歴史的建造物がホテルになった! 2026年にオープンの建築遺産ホテル3軒。

Travel 2026.04.17

近年、歴史的な建造物を保存・再生してホテルとして活用するプロジェクトが注目されている。壊すのではなく、開くことで次世代へつなぐ。旧市庁舎、祇園の劇場建築、明治の監獄――2026年に開業する注目すべき3軒は、建築好きはもちろん、旅の中に深みと物語を求める人を心酔させるこだわりにあふれている。宿泊の域を超えた「建築を体験するるホテルステイ」、ぜひ楽しんでみたい。

OMO7横浜 by 星野リゾート(神奈川県横浜市)

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村野藤吾設計・旧横浜市庁舎がホテルとして再生

2026年4月21日(火)、1959年に竣工し、横浜市政を60年以上にわたって支えた旧横浜市庁舎が、「OMO7横浜 by 星野リゾート」(以下、「OMO7横浜」)として開業する。

いまもその姿を関内の街角にとどめる旧横浜市庁舎は、近代建築の巨匠・村野藤吾氏が設計。横浜開港100周年記念事業として竣工され、市民の拠り所として時を刻んできた。2025年8月には行政棟が戦後建造物として初めて「横浜市認定歴史的建造物」に認定されている。

保存と活用という相反しがちなこのふたつの命題を、「新旧融合」という思想のもとに両立させようという試みが、今回オープンする「OMO7横浜」だ。コンセプトは「気分上々、ハマイズム」。1859年の開港以来、海外と日本の文化が出会い、常に新しいものを発信し続けてきた横浜のエネルギー――それをそのまま体感できるホテルを目指す。

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ホテルの中心となる、1階と2階にまたがるパブリックスペース「OMOベース」は、旧市庁舎の記憶を現在に伝える空間だ。1階と2階をつなぐ階段は、旧市民広間の大階段のデザインにインスピレーションを得て再構築した。

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村野氏の建築は、合理主義的な形式に縛られず、人間的なスケール感と素材への深い理解から生まれる「柔らかさ」が特徴。なだらかな曲線、素材の質感、そして細部への圧倒的なこだわり――それらはすべて、使う人を中心に置いた思想から生まれたものだ。その美学を象徴するなめらかな曲線を描く手すりの一部は実物を再活用している。

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エントランスには、旧市会棟本会議場にあった円形照明のデザインを、素材と光の漏れ方を現代的に再解釈するかたちで採用。歴史の面影を残しながら、ホテルらしい高揚感のある雰囲気を生み出す。2階窓際には旧市会棟本会議場で実際に使われていた議員席を配した。

旧横浜市庁舎の屋上を活用した「HAMAKAZEテラス」は、宿泊者だけが足を踏み入れることができる特別な場所。全長約45メートルにわたるテラスから、横浜スタジアム(ハマスタ)を俯瞰で眺められる見晴らし台は正真正銘の特等席となる。

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エレベーターのボタン、各階の階数サイン、そして客室番号プレートにも、村野氏のオリジナル数字デザインを継承した。プロジェクトチームは、旧市庁舎に残されていた村野氏デザインのフロア階数サインを発見。しかしオリジナルには「0」と「9」が存在しなかった。そこで、村野・森建築事務所で村野氏と共に活動していた鈴木志朗氏に新字体のデザインを依頼した。

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客室に施された赤・青・緑のテーマカラーは、議長室の深紅、磁器タイルの青、本会議場の緑と、旧横浜市庁舎の内装から引用している。客室は全276室、広さ20㎡から73㎡の全9タイプを設けた。最大6名まで宿泊できる「やぐらスイート」(73㎡)は広さと高さを兼ね備えた最上位タイプ。最大4名利用の「かたりばルーム」は、ソファを囲んだ談話にも、ゆったりとした2人の滞在にも対応する。3階は「ドッグフレンドリーフロア」となっている。公園や海辺、緑豊かな散歩コースが充実する横浜で、家族の一員である愛犬と快適な滞在ができる。

村野建築、そして、旧横浜市庁舎の息遣いを感じながら、横浜という街の奥行きをゆっくりと味わいたい。

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OMO7横浜(おも)by 星野リゾート
神奈川県横浜市中区港町1-1-1(BASEGATE横浜関内内)
050-3134-8095(OMO予約センター)
https://hoshinoresorts.com/ja/hotels/omo7yokohama/

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帝国ホテル 京都(京都府京都市東山区)

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祇園の記憶を纏うホテルで眠る

2026年3月5日(木)、帝国ホテルが開業した。東京、上高地、大阪に続く4軒目となる帝国ホテルブランドであり、大阪以来、30年ぶりとなる新規開業だ。

その舞台となったのは京都・祇園の「弥栄会館(やさかかいかん)」。1936年に祇園の歌舞練場を補完する劇場として建てられた、地上5階地下1階の鉄骨鉄筋コンクリート造の劇場建築で、演劇や映画、ダンスホールとして長く地域の人々に親しまれてきた。2001年に国の登録有形文化財に指定。西洋建築に瓦や宝相華柄のテラコッタレリーフなど和の要素を巧みに織り交ぜ、各階に銅板瓦葺き屋根をかけた姿はどこか城郭の天守を思わせる。

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祇園には厳しい景観条例があり、新築の建物は高さ12メートルまでに制限されている。既存建物を生かすことは開発の前提条件でもあった。これを受け、建物の歴史を丹念に継承することを最優先し、南西面の外壁と一部躯体を保存。外壁タイルやテラコッタはひとつひとつ取り外して「生け捕り」に。約10万枚あった外壁タイルのうち約1万6000枚を確保し、南面の外壁に再利用した。銅板瓦葺き屋根も復元。経年とともに緑青へと変化していく銅の色の移ろいを計算した上での設計だ。

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内装デザインを手がけたのは新素材研究所の建築家 榊田倫之氏。車寄せの天井部分は、弥栄会館時代の緞帳上部の壁に使われていた麻の葉のデザインをアレンジ。エントランスには弥栄会館時代のイタリア産赤色大理石と梅枝文様のエッチングガラスを再配置した。エレベーターホールの階数表記のデザインは、旧弥栄会館の建築家である木村得三郎のスケッチと1930年代当時のアールデコの文字などからインスピレーションを得ているなど、その探究心は、この記事だけではとても書き尽くせない。

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photography: Masatomo Moriyama

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photography: Masatomo Moriyama

客室は全5タイプ55室。全室50㎡以上を確保し、落ち着いたトーンで統一した。帝国ホテルとして初めて設けられた畳敷きの客室「北棟プレミア」と「北棟グランドプレミア」は、玄関廊下には桜の木、床の間には栃や栗の古材が用いられるなど、日本古来の建築素材の妙が細部に宿る。弥栄会館時代に使われた北木石を配した宿泊者専用プールは洞窟のような神秘的な雰囲気が魅力。京都市内を一望できる宿泊者専用のルーフトップバーにも足を運んでみたい。

帝国ホテル 京都
京都市東山区祇園町南側570-289
075-531-0111
https://www.imperialhotel.co.jp/kyoto

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星のや奈良監獄(奈良県奈良市)

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明治の赤レンガ建築「旧奈良監獄」にステイ

旧監獄に泊まる――。そんなエキサイティングな体験が2026年6月25日(木)、現実となる。星野リゾートが手がける「星のや奈良監獄」は、奈良市街と京都を結ぶ奈良街道沿いの静かな住宅地に位置する、1908年竣工の奈良監獄を活用したラグジュアリーホテルだ。コンセプトは「明けの重要文化財」。重要文化財を宿泊施設として活用する日本初の試みで、国が建物の所有権を保持したまま民間が運営するスキームだ。

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旧奈良監獄は、不平等条約の解消と司法の近代化を目指した明治政府が建設した五大監獄のうち、唯一、全貌が現存する建造物で、2017年に国の重要文化財に指定された。設計を担ったのは、欧米各国の監獄建築を視察して回った山下啓次郎氏。中央の看守台から5つの分房監が放射状に延びる「ハヴィランド・システム」を採用し、少数の看守が全棟の収容者を一元的に監視できる構造は、文明開化の時代にふさわしい、当時の最先端の建築様式だった。表門や庁舎を覆う優美なアーチ型曲線、赤レンガを積み上げた外壁、高天井の廊下、整然と並ぶ重厚な木製ドア、ドームと瓦屋根の調和――国が威信をかけて造り上げた国家建築の矜持が建物の随所に表れている。

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名建築の素材感とスケールを最大限に活かすため、メリハリある修繕を実施。中央看守所上部の窓は最小限の改修にとどめ、広大な吹き抜け空間を保存。高所から差し込む自然光は、ホテルに生まれ変わっても健在だ。

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宿泊棟は約5㎡の舎房を9〜11室連ねて、寝室・ダイニング・リビング・バスルームを備える1室に仕立てる。全48室はすべてスイートルームだ。客室の壁面には、修復工事中に漆喰の下から現れた100年以上前の手積みのレンガをあえてむき出しのまま設置。小窓から差し込む光が時間帯ごとに変わる陰影を生み出す。木製ドアには木の呼吸を妨げない柿渋を塗り、風合いを残しながら補修を施した。

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旧監獄を象徴する中央看守所や庁舎、中庭、その他の建物も、それぞれ現代的に再解釈。講堂はアーチ型のパーティションで区切り、メインラウンジとしてくつろぎのソファスペースとした。鉄扉の向こうに眠っていた建築美が、いま旅の舞台として息を吹き返す。

なお、ホテル開業に先駆け、4月27日(月)には、「美しき監獄からの問いかけ」をテーマにした「奈良監獄ミュージアム by 星野リゾート」が開館する。

星のや奈良監獄
奈良県奈良市般若寺町18
050-3134-8091(星のや総合予約)
https://hoshinoresorts.com/ja/hotels/hoshinoyanarakangoku/

editor: Aya Hasegawa

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