写真・文/長谷川安曇(在ニューヨークライター)
長く暗い冬が終わった後、春の風物詩といえばスプリング・クリーニングだ。暖房を使用した際に溜まったほこりや汚れを一気に取り除く大掃除で、北米では暖かくなった4月頃に行うことがほとんど。
スプリング・クリーニングの起源は、ユダヤ教やキリスト教に関係していると言われている。パスオーバーやイースターなどの4月の祝日の頃に行われることが多い。
ニューヨークではふだんの掃除を業者やハウスキーパーに委託する文化が根付いているので、掃除や整理整頓を自分でしない人が多く存在するのも事実だ。そんな背景も、片付けコンサルタントの近藤麻理恵さんがアメリカで爆発的に人気になった所以かもしれない。また若い世代は、アパートが狭くて保管するスペースがないこともあり、掃除機を所有している人が少なく、絨毯が汚れたら隣の家の人に掃除機を借りに行ったりする。そんな掃除に対する、若干他力本願なカルチャーが後押ししてロボット掃除機も流行った。いまや各ブランドがなさまざまな機種を発売し、高価だった価格帯も最近では100〜200ドル台に。かなり手が届きやすい価格になってきた。
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いっぽうで、ロボット掃除機やスマートスピーカーは「民間人をスパイしている」という噂を信じている人も存在する。スマートスピーカーが設置されている部屋で、投資や取引の話はしたらダメ!と焦る人もいるほど、一部のニューヨーカーは警戒心が高い。そこで注目が集まっているのが、実はアナログなモップとホウキだ。
アメリカで人気の高田耕造商店のホウキは長年使えると評判だ。photo:高田耕造商店
汚れやほこりが取りやすく、いちばん簡単で収納場所もとらない。クラフトマンシップが活きた日本製のほうきや、ペンシルバニア州などで暮らすアーミッシュの人々(電化製品などを使わずに、自給自足で暮らす人々)が手作りで作ったものなど、インテリアとなじむ、シンプルで美しい見た目も人気を後押しして流行っている。特に、アーミッシュの人々が作った生活用品は、ホウキに限らず、クラシック回帰の流れで使い始める人が増えてきた。またサステイナブル意識の高まりで、プラスチック製のものを家に置きたくない人や電気掃除機が排出する空気を懸念している人にとっても、クラシックな掃除道具のほうきは大丈夫。
スプリング・クリーニングの時には不用品を処分する人も多い。救世軍に寄付したり、古着屋に売りに行ったり。最近では着なくなった服をポッシュマークなどの販売サイトで販売して、売り上げをコロナ禍で経済難に陥ってるコミュニティに寄付する人も。毎年恒例のスプリング・クリーニングが、エコな方向に向かっているのはうれしい。ふだんは憂鬱なクリーニングも、社会に貢献もできる楽しい習慣になりそうだ。
面倒なので、スプリング・クリーニングの時だけファンの上のほこりを掃除する。
photos et texte:AZUMI HASEGAWA



