映画『オデュッセイア』、マット・デイモンのスタントを務めたのは女性だった!

Culture

7月20日(月)配信のポッドキャスト番組「Happy Sad Confused」に出演した際、アメリカ人俳優のマッド・デイモンは、映画のいくつかの重要なシーンでは、自身の吹き替えを女性が担当していたことを明かした。

ローマのIMAXシアターに設置された『オデュッセイア』の場面再現。(2026年7月22日)photography: Shutterstock

映画『オデュッセイア』でマット・デイモンが演じるのは、ホメロスが生み出したギリシャ神話の英雄オデュッセウス。しかし、映画のあるシーンでは、スクリーンに映っているのは完全に彼本人ではないという。7月20日(月)配信の俳優ジョシュ・ホロウィッツが司会を務めるポッドキャスト番組「Happy Sad Confused」に出演したマット・デイモンは、主人公が人食い巨人族「レストリュゴネス」と戦う場面では、スタントダブルが自身の代役を務めていたことを明かした。

カナダ・バンクーバー出身のデヴィン・ダルトンは、35歳の女優であり、スタントダブル、さらにモーションキャプチャーのスペシャリストでもある。その顔は一般にはあまり知られていないものの、これまで数多くのハリウッド作品に携わってきた実績を持つ。これまでに『The Last of Us』や『猿の惑星』シリーズなどに参加。ボクシングやムエタイ、フェンシング、サーベルの扱いに加え、複数のダンスを習得しており、アクションシーンのスタントダブルとして非常に高く評価される経歴の持ち主だ。

目を欺くために選ばれたシルエット

デヴィン・ダルトンが起用された最大の理由は、技術的な制約にあった。CGではなく実写効果を優先するという自身の方針を貫くクリストファー・ノーラン監督は、レストリュゴネスを表現するために、「フォースド・パースペクティブ(強制遠近法)」という撮影技法を採用。この手法は、被写体までの距離や大きさの比率を巧みに利用することで、カメラの前で実際以上に大きな身長差があるような錯覚を生み出すことができる。

「巨人を演じたスタントマンたちは身長2メートルを超えていて、一方でギリシャ人側のスタントダブルは150センチ未満だった」と、アメリカ人俳優はポッドキャスト番組で説明した。こうした撮影方法の中で起用されたのが、カナダ出身のデヴィン・ダルトンだった。小柄な体格に加え、優れた身体能力を兼ね備えていた彼女は、敵である巨人たちを前にオデュッセウスがひときわ小さく見えるシーンで、理想的なスタントダブルだった。

「人生で見た中でいちばん美しい腕」とマット・デイモンが絶賛

技術的な工夫だけでなく、スタントダブルの鍛え上げられた腕にもマット・デイモンは強い印象を受けたようだ。身長178センチのマット・デイモンは、初めて彼女と会った時のことを振り返り、「僕のスタントダブルは女性だったんだけど、人生で見た中でいちばん美しい腕をしていた」とユーモアを交えて語った。また、オデュッセウス役を演じたデイモンは、共演したスタントダブルの仕事ぶりにも敬意を表した。「映画のほとんどの場面で映っている腕は、ほぼ100%僕のもの。でも、巨人たちに見下ろされるあのシーンでは、彼女の腕なんだ。称賛に値する人には、きちんと敬意を払わないといけない」と付け加えた。

一方、デヴィン・ダルトン自身も、この経験をかけがえのない思い出として振り返っている。彼女は自身のインスタグラムに、スコットランド・ハイランド地方で行われた撮影の舞台裏写真を複数投稿し、マット・デイモンのスタントダブルを務めたことについて「光栄だった」とコメントした。さらに、「私たちは一生懸命に取り組み、たくさん笑い、一生忘れられない思い出を作りました」と振り返り、「壮大なチームワークの成果だった」と撮影チームをたたえている。アカデミー賞受賞俳優であるマット・デイモンがこのエピソードを明かしたことで、デヴィン・ダルトンは普段は表舞台に立つことの少ないスタントダブルとして、束の間ながらスポットライトを浴びることになった。それは、名前がスター俳優たちの陰に隠れがちな仕事でありながら、映画の壮大なアクションシーンに命を吹き込むうえで欠かせない人々への、ひとつの称賛でもあった。

From madameFIGARO.fr

※この記事は、フランスの新聞社「Le Figaro」グループが発行する「madame.lefigaro.fr」で掲載されたものの翻訳版です。データや研究結果はすべてオリジナル記事によるものです。

  • text: Lovelly Ndinga-Ikobo (madame.lefigaro.fr)
  • translation: Hanae Yamaguchi