クズ男から清廉潔白な男性まで、中島歩から目が離せない! 最新出演映画『男ともだち』を前に、改めて振り返るその軌跡。

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文・小林久乃

そろそろエンディングを迎えようとしている2026年において“今年の顔”といえば、俳優の中島歩だろう。モデルのような抜群のスタイルに、独創的なテンポの口調と、コーディネートは一度見たら忘れられない。もちろんパブリックイメージを覆す、出演作での演技がすばらしかったからこそ、の強烈さだ。そんな中島は2013年のデビュー以降、今年のブレイクを迎えるまで、多くの作品に出演している。


なぜ続く? クズ男の役

中島の最新出演作は松岡茉優・主演『男ともだち』(11月6日公開)。人間関係に不器用なイラストレーターの神名(松岡)が、出会って12年の“男ともだち”のハセオ(成田凌)と過ごす京都、富山、広島で人生を変えていく物語。原作は千早茜、監督は三島由紀子だ。鑑賞後、異性の友人について考えたが、男女関わらず友情は存在するし、愛情に発展するかどうかは、当人と年代、生活環境次第だと改めて思った。神名は同性から見るとちょっと苛立つ存在なのかもしれない。

©2026『男ともだち』製作委員会

そんな作品で中島は神名と浮気をする医師の真司を演じている。これが見事なクズで、思わず映画を観ながら吹いてしまった。嫁と子どもが自宅を留守にすると隙あらば、神名を家にあげようとするわ、連絡が取れなくなるわ、で仕事以外はすべて気の赴くままに生きているように映った。

真司を見ていると中島歩が演じる役には、真司と同じくいわゆる“クズ”にカテゴライズされる男が多い傾向に気づく。例えば2025年配信「阿修羅のごとく」の宅間役。夫が意識不明の重体になり、途方に暮れていた四女の竹沢咲子(広瀬すず)と喫茶店で出会う、自称・教師の宅間。ふたりは体の関係を持つが、そのことを世間にバラされたくなければ「100万円を用意しろ」と咲子をゆするのが、宅間だった。心身だけではなく、財産ももぎ取ろうとするのだから憎たらしい。ちなみに本作は今から約46年前の時代設定なので、100万円は現在の約200万円だろうか。

同年放送「愛の、がっこう。」(フジテレビ系)の川原洋二役。この川原も一癖も二癖もあるハイスペ男で、主人公・小川愛実(木村文乃)の婚約者。が、結婚そのものが出世を狙ったお見合い結婚。別に恋人がいながらも愛実との関係を希望して、愛実がほかの男と触れ合おうとすると徹底的に邪魔をする。いかにも身勝手な振る舞いは「男ともだち」の真司に近い。

「地獄に堕ちるわよ」©︎Netflix

また同年には「地獄に堕ちるわよ」の須藤豊は詐欺師の役でも失笑してしまうほどのクズ男役ぶりで、主人公の細木数子(戸田恵梨香)の常連として出会い、数子の財産を持ち逃げしていた。あくまで私の知る限りだけど、2年間で4人のクズ男を演じるのはかなりのハイペースだと思う。

ブレイクは清廉なイメージの役で

ただクズ男役ばかりではなく、他にもぜひ観てほしい出演傑作はいくつもある。例えば2023年放送「À Table!(アターブル)〜歴史のレシピを作ってたべる〜」(BS松竹東急)の藤田ヨシヲ役。結婚15年目、吉祥寺に住む藤田夫妻が歴史に残された古いレシピを再現して、食べる物語。クリフハンガーのような派手な演出はゼロだけど、ノスタルジーな映像と優しい劇伴はとにかく質感が良かった。翌年にシーズン2も放送されている。

このドラマで中島が演じた漬物メーカーに勤務するヨシヲは、料理も上手だし、なによりも年上の妻のジュン(市川実日子)をとても愛しているようだった。中島の過去の出演作では私がいちばんに人に勧める作品で、ヨシヲ役は今年の話題作「Tシャツが乾くまで」(TBS系)の園田樹生役に通ずるものがあった。

そして2024年放送「不適切にもほどがある!」(TBS系)の、ちょっと変わった教師・泰森役を経て、中島の名前が人に知られることになった、2025年放送「あんぱん」の若松次郎役へ。ヒロイン・のぶ(今田美桜)の最初の夫で、真面目で誠実な一等機関士だった。残念ながら病死してしまったけれど、次郎の登場最終週の放送は、とても寂しかったことを覚えている。

クズ男から清廉潔白な男性まで、中島の魅せる顔は幅広い。これを「俳優なら当たり前」と言うひともいるかもしれないが、私はそんなに多くないと思う。「なにを演じても〇〇」と言われる、世間の印象と役が離れない俳優は数多いるし、本人も悩むところのはず。そんな最中で中島はご本人そのもの=軸がどんな役よりも強烈なせいもあるのか、役に振り回されず、むしろ役を振り回しているように見えるのだから、強い。

2027年も映画『旅する練習』(眞田康平監督)での主演など、露出の途切れない中島。彼の波に乗り遅れないためにも、まずは今回掲載した作品を動画配信で嗜んでから新作に挑んだほうがいい。中島歩が押し出してくる今後の演技の波はきっと強敵で、意外性の嵐だから。

小林 久乃

コラムニスト/ライター/編集者

平成から現在に至るまで、毎クール連続ドラマを視聴し続けて、約3000本を網羅したドラマファン。趣味が高じて「ベスト・オブ・平成ドラマ!」(青春出版社)を上梓、準レギュラーを務めるFM静岡「グッティ!」にてドラマコーナーのパーソナリティーを務める。他、多数のウェブ、 紙媒体にて連載を持ち、エンタメに関するコラムを執筆中。