「今日は、気取り過ぎないご飯」な気分の時、ロワールワインがあなたに寄り添う。
今日のワイン選びがちょっと楽しくなる連載「ワインテイスティングダイアリー」。フィガロワインクラブ副部長・カナイが日々、ワインを求めて畑へ、ワイナリーへ、地下倉庫へ、レストランへ、セミナーへ……。美しいワインがどのように育まれるかの物語を、読者の皆さまにお届けします。
今回はフランス第3位となるワインブドウ生産地、ロワールについて。ロワールワイン委員会が開催したテイスティングセミナーから、その魅力をお伝えします。
「フランスワインを飲みたい」と思う瞬間。
「今日、ちょっとフランスワインが飲みたいんです」という気分になる時が、ワインラヴァーにはある。前日に印象派の展覧会に行ったのかもしれないし、久しぶりにフランス映画にじんわりきたのかもしれないし、朝食にクロワッサンとコーヒーをいただいたのかもしれない。ついイタリアワインの「渋旨」系に惹かれがちな私でも、マドレーヌを紅茶に浸した瞬間、ふとフランスワインが飲みたくなった時は確かにある。

「フランスワイン」と言われて多くの人が想像するのがブルゴーニュ、ボルドー、シャンパーニュといった生産地ではないかと思う。綺羅星のごとくスター生産者が並び、歴史と文化に憧憬を覚え……。とはいえ憧れの生産者たちのワインはやはり皆が欲しいもので、昨今の世界情勢もあり、その値段が高騰していることは事実。そして価値が高く、トップクラスのワインを味わうことはもちろん素晴らしいことだが、日常にちょっとした喜びをくれるグラスを楽しむのも、ワインの楽しみのひとつではないかと思うのだ。
ボルドーの生産者たちが現在、よりリーズナブルでアプローチャブルなワインを造る取り組みをしていることはフィガロワインクラブでも何度も取り上げてきたし、他の産地でもとても魅力的なボトルが生まれているのだが、今回特に注目したいのはフランス最長を誇るロワール川流域だ
暑くなる季節に、ロワールの泡と白ワインがよく合う。

フランスで最も長いロワール川は、水源から海に向けて、土壌も大きな変化を生む。東から西へ川が流れるに従い、畑の中に含まれる成分は大きく変化していく。自然と、その地域で育つブドウ品種や特徴にも変化が生まれる。そのため、ロワール全体を俯瞰すれば瓶内二次発酵(シャンパーニュと同じ製法)のスパークリングワインから甘口白、辛口白、甘口ロゼ、辛口ロゼ、辛口赤、甘口赤ワインまであらゆるワインの生産が法的に認められている、という多様性に富んだ生産地なのだ。

そしてもうひとつの特徴が、海外に輸出されるロワールワインのうち、白ワインとスパークリングの輸出が80%を超えること。川によって運ばれたミネラル感の強い土壌で育つ、フレッシュなスパークリングワインや白ワインは日本でも手に入りやすい。まずは瓶内で12カ月以上熟成されたスパークリングワイン、「クレマン・ド・ロワール」で喉を潤して。以前、特集「ワインがあれば、人生は楽しい!」でも推薦したことがあるラングロワの「クレマン・ド・ロワール ブリュッ ト レゼルヴ」をはじめ、ロワールではシュナン・ブランを使用した青リンゴや柑橘、サンザシなどを感じる爽やかな白泡から、しっかりとしたベリー系を感じるロゼ泡までさまざま。

これからの暑くなる季節に飲みたいのは白ワイン。河口に近いナントで造られるミュスカデはさっぱりとして飲みやすく、澱とともに熟成するシュール・リーのタイプであればそこに旨味が加わり、魚介系にも合わせやすい。高い酸味が特徴のシュナン・ブランも要注目だ。フレッシュなタイプには白い花やカリン、青リンゴの香りが漂い、熟成させればそこにハチミツやナッツのフレーバーが乗ってくる。
「日常の食事」に寄り添うロワールワイン。

ワインは生産地の近隣で取れる食材と相性がいい、という鉄則があるが、川沿いに続くロワールではアスパラガス、鶏肉、豚肉、そして川魚、海魚とバラエティに富む。普段の食事にも合わせやすい、というのもロワールワインの特徴のひとつだろう。

ピノ・ノワールやガメイなど、ブルゴーニュにも見られる赤ワイン品種もおいしいが、あえて注目したいのはカベルネ・フランだ。昨今の気候変動により、成熟が難しかったカベルネ・フランが完熟するように。ボディ感もしっかりし、きめ細やかなタンニンや落ち着いた土っぽいニュアンス、風格ある香りが漂うロワールのカベルネ・フランは、ペアリングを考えるのがとても楽しいワインのひとつだ。

「今日はちょっと、ワインが飲みたいな」という帰り道、自宅に帰る前にぜひワインショップやスーパーの棚で、ロワールワインを探してみて。もちろんトップキュヴェの素晴らしさはいうまでもないが、背伸びすることなく、日常感を楽しめる幅広いラインナップが、きっと揃っているはず。