宮本恒靖のエレガンスに齊藤工はどう向きあったのか?
6月15日早朝、多くの日本人がテレビの前に座り、日本対オランダの試合を見守ったはずだ。後半スタート直後、先制点をオランダに取られ、すぐに日本が1点を奪取。しかしながらまた点を追加され……。サッカー観戦のときめきは、ふだんスポーツに興味を持たない人にも多いなる刺激をもたらす。
2002年日韓W杯で、サッカーファンになった日本人も多いと思う。顔面を負傷し、保護用の黒いマスクで出場したディフェンダーが宮本恒靖。代表チームのキャプテンも務めた。黒いマスク姿は「バットマン」というニックネームで呼ばれるようになり、驚かされたのはマスクを脱いだ宮本が文字通りの「ハンサムガイ」であったこと。かなりドラマティックな人物だ。
かねてからサッカー好きであり、本人もサッカーを趣味のひとつとして挙げている齊藤工だが、宮本のどのような部分にシネマティックな魅力を感じたのだろうか?
「宮本さんの魅力は、静かなまま物語を背負っている佇まいだと思いました。かつての黒いマスク姿や、アジア杯での芝に対する冷静な判断の記憶も含め、派手に感情を出すのではなく、場の緊張を引き受ける強さがある。選手、指導者、会長という時間を経た俯瞰の眼差しにも、そのエレガンスを感じます」(齊藤)

2006年のドイツで行われたW杯もキャプテンを務め、現役選手引退後はFIFAマスターを卒業。日本人の元プロサッカー選手では初の快挙であった。身体を張り、そして指導者へ。日本のサッカーをより高みまで進化させるべく、現在は日本サッカー協会の会長を務めている。誰もが宮本のサッカー人生がとんとん拍子で着実な歩みと感じるはずだ。そのような印象を観る者に与える理由が、宮本が醸し出す「エレガンス」にあると思う。冷静沈着、ディフェンダーという全体を観察する視点からのアクション――人が指揮を執り、その指揮者の方針に周囲が従う時、「信頼」を抱かせるエレガンスがあるのだ。
「対談では、理知的で言葉を丁寧に選ばれる方だと感じました。一方で、ふと関西の方らしい柔らかさやユーモアも滲む。その両方をポートレートに写したいと思いました。静かな威厳と、人間的な軽やかさ。その揺らぎに、宮本さんらしさを感じました。
そんな宮本会長が全身全霊で支えるサムライブルー。全国民共闘、総力戦で行くところまで行って欲しい」(齊藤)
6月15日のW杯日本の初戦対オランダ戦は、最終的に2対2のドローという結果だった。0対0より断然いい。積極的な美しいサッカーにトライした証だ。
ここから7月19日(日本での放映は20日早朝)までの約1ケ月、世界中がサッカーというシネマティックなスポーツの虜になる。宮本恒靖は、静かな観察から得た知見を軸にさらなる日本のサッカーの進化に邁進していくに違いない。

宮本恒靖/TSUNEYASU MIYAMOTO
1977年2月7日生まれ、大阪府出身。長年ガンバ大阪で活躍し、日本代表としては2002年の日韓、06 年のドイツと、2大会連続でワールドカップに出場。引退後には国際サッカー連盟が主催する修士課程「FIFAマスター」を修了し、指導者としても自身の古巣であるガンバ大阪を率いた。24年、戦後最年少で公益財団法人日本サッカー協会会長に就任。「サッカーで未来をつくる」を掲げ、日本サッカーの発展に取り組んでいる。