凱旋門でジェレミー・プラディエ=ジョノーのインスタレーションが開催中。屋上まで登る良い機会に。

Paris

シャンゼリゼ大通りから見上げるエトワール広場に聳え立つ凱旋門。たどり着くには、Arc de Triompheと入り口に掲げられている広場から直結の地下道を経由してゆく。屋上では360度でパリが眺められ、下に目を向ければ眼下に広場から放射状に延びる大通りが、目に入る。

エトワール凱旋門はナポレオン1世がアウステルリッツの戦いの勝利を記念し1806年に勝利記念として建設を命じだものだ。工事が長引き、その間1821年にナポレオン1世は故人に。凱旋門が完成したのは1836年。ルイ・フィリップの7月王政時代である。1世の甥ナポレオン3世が新オペラ座の建築を命じたものの、劇場の落成は21年後の1875年で、その間第二帝政から第三共和政へ移行し、ナポレオン三世は劇場を見ることなく亡くなった、という話を思い出させる。

凱旋門の屋上からの眺め。photography: Mariko Omura
特別展がないときでも、凱旋門では建築や彫刻などの鑑賞ができる。photography: Mariko Omura

パリでは9月10日~19日までデザインウイークであり、9月19日と20日が文化遺産の日という時期であることにひっかけ、凱旋門の上階の見学スペースにおいて10月4日まで、展覧会『La Temptete(嵐)』が開催されている。これはアーティストでギャラリストのJérémy Pradier-Jeauneau(ジェレミー・プラディエ=ジョノー)がキュレーターを務め、彼の溢れ出るイマジネーションの実現のため複数のアート・アルチザンたちとコラボレーションを行った。パフューム界の巨匠ドミニク・ロピオンがインスタレーションのためにクリエイトした香りがほのかに空間を彩るイマーシブなインスタレーションである。タイトルの嵐というのは、ジェレミーの頭の中に吹き荒れるカオスに通じるもの。このアイデアの発端は彼が子どもの頃にイタリアで見たGiorgioneの絵画『La Tempête』(1506~08)だという。

左:展覧会のポスター。 右:インスタレーションのひとつで「ハイ・メモリー、ロー・メモリー」。photography: 右 Arthur Minot
インスタレーション「戴冠」。ジェレミーによるソファ彫刻。制作はLes ateliers Philippe Coudray。photography: Arthur Minot

「戴冠」「グリーン・スイートルーム」……彫刻、建築、デザイン、テキスタイルなどさまざまな要素を用いてジェレミーの頭に生まれたアイデアが実現された複数のインスタレーション中、凱旋門の地下の無名兵士の墓に結びつくのは「パラマデスの歌」だ。ギリシャ神話において、英雄ながらオデュッセイアの恨みを買ったことから処刑されるのだが埋葬もされず……という無残な最後を迎えたとされる人物パラマデス。ジェレミーは彼を一人の無名兵士とみなしたのだ。ガラスの屏風、ブロンズの彫刻、プリントのファブリックなどでインスタレーションは構成されている。なお、この凱旋門での展覧会はジェレミーにとって、オテル・ドゥ・ラ・マリーヌに次いでフランスの文化財センターからの白紙依頼の2件目のインスタレーションだ。

インスタレーション「グリーン・スイートルーム」より。左の写真のベッドサイドにヴィクトル・ユゴーの小説がさりげなく置いてあるのは、1885年の彼の国葬に際して、遺体が凱旋門に安置されたことに由来している。壁を飾る2点はジェレミーによる作品。photography: Mariko Omura
インスタレーション「パルマデスの歌」より。ブロンズの彫刻はアトリエMacheretによる。Atelier Pictetが制作した、ガラスと羽の屏風「Angelo」が美しい。いずれもジェレミーによるデザイン。photography: Mariko Omura

凱旋門は遠くから眺めて終わり、という人も多いだろう。この機会に登ってみては? エレベーターは身体障害者など限られた人用なので、284段の階段でということにちょっと怯むかもしれないけれど。

『La Tempête』展
開催中〜10月4日
Arc de Triomphe
Place de Charles de Gaulle
75008 Paris
開)9月30日まで 10:00(火 11:00)〜23:00
10月1日から 10:00(火 11:00)〜22:30
無休
料)9月30日まで22ユーロ、10月1日から16ユーロ
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大村 真理子

madameFIGARO.jpコントリビューティング・エディター

東京の出版社で女性誌の編集に携わった後、1990年に渡仏。2006年から「フィガロジャポン」パリ支局長を務めた後、フリーエディター活動を再開。主な著書は『とっておきパリ左岸ガイド』(玉村豊男氏と共著/中央公論社刊)、『パリ・オペラ座バレエ物語』(CCCメディアハウス刊)。