正しさだけでは満たされないあなたへ。“背徳感”が美味しい、ホテルバーのフライドポテト【5選】

Lifestyle

フライドポテトは、とても不思議な料理だ。レストランのメインディッシュでもなければ、特別な日にだけ許されるご馳走でもない。それなのに、ホテルバーで供されるひと皿には、その場所の美意識やもてなしの哲学が驚くほど表れる。

まだ空に明るさが残る夕方。仕事のメッセージが気になりながらも、あと少しだけ自分のための時間を引き延ばしたい夜。そんな時に頼みたくなるのが、黄金色に揚がったフライドポテト。気負わずにつまめる気軽さと、どこか抗いがたいジャンクな魅力。その小さな贅沢を求めて、都内のホテルバーで出合った印象的な5皿をご紹介したい。

ホテポテ#1 フォーシーズンズホテル東京大手町「VIRTÙ」

フォーシーズンズホテル東京大手町のバー「Virtù」は、その名が示す通り、フランス語で“美徳”を意味する場所。高層階から望む東京の景色と、パリのサロンを思わせる優雅な空気が共存する空間には、都会の喧騒からふっと距離を置ける心地よさがある。

天井の高い空間と、ずらりとボトルが並んだバーカウンターは圧巻。バーテンダーの所作も美しく、空いていたら、ぜひカウンターへ。ヘッドバーテンダー、キース(中央)のエレガントかつチャーミングなおもてなしにも心がほどける。

ここで味わいたいのが、「フレンチフライ、黒トリュフときのこペースト」。

「トリュフフレンチフライ」¥3,900

細身にカットされたポテトは軽やかな食感に仕上げられ、表面には黒トリュフときのこのペーストをたっぷりと纏う。芳醇な香りと力強い旨味を備えながらも、後味は意外なほど軽快。気づけばもう一本、と手が伸びてしまう。

さらに食感を楽しみたいなら、「エクストラクリスピーで」とひと言とウインクを添えるのもオススメだ。ボリュームがあるため、2〜3人でシェアするのがちょうどいい。

「ほうじ茶モスコミュール」4,100円

合わせるなら、シグネチャーカクテルの「ほうじ茶モスコミュール」。ほうじ茶を漬け込んだウォッカとリキュールをベースにした一杯は、香ばしさと爽やかさを併せ持つ。トップに添えられたラズベリーシャーベットがゆっくりと溶け出すことで、時間とともに表情を変えていくのも魅力。トリュフ香るフライドポテトとの相性も美しく、グラスと皿の往復が自然と続いてしまう。

問い合わせ先

■フォーシーズンズホテル東京大手町「VIRTÙ」

東京都千代田区大手町1-2-1 フォーシーズンズホテル東京大手町39F
営)17:00〜24:00(日〜水・祝)、17:00〜24:30(木〜土)
休)無休

ホテポテ#2 東京エディション銀座「Punch Room Tokyo」

東京エディション銀座の「Punch Room Tokyo」は、ロンドン発祥のプライベートクラブを思わせる隠れ家のようなバー。そんな空気によく似合うのが、トリュフ香るフライドポテトだ。

「トリュフフレンチフライ、トリュフディップ(ベジタリアン)」¥2,600

幅約1cmにカットされたポテトは、表面に米粉を纏わせることで、軽やかな食感に仕上げられている。シャクッと小気味よい歯触りのあとに現れるのは、じゃがいも本来の甘みと惜しみなく振りかけられたサマートリュフの芳香。

けれど、このひと皿の主役はむしろ添えられたソースと言いたい。国産クリームチーズにイタリア産サマートリュフのパテ、さらにトリュフオイルを合わせた濃厚なディップは、ほんの少量でも口いっぱいに香りが広がる贅沢な仕立て。

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合わせるなら、「Wasabi Sonic(音速のワサビ)」を。わさびの香りを移したジンをベースに、煎茶とホエイを重ねた一杯は、爽やかな刺激と奥行きのある余韻が魅力。オイリーな口当たりを軽やかにリセットしながら、ウォッシュされたミルクを使っているからか、クリーミーなソースもどこかリンクした風味が楽しめる。

ポーションは比較的コンパクトで、ひとりでも無理なく楽しめるサイズ感。もっとも、誰かとシェアするなら話は別で、気づけば最後の一本を巡る静かな駆け引きが始まっているかもしれない。ちなみに今回は紹介を見送ったものの、チキンフリットとチリマヨネーズの組み合わせも秀逸。次回訪れる理由として、覚えておきたい。

問い合わせ先

■ 東京エディション銀座「Punch Room Tokyo」
東京都中央区銀座2-8-13 東京エディション銀座2F
営)18:00〜24:00(火〜木)、18:00〜26:00(金・土)
休)日・月

ホテポテ#3 パーク ハイアット 東京 「ニューヨーク バー」

高層階から東京の夜景を見下ろしながらグラスを傾ける。その体験自体がひとつの物語である「ニューヨーク バー」。リニューアルを経た現在も、映画のワンシーンのような空気感は健在だ。そんな場所で味わうフライドポテトは、脇役という言葉が似合わない。

「ロスト・イン・トランスレーション」でお馴染みのバー。今なおロケ地として訪れるファンは多い。
「ビーフフライドポテト 自家製ケチャップ」¥2,200(税込・サービス料別)

低温では牛脂、高温では和牛の脂を使い、温度を変え、二度揚げされるポテトは、表面は香ばしく、中はほっくりとした食感。ひと口頬張ると、まるでステーキのようなジューシーさが広がる。じゃがいも料理でありながら、肉料理を味わっているかのような満足感が楽しめる。

添えられるのは、自家製ケチャップ。多数のスパイスをブレンドした複雑な味わいは、一般的なケチャップの概念を軽々と超えていく。甘味、酸味、スパイス感が幾重にも重なり、ポテトの旨味をより立体的に引き立ててくれる。

「モンキー 52」¥2,640(税込・サービス料別)

合わせたいのは、オリジナルカクテル「モンキー52」。モンキー47をベースに、きゅうりジュースとライムなどを合わせた一杯は、爽快感と清涼感に満ちている。牛脂のコクをまとったポテトを軽やかに受け止めながら、次のひと口へと自然に誘ってくれる。

ちなみに、この空間を象徴する印象的なアート作品は、ニューヨークをテーマにしたもの。そんな逸話を肴に語り合う時間もまた、このバーならではの楽しみである。

問い合わせ先

パーク ハイアット 東京「ニューヨーク バー」
東京都新宿区西新宿3-7-1-2 パーク ハイアット 東京52F
営)17:00〜24:00
休)無休

ホテポテ#4 アマン東京「ザ・ラウンジ by アマン」

都心にありながら、別世界の静けさを湛えるアマン東京。吹き抜けのラウンジで過ごす時間には、どこか旅先に来たような余白がある。そんな「ザ・ラウンジ by アマン」で、アフタヌーンティーに続いて、人気メニューの筆頭がフライドポテトだというのは少し意外かもしれない。

The Lounge by Aman

ここでは、ポテトひとつにしても、3種類のメニューがあることはあまり知られていないのではないだろうか。

ザ・ラウンジ byアマンのフライドポテト3種類

  • ひとつ目は細身で軽やかなシューストリングポテト。繊細なサクサク感が魅力。もっとも人気が高く、どんなドリンクや料理にも寄り添う上品な存在だ。(フレンチフライ シューストリング ¥1,917)

  • 格子状のワッフルポテトは、外側の香ばしさと内側のほくほく感が共存。ソースとの絡みも良く、見た目にも華やかで、自然と手が伸びる。(フレンチフライ ワッフルポテト ¥1,917)

  • そして皮付きのウェッジポテトは、じゃがいも本来の旨味をしっかりと味わえる力強い一本。ガーリックの香りがほどよく効き、最後まで飽きることがない。(フレンチフライ ウェッジポテト ¥1,917)

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さらに、メニューには記載されていないものの、タイミングが合えばトリュフのスライスを追加できることもあるという。

それぞれ、ボリュームはしっかりとあるため、2〜3人でシェアするのがおすすめ。どれがお気に入りかを語りながら楽しむ時間も、このひと皿の魅力の一部だ。

「響ハイボール ¥4,900」

合わせるなら、潔く山崎ハイボールを。シンプルなポテトだからこそ、余計な装飾のない一杯がよく似合う。揚げたての香ばしさとウイスキーの奥行きが静かに重なり合う。

問い合わせ先

■ アマン東京 「ザ・ラウンジ by アマン」
東京都千代田区大手町1-5-6 大手町タワー33F
営)11:00〜22:00(フードL.O.21:00)
休)無休

ホテポテ#5 ザ・リッツ・カールトン東京「ザ・バー」

そして、トリを飾るのはザ・リッツ・カールトン東京。「ザ・バー」で供されるフライドポテトは、どこまでも贅沢だ。

東京の夜景を一望できるバーバック。時間帯によって生演奏も。クラシックから、最近のヒット曲まで繰り広げられる展開は、背筋が伸びながらも、肩肘張らなくてもいい居心地の良さがある。
「トリュフとチーズの自家製フライドポテトウェッジ」¥2,900

幅1.5cmほどの存在感あるポテトは、揚げたての状態で温められたボウルへ。そこには刻んだトリュフとバター、パルミジャーノ・レッジャーノ、塩、胡椒があらかじめ用意されており、熱をまとったポテトが加わることで全体がひとつの料理として完成する。

芳醇なバターの香りとトリュフの余韻が立ち上り、チーズの旨味が重なる。熱さが少し落ち着くと、纏われたバターがポテトの表面に幕をはり、舌に載せた時の旨みに変化が起こる。指先にまで香りが残るほど濃密でありながら、不思議と重たさは感じさせない。

添えられるのはマヨネーズ、ケチャップ、マスタードの3種。ポテトそのものが十分完成された味わいなので、その役割は主張ではなく変化を添えることにある。なかでもマスタードの食感と酸味は、トリュフの濃厚さに心地よいリズムを与えてくれる。

「ジャスミン グリーン サイドカー」¥3,700

合わせるなら「ジャスミン グリーン サイドカー」を。ヘネシーVSにエルダーフラワーリキュールとジャスミングリーンティーを合わせた一杯は、見た目通り可憐な印象。バターのコクをやさしく受け止めながら、華やかな余韻を添えてくれる。

問い合わせ先

■ The Bar
東京都港区赤坂9-7-1 東京ミッドタウン ザ・リッツ・カールトン東京45F
営)15:00〜23:30(月〜木)、15:00〜24:00(金)、
12:00〜24:00(土)、12:00〜23:30(日)
休)無休


理性は、そろそろ帰らなければと告げている。けれど、もう少しだけここに留まりたい。大人になるほどに知る。正しさや栄養学だけでは満たされない心があることを。

香ばしい油の香りに誘われ、もう一杯とグラスを重ねる。カロリーをまとった贅沢を味わう小さな背徳が、ときに一週間分の気持ちを軽くしてくれることもある。都会の真ん中で疲れちゃった女性達へ、パワーが出る少しのヒントとなりますように。

  • photography, text&editing: Izumi Akamatsu