チョン・イル、何にでも変化できる稀有な俳優に惹かれる齊藤工。

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Prime Originalドラマ「犯罪者」の配信スタート直後から新話が出るたび、物語の続きを追いかけた視聴者は数多くいたに違いない。登場人物たちは日本映画&ドラマの演技派俳優たちが務め、脇役の演技まで見逃せない緊迫感があった。先が読めないストーリー展開の中に身を置き、日本の制作陣に囲まれながら、ドラマの筋を引き締める重要な「悪役」を「好演」したのは韓国人俳優チョン・イルだ。

2026年2月、千葉県にてドラマ「犯罪者」撮影時。チョン・イルの演じた役・滝川に近い不気味な表情を浮かべている。

「犯罪者」でチョン・イル演じる滝川は雇われた冷酷な殺し屋であり、斎藤工演じる、事件を解き明かし追われる者たちを守ろうとする鑓水はジャーナリスト。まさに敵対関係である。

「極寒の雨の中のアクションだったり、過酷な撮影が多かったと思いますが、それを一切外に出さずに、”タキガワ”と言う難役に終始集中されていた印象です。
役柄に対する意志、ビジョンが明白でいて、作品ファーストの柔軟性も持ち合わせている。そんな重厚感と軽やかさを持ったチョン・イルさんが同じチームでいて下さって、心強かったです」(齊藤)

ドラマ「犯罪者」は全員が犯罪者となりえる、ぎりぎりを狙った秀作。

チョン・イルの滝川は、「犯罪者」の登場人物の中でも特に切なさを背負った人物でもある。手にかける真崎(内野聖陽)が大事にしていたサイクリンググローブがどうしても滝川の心奥に引っかかり続ける……ビジネスとして殺し屋を生業としながらも人間の生死に対して簡単には割り切れない何かを感じている滝川という人物を、無表情さから沁みでてくる微かなエモーションで表現して、ほんの少しだけ「揺れている」殺し屋の心境を演じきった。

しかしながらチョン・イルの存在が眩しいのは、「犯罪者」の滝川とは真逆の韓国歴史ドラマで愛を貫く王子さまを演じたり、ラブコメディで弾けたり、父親役を巧妙に演じたりと、とても幅広い役柄を軽やかに演じ分けられる点だ。おそらく本人は「苦労している」と語るに違いないが、アジアの俳優らしく骨太で器用さもあるのに、決して軽薄にならずに作品の軸を背負える強さを感じる。

「松永大志監督とチョン・イルさんの出会いは数年前の釜山国際映画祭だったそうです。お互いにいつかご一緒したいと話され、それが口約束だけでなく、こういったカタチに結実したことがドラマティックですね」(齊藤)

こちらはスタイリッシュなチョン・イル。本人が特に「推し」と言ってくれた写真2枚はフィガロジャポン2026年11月号に掲載されている。

フィガロジャポン2023年9月号「あの人が好きな、韓国ソウルへ。」特集では、リウム美術館を愛する場所としておすすめしてくれたチョン・イル。旅先で美術館を訪れる経験を通して、その土地の文化への理解を深めてほしい、とメッセージをくれた。ファンに見せる優しい素顔も人気で、「犯罪者」のプレミアイベントに集った人々の歓声から推測するにチョン・イルのファン勢が特に多かった、とフィガロジャポン編集部内でも報告された。

「犯罪者」 ●監督/松永大司 ●出演/高橋一生、斎藤工、水上恒司、チョン・イルほか ●全7話 ●Amazon Prime Videoにて配信中

チョン・イル/JUNG IL-WOO/정일우
2006年のドラマ「思いっきりハイキック!」で俳優デビュー、以後幅広いジャンルで活躍。歴史ドラマ「太陽を抱く月」(2012年)で日本でも多くのファンを獲得。近年は、映画『高速道路家族』(22年)やベトナムで大ヒットを記録した映画『Leaving Mom』(25年)に続き、現在配信中のPrime Originalドラ マ「犯罪者」で悪役に挑戦。海外でのボランティアやアンバサダー活動を通じた社会貢献にも熱心。

齊藤 工

俳優/映画評論家/クリエイター

TAKUMI SAITOH
出演映画『キングダム 魂の決戦』が公開中。出演作Prime Originalドラマ「犯罪者」が配信中。ドキュメンタリー映画『大きな家』(2024年)や、永尾柚乃初監督作品『リタ』(27年公開予定)のプロデュースに携わる。