3月17日正午に始まった、フランスの外出制限。いつまで続くのか……4月13日の午後8時、国歌ラ・マルセイエーズに続いてマクロン大統領の演説があり、そこで5月11日までと発表された。クリエイターたちは外出制限が続くこの時期をどこで、どのように過ごしているのだろうか。どんなことを思っているのだろう。日本でもおなじみのアーティスト、ナタリー・レテに語ってもらおう。
Nathalie Lété(ナタリー・レテ)


プレタポルテ・ブランドのpéroとのコラボレーションpéro × Nathalie Létéの春夏コレクションより。le monde de Nathalie、Usagi pour Toiなどで販売。
ーー 外出制限期間をどこで過ごしていますか?
パリから南へ80kmくらいの場所、フォンテーヌブロー近くの小さな村の別荘にて。
ーー この状況における喜びは?
ロワン川に張り出している庭に大きく開かれている部屋の窓の前で、(YouTubeでレッスンビデオに従って)気功を行うこと、鴨が飛び立つのを見ること。
ーー この時期、何が恋しいですか?
ふたりの子どもをこの腕に抱きしめられないことです。彼らは外出制限要請が出た時点にいた場所に留まっていて、まったく外出が許されない場所にいる息子はとても不幸です。
ーー 外出制限以降に始めた新しいこと、あるいは以前より時間をかけていることは?
仕事と、家の壁の塗り直しに半々、という時間の使い方をしています。壁一面に花を描いていて、描くほどに、家のあらゆる場所を少しずつ花で覆わねばという必要を感じ……かなりな作業です。
そしてこの2週間前からインスタグラム(@nathalie_lete)のフォロワーたちに、彼らのお気に入りの昔のおもちゃの写真とその理由を送ってもらっています。情報を集め、送られた写真の中からデッサンしたいものを描き、翌日に私のインスタにあげます。友人のKenji Hirano(注:フィルムメーカーの平野絢士)から、私のクライアントのために彼が製作するミニムービーにこれらの玩具のデッサンを入れよう、と提案がありました。これは世界中で自宅に留まっている人々へのオマージュとなりますね。ちょっとしたクリエイティビティをもたらすことで、自宅を快適な巣、繭に変身させることができるというインスピレーションにもなります。いまの時期、外に出たい!という気持ちを起こさないよう快適に在宅時間を感じられるための自分自身の環境を作り上げるのは大切なことです。フォロワーたちが健康を維持し、病院を満杯にしないようにと助けることも大切なことです。




家中の壁という壁に花を描き続けるナタリー。photos:Courtesy of Nathalie Lété
ーー この時期を仕事やクリエイションにどのように活用していますか?
外出制限がなければ、いま進めているような壁の模様替えはしなかったでしょう。以前は週末ごとに数時間くらいかけて壁に花を描いていましたが、これは時間をたくさんかけて家中すべての壁に描くのとは訳が違います。この時期こうしていると、修道院の中のアーティスト・イン・レジデンスに滞在中という感じがしています。
ーー どのような装いで過ごしていますか?
ジーンズ、Tシャツ、室内履き……ペンキ塗りにも犬を膝の上で抱くにも快適な装いです。
ーー どのような音楽を聴いていますか?
静寂を好む夫と一緒なので、日頃から音楽はあまり聴きません。ここで耳にするのは、鳥のさえずりと庭の下から聴こえてくる滝の音。

パリの南の小さな村でナタリーが暮らす、緑に恵まれた別荘。photo:Courtesy of Nathalie Lété
ーー 外出制限期をよりよく過ごすために、自身に課していることは? 健康のため、何か運動をしていますか?
ヨガと気功です。どちらかを1日に30分。もっと時間をとりたいけれど、なぜか通常よりも時間がとても速く過ぎるので……。時々、夫と犬の散歩に出かけます。いまの時季、天気がとてもよく暑いので庭の水撒きも。
ーー 外出制限によって、発見したことはありますか?
誰にも会わずに閉じこもって暮らすことが、私には苦痛ではないことを知りました。描いている時、とても幸せです。でもこれは以前からわかっていたことですが。
また、この時季、バターを塗ったタルティーヌ、太陽の日差し、ちょっとしたブーケ、小鳥の声……といったありきたりのことがありがたく感じられます。世界中が同じ状況にあり、より無力となっているホームレスや、インドのような国の貧しい人々に思いを馳せると、自分は恵まれていると感じます。自分たちの境遇に感謝するばかりです。この境遇に不平を持たず、自宅におとなしくいるしかありません。
ーー 現在のいちばんの関心事、気がかりは?
ひたすら仕事に専念することです。ニュースを少し聞きますが、私はとても感じやすいたちなので、この現実を考えると眠れなくなってしまいます。だから、精神的にも引きこもっているのが良さそうです。
ーー 外出できるようになったら、何をしたいですか ?
この辛い時期の後なので、子どもたちと一緒に旅に出て、思いっきり彼らを甘やかしたい。この時期をとても不安な思いを抱えて暮らしている母と散歩をしたい。なぜならアルツハイマーを患っている義父と暮らしている彼女は、とても大変なので。
ーー そのほかに付け加えたいことがあれば……。
外出できない暮らしはポジティブにもなりえます。でも警官によるコントロールによって禁止や拘束されているという感じは苦痛です。自宅を出ることが犯罪を犯すことのような気がして……。早くこの時期が終わってほしい。といっても、この先のことについては大きな疑問があります……たとえこの外出制限下でも、幸せでいるために確実で美しい巣を築かなければ。



インスタグラムのフォロワーから届いた写真をもとにナタリーが描く古い玩具のデッサン。これらをミックスしたミニムービーは平野絢士のインスタグラム(@kenjihiranofilm)で見ることができる。photos:Courtesy of Nathalie Lété
【関連記事】
外出制限のフランス、バレエダンサーたちの過ごし方。
réalisation : MARIKO OMURA
この記事の元URL: https://madamefigaro.jp/paris/200416-nathalie-lete.html