家族の食卓、幸せはすぐそばに。【ワイナリー女将、池田華依さんのトスカーナ暮らし 後編】

Lifestyle

世界遺産の美しい風景に囲まれたトスカーナで、夫と4人の子ども、義理の両親と暮らす池田華依さん。〈前編〉に続き後編では、毎日の食卓から夏のバカンス、SNSを通してあらためて気づいた日常の楽しさまで、家族と過ごす時間について聞いた。便利さとは少し離れた場所で、池田さんが大切にしている“幸せ”とは?

家族をつなぐのは、毎日みんなで囲む食卓。

─ インスタグラムを拝見していると、毎日の食事がどれもおいしそうですね!

池田 食べることが好きな分、作るのも好きなもので。何より、義母に教わるイタリア料理のレシピは私の財産となっています。

ランチはワイナリーのスタッフも一緒に食べるので、毎日十何人分っていう量を作ります。毎日必ず 1キロ以上のパスタを茹でているかも…。夜はいろいろで、自分たちや子どもたちが食べたいものや、日本食を作ることもありますよ。

食事って、食べている時間はもちろんですが、食べ終わった後の時間も愛おしいんですよね。みんなでテーブルに座ったままゲームが始まったり、くだらない話で笑ったり。そういう時間って、子どもが大きくなると確実に減っちゃう時間だから、いまがすごく尊いです。

食材の宝庫、イタリア。家庭ごとに受け継がれるレシピがあるのでしょうか?

池田 そうですね。都市や若い年代の人はわからないけど、多分それぞれ、お母さんから学んだレシピをちょっとずつアレンジしながら、自分の味にしているんだと思います。 私も子どもに、料理は絶対学んでほしいなと思いますし。「学校の勉強より料理!」って。

末っ子がいま3歳なんですが、我が家の子どもたちはみんなその頃からナイフを使わせています。もちろん見ていてこっちが怖いけど、自分が食べるものが畑で実っているところから、どうやって食卓に並ぶのかまで、知っていてほしいなと思うんです。

─ 子どもたちのおやつも作りますか?

池田 作りますよ。それか、みんな小腹が空いたら生ハムを切ってパンに乗せたり、サンドイッチにしたりして食べています。あとは畑で採れたフルーツ。バケーションに行くとポップコーンやチップスも食べちゃうけど、普段は家に置いてなくて。スーパーに行けば買えるんですけど、なければそこにあるものを食べるって感じです。

あと子どもたちは、自分たちでフルーツを採りに行ったり、郊外ではよくある光景ですが、学校や公園にある松の木の下で拾ってきた松ぼっくりを砕いて、中に入っている松の実を食べたりするんです。松の実って買うとすごく高価なもの。だから、これもラッキー(笑)

家族みんなで楽しむ夏のバカンス。

─ 毎年、海沿いにもバケーションに行かれているとか。

池田 トスカーナは丘陵地帯もいいですが、海もいいんですよ。我が家が毎年夏に行くのは、ローマとラツィオ州の境にある、陸続きで行ける島。ビーチがきれいで、船で離島に行くこともできるんです。世界から来た豪華客船が港に停泊する、美しいリゾート地です。

大体10日間、一軒家を借りて滞在します。シュノーケリングや釣りをしたり、海でクロールしたり(体育会の血が騒ぎます)。 “イタリア人にとっては日焼けが豊かさの象徴”、“バケーションに行く余裕がある証拠”という話はよく知られていると思いますが、まさにみんなそれを地で行っていて、ビーチには日焼けを楽しむ大人たちがいっぱい寝転んでいます。 

海の食材が豊富で新鮮なのも魅力。我が家は子どもが4人いるから、どこに行ってもてんやわんやですが、日常から少し離れて思いっきり羽を伸ばす時間も、家族の宝物となっています。

日常には面白いことが転がっている!

─ 一年半前にSNSを始めて40万人超えのフォロワー。発信のきっかけは何だったのでしょう?

池田 それまでは、トスカーナの田舎で静かに生きていたんです(笑) ある日、ワイナリーにアメリカ人のお客様が来て、「華依さん、みんなが羨むような生活をしているのに、何にも発信してないのはもったいないよ」と言われて。

「いや、ワイナリーの仕事でいっぱいいっぱいです」みたいなことを言ったら、「ワイナリーを知ってもらうためにやるんだよ」と。そうなると、女将魂と「まずはやる」という私のスイッチが発動するわけですよ。しかも一度始めると極端にやる人間なもので、毎日投稿を続けるようになったんです。

いま、おかげさまで見てくださる方がたくさんいて、自分で始めたことではありますが少々翻弄されています。動画の編集作業に時間が取られることも多々ありますが、そんな時も家事のサポートや、子どもたちと遊んでくれる義母には感謝しかありません。

─ トスカーナの夕焼け、ワインの知識、お義母さまから教わったレシピ、ご家族の日常と、池田さんのSNSは、見ている人に刺さるポイントがたくさんあるように感じます。

池田 そうなんですかね。でも私自身、日常には素敵なことがたくさん転がっているんだなと、SNSを始めて気づかされています。都会と離れた環境にいるので、そのぶん家族が一緒にいる時間が長く、だからこそ一人一人の面白い瞬間を見逃さずにいられるのかもしれません。

そして日本とイタリアという距離がありながらも、SNSで繋がり、親という同じ立場の方たちと悩みを共有できたり元気をもらえることも多くて。ワイナリーツアーに来てくれた方が「お義母さんと写真撮りたいです!」なんて言ってくれることもあるんですが、そんな時、義母もとても嬉しそうです。

─ そうした発信が、ついに著書につながったのですね。

池田 そうですね。本には義母から学んで受け継いだレシピに加え、コラムも入れています。読んでくださる方にトスカーナの空気感が伝わったら嬉しいですし、私が日ごろからお世話になりっぱなしの義母の温かさも共有できたらいいなと思っています。

著書には“マンマの味”レシピ46点を収録!

  • 「トスカーナ・シエナ県では定番で、地元の人々に愛され続ける一品。コクのあるソースがもちもちの太麺にからみ、やみつきになる味」(池田さん)

  • 「イタリアのマンマの味といえば、パスタに並んで定番なのがリゾット「いろんな具材を足して、アレンジするとごちそうにもなってくれます」(池田さん)

  • 「義母ミレッラさんの得意料理ベスト3のひとつ。子どもたちも大好きで、日曜日に家族みんなで囲むランチには欠かせない一品」(池田さん)

  • 「キャラメルの苦みと、やさしい甘さの素朴なプリン。子どもたちにも人気のおやつ。末っ子のくーちゃんも大好きです」(池田さん)

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いま少し考えているのは、このトスカーナの魅力をしっかりと伝えられる動画や媒体をいつか作りたい! なんて、案は死ぬほど出てくるんですが、ワイナリーの女将であり、母であるという役割を同時進行で楽しみながら、少しずつ着実に歩んでいきたいと思っています。

振り返ると私は、勇気をもって挑戦するというより、「ラッキー!」と感じる方向をひたすら信じて行動してきました。これまでも、これからも。そんな生き方で、私らしい人生にたどり着きたいと思っています。

池田華依
KAE IKEDA

イタリア・トスカーナ在住。ワイナリー女将兼経営者 。4人のマンマ。世界一美しい田舎と言われる地で、仕事、育児に日々奮闘しながら全力で田舎生活を楽しんでいる。2026年、初の著書『トスカーナのワイナリーに嫁いで学んだ マンマのイタリア料理レシピ』(KADOKAWA刊)を上梓。

『トスカーナのワイナリーに嫁いで学んだ マンマのイタリア料理レシピ』

池田 華依著 KADOKAWA刊 ¥2,035

義母・ミレッラさんから受け継いだイタリアの家族料理を、日本でも手に入りやすい食材で作れるレシピにして全46品掲載。トスカーナの食文化や食育、これまでの歩みを綴ったエッセイ、料理に合うワインの選び方などのコラムも収録した、読み応えのある一冊。

〈レシピ〉
パスタ、主菜とつけ合わせ、スープとリゾット、ワインに合う副菜、おやつ
〈コラム〉
・イタリア人の義母から学んだ食生活の大切さ
・マンマの味になる5つの魔法
・料理に合わせたワインの選び方 ほか