェテラス。

 静かな軽井沢はプライベート感に満ちています。ホテル開業を待ち切れないゲストが多く訪れ、早春のリゾートをゆったりと楽しんでいました。「万平ホテル」の歴史を語るには何冊もの本が必要なほどですから、ここでは遠慮しておきますが、元々のホテル創業は、1764年頃の旅籠「亀屋」に始まりました。当時から外国人に愛されていたホテルですから、夏ともなると長期滞在者が多く、軽井沢の涼しげな夏の休暇を満喫していたといいます。

(左)クラシカルなロビーやダイニングのある棟「アルプス館」。(右)広々としたスペースのロビーとラウンジ。奥はカフェテラス入り口。

 現「万平ホテル」となったのは1894年(明治27年)のこと。1945年(昭和20年)から7年間は米国に接収されていたり、東京オリンピック時には馬術競技のプレス関係者宿舎にも利用され、また1976年からの4年間、ジョン・レノンは亡くなる前年までの毎年ここで休暇を過ごしたといいます。まさに、語り尽くせぬ幾多のストーリーを秘め、歴史のページを紡いできた同じ空間にいると思うとホテルを愛おしくも感じます。

(左)ロビーの一画、暖炉の隣に置かれたピアノ。壁に掛かる’書’はそれぞれに由緒あるもの。(右)ロビーから「ウスイ館」へと続くコリドー。壁のステンドグラスは中のメインダイニングルームの採光として映る。


そんな「万平ホテル」は、2014年に120周年を迎えます。今年はそのお祝いのプレ・アニバーサリー年でしょう。3月20日には、春の「感謝祭」が開催されます。「春のランチブッフェ」「特製スィーツプレート」が提供され、1日2回の「館内案内ツアー」も予定されているとか。120周年のお祝いに向けて、ホテル全体が盛り上がりを見せているようです。

(左)格天井やライティングが美しいメインダイングルーム。(右)「ウスイ館」のツインルーム。

 それにしてもクラシカルな客室には、日本独特の趣が感じられます。和洋の折衷が活かされた「アルプス館」の客室はホテルのイアコン的存在であり、猫足のバスタブが置かれたバスルームや、床の間と床柱が印象的なインテリアは、まさにメイド・イン・ジャパンのホテルとして誇りさえ感じます。そして、2001年夏にクラシカルな様相を残しリニューアルされた「ウスイ館」、スタンダードタイプの「アタゴ館」、他に、家族で楽しめる「別館」、「コテージスィート」が揃っています。何れの部屋も、静かで上品な設えが好印象を与えています。

(左)「ウスイ館・ツインルーム」のコーナー。クラシカルな家具がしっとりと馴染む。(右)ウェルカム・フルーツとして、この日、客室に用意されたのはフレッシュで美味な最高級品”アメーラトマト”。

(左)メインダイニングに隣接するバー。(右)ベテランのバーマン小澤氏。ホテル話に楽しい時間が流れていく。

 メインダイニングルームでは伝統を受け継ぐフランス料理が供され、その他に中国料理、日本料理、カフェテラス、バーと揃い、いずれも本格派の料理が楽しめます。メインダイニングルームには貴重な格天井や、壁の大がかりなステンドグラス、アンティークなシャンデリアなど、設えには匠の技が活かされ、趣ある空間でゆったりと食事が楽しめます。中でも、クラシカルなインテリアのバーは、ゲストとバーマンが近い距離で接することのできる特別な場所。勤務歴が37年というバーテンダーの小澤孝道氏は、ベテランらしい機知に満ちた会話でゲストをもてなし、数々のオリジナルカクテルに腕を振るっています。    
総支配人の山田敏彦氏も30年以上のベテランですが、「今でも毎日、ロビーでお客様をお迎えするのが日課」と語っていました。ゲストの顔が見えるサービスこそホテル業の基本。ここではホテルマンが「万平ホテル」の温かなムードを創りあげています。長い年月を経ても愛され続ける理由は、決して名前に奢らない、真摯なもてなしがあるからに違いありません。(K.S)


長野県北佐久郡軽井沢町軽井沢925
Tel: 0267-42-1234
http://mampei.co.jp/
部屋数:110室
料金:7月26日まで(プラン1泊2食付き/2名利用1名料金)21000円~26500円、他プランあり
施設:レストラン、バー、カフェ、ボールルーム、ウエディングサロン、ショップ
アクセス:長野新幹線で東京-軽井沢1時間10分「軽井沢駅」から車で4分


Kyoko Sekine

ホテルジャーナリスト

スイス山岳地での観光局勤務、その後の仏語通訳を経て94年から現職。世界のホテルや旅館の「環境問題、癒し、もてなし」を主題に現場取材を貫く。スクープも多々、雑誌、新聞、ウェブを中心に連載多数。ホテルのコンサルタント、アドバイザーも。著書多数。

http://www.kyokosekine.com

この記事の元URL: https://madamefigaro.jp/series/bon-voyage/post-1263.html