ベルルスコーニ元首相が残した莫大な遺産、誰のものに？

ベルルスコーニ元伊首相は、6月12日に86歳で亡くなった。彼は62億ユーロ（約約9337億円）と推定される莫大な財産を持っていた。しかし、彼は公式の相続人を指定していなかったため、遺産分与はますます難航すると予想されている。

（左から）ベルルスコーニ元首相の葬儀に参列するバルバラ、エレオノーラ、ルイージ、マリーナ、ベルルスコーニの弟パオロ・ベルルスコーニ。（ミラノ、2023年6月14日）photography: Getty Images

ベルルスコーニ元首相はナイトクラブやクルーズ船で歌手としてキャリアをスタートさせた。それから80年、6月12日に86歳で亡くなったベルルスコーニは、雑誌「フォーブス」によると62億ユーロの財産を残している。仏経済誌「レゼコー」によると、イタリアの富豪リストで6位に入ったこともあるベルルスコーニは、30億ユーロ（約4600億円）相当の証券取引所に上場している株式と、大手メディアグループ、メディアセットを含む複数の会社、出版、報道、スポーツなど様々な分野の事業を所有していた。2018年からサッカークラブ「ACモンツァ」のオーナーを務めている。

ジェット機3機とヘリコプターを所有するベルルスコーニは、サルデーニャ島のヴィラ・チェルトーザやローマ時代の邸宅パラッツォ・グラツィオーリなど、さまざまな不動産も取得していた。これらの不動産資産ポートフォリオの価値は30億ユーロに上り、アパートも含まれる。しかし、「レゼコー」によると、「ベルルスコーニ銀河の中心」にあるのは、一族の持ち株会社フィニンヴェストだ。家長のベルルスコーニは61.2％の株式を保有していた。2021年までに売上高60億ユーロ（約9205億円）、利益3億6000万ユーロ（約525億円）を計上した。

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困難な財産分与

しかし、ベルルスコーニは公式の相続人を指定していなかったため、彼の財産分与は複雑なものになりそうだ。これは、「レゼコー」の匿名の情報源が示唆したものだ。彼の資産の未来は、彼の5人の子どもたち（2つの異なる結婚から生まれた）との良好な関係にかかっている。ベルルスコーニの持ち株会社フィニンヴェストにおける61.2%の株式は、彼らの間で分配されることになる。その中には、カルラ・マリア・エルヴィーラ・デッローリオ（1965年から1984年まで）との結婚で1966年と1969年に生まれたマリーナとピエール・シルヴィオが含まれている。彼らはそれぞれ出版・プレス部門（モンダドリ）と放送部門（メディアセット）を運営しており、現在フィニンヴェストの株式7.65%を保有している。

一方、バルバラ（1984年生まれ）、エレオノーラ（1986年生まれ）、ルイージ（1989年生まれ）は、ヴェロニカ・ラリオとの結婚（1990年から2009年まで）から生まれた子どもたちで、彼らは合わせて21.42%の株式を保有している。さらに、ベルルスコーニの子どもたちも成長し、親となった。マリーナはガブリエレとシルヴィオというふたりの息子を出産した。ピエール・シルヴィオはルクレツィア、ロレンツォ、ソフィアという3人の子どもがいる。バルバラはアレッサンドロ、エドアルド、レオーネ、フランチェスコ、エットーレという5人の子どもをもうけた。エレオノーラはリッカルド、フローラ、アルテミジアという3人の子どもを持ち、ルイージはエンマヌエレとトンマーゾというふたりの息子をもうけた。

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イタリアの法律

イタリアの法律では、亡くなった人の子どもや配偶者とともに、孫が相続順位の第1位となることが定められているため、孫も祖父から相続することができる。しかし、相続人が多ければ多いほど、相続財産は分割される。たとえば、子どもがひとりしかいない場合、配偶者は全財産の半分をその子どもと共有して受け取ることになる。子どもがふたり以上いる場合は、パートナーは全財産の3分の1を受け取る。一方、フランスでは、遺言で特に指定がない限り、全財産は故人の子どもに相続される。

ベルルスコーニの資産がどのように分けられるかは、当分の間、謎のままだ。また、不利な立場に立たされる人もいるかもしれない。伊日刊紙『ラ・レプッブリカ』によると、ベルルスコーニ元首相が61.2％を5人の子どもたちに均等に分けることにした場合、さらに12.24％がそれぞれの子どもたちに入ることになる。ヴェロニカ・ラリオの3人の子どもたちは、フィニンヴェストの58％以上を所有し、マリーナとピエル・シルヴィオはそれぞれ約19.9％を所有することになる。また、ベルルスコーニの最後の伴侶であるマルタ・ファシーナが、何らかの資産を相続するかどうかは不明である。