イスラエル大使館が、東日本大震災の追悼作品を上映。

2011年の東日本大震災から10年の節目となった昨年、駐日イスラエル大使館による震災の犠牲者を追悼するプロジェクトとして、短編ドキュメンタリー映画『行き止まりのむこう側（英題：nowhere to go but everywhere）』が製作された。その作品が、大震災から11年を迎える3月11日に日本とイスラエルでオンライン特別上映されることが決定。

©︎Imakoko Media, Inc.

本作は、東日本大震災で最愛の妻を失い、いまも探し続ける高松康雄の言葉で語られる短編ドキュメンタリー。大震災発生後、駐日イスラエル大使館がいち早く南三陸を支援したという経緯から、大使館の全面的な支援のもと、日米2拠点で映画製作活動を行なっている津村将子と白井エリックが監督・製作を担当した。また、公開に合わせて、イスラエル・テルアビブのJaffa Cinemaにて、同日の正午12時（現地時間）から上映会と監督と高松康雄による対談をzoom上で開催する。

製作の経緯について、津村将子・白井エリック監督は次のようにコメントを寄せる。「『行き止まりのむこう側』は、2020年にグローバルパンデミックが始まり、見える世界ががらりと変わってきた時、私たちがマントラのように呟いていたことばです。……そんな時、駐日イスラエル大使館から大震災の犠牲者への追悼のため、イスラエル人と日本人のアーティストのコラボレーションのプロジェクトの話をいただき、高松康雄さんの類稀な実話を映像化する時がきたのではないかと話し合いました。高松さんは津波で最愛の奥様を亡くされましたが、その大きな喪失と向かい合うために、ダイビングを習得し、奥様を奪っていったその海に潜り、彼女を探しに行かれました。限りなく続く潮の流れに身を任せ、捜索を続けるうちに、思いがけない癒しをそこに見つけていったのです。先が見えない脆い時代を生きる中、人間と自然の繊細な関係がもたらすもの、私たちの精神の回復力を思い出す印として『行き止まりのむこう側』を製作しました」

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プロデューサーを務めたのは、前イスラエル大使館文化・科学技術担当のアリエ・ローゼン。イスラエルの作曲家兼ジャズピアニストのシャイ・マエストロにまず声をかけ、マエストロの提案により、南三陸を舞台にした長編劇映画『Umi』を製作していた津村・白井両監督にコラボレーションを持ちかけたのが映画製作の始まり。さらに高松康雄の話に感銘を受けたローゼンは、息子を失った悲しみを経験したイスラエルの著名作家ダヴィッド・グロスマンに参加を依頼した。マエストロは、日本・イスラエル出身のチェリスト、塚本シュビロ真由と共同でレコーディングを行い、まさに、外交関係樹立から70周年を迎える日本とイスラエルの交流を文化を通じて深める一大プロジェクトに。

「『行き止まりのむこう側』では、ひとりの男性とその最愛の妻の非常に個人的な物語を通して、私たちのより広いコミュニティの継続的な悲しみと回復力に触れています。（2011年の東日本大震災による津波被害の犠牲者で、現在も行方不明の2500名を超す方々の）家族は、いまだにその悲しみから解放されることはありません。この映画は、古来からの伝統と、スピリチュアルな自然に恵まれた素晴らしい風景の中で、ひとりの魂の繊細な旅を捉えようとしたものです。この映画の繊細さ、遠く離れた地域の映像、音、言葉が、世界中の多くの人々の心に響くことを願っています」と、プロデューサーのアリエ・ローゼンも語る。

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