ベートーヴェンを演じる稲垣吾郎、クリスマス・イヴに100回公演を達成! 舞台 『No.9 -不滅の旋律-』の魅力を語る。
Culture 2024.12.24
俳優・稲垣吾郎が9年前に初演し、大ヒットとなった舞台『No.9 -不滅の旋律-』。四シーズン目の再演となる本作が、2024年12月24日、100回目の公演を迎えた。もはや稲垣吾郎を代表する作品となった戯曲にかける、彼の想いとは?
稲垣が演じるのは孤高の音楽家ルードヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン。オーストリア・ウィーンで20代後半から天才作曲家として注目されるも、音楽家だった酒浸りの父親から幼少時に受けた暴力的な教育で、ベートーヴェンには難聴という苦難がつきまとう。フランス革命後、ベートーヴェンは「自由・平等・博愛」の高揚感を英雄ナポレオンの姿に重ね合わせるが、ナポレオンは皇帝に変貌。愛する女性とは身分差によって引き裂かれ、皇帝ナポレオンが率いるフランス軍はウィーンの街を蹂躙し、ベートーヴェンは失意を味わう。
自分の意に従わない弟たちの結婚、そして音楽の才能を甥のカールに受け継がせたいと思ううち、ベートーヴェンはいつしか軽蔑していた家父長的な父とそっくりになっていく。進む難聴の症状、目まぐるしく変わる不穏な社会情勢の中、ベートーヴェンは年を重ねるごとに頑固になり、孤立を深めていく。彼を支えるのは、耳が聞こえなくなっても頭の中に鳴り響き続ける音楽と、彼を愛し、献身的に支える秘書のマリアという存在だけ。多くの悲劇がベートーヴェンを襲う中、ついに「運命の時」が訪れて......。
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フランス革命以後の激動の時代の波、人間関係に翻弄されながら、いまなお愛される「交響曲第九番」をベートーヴェンがどのように作り上げていったのか。稲垣は28歳から50代にいたるまでのベートーヴェンの人生を敷衍していく。稲垣自身はベートーヴェンを「真逆の存在」として受けとめており、「この人格を持っておくのも悪くない」のだという。
「(この作品の)ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンという人は感情むき出しで情熱的で、その一方、普段の僕はポーカーフェイスというか、あまり感情を面に出さないようにしているというか。ベートーヴェンの人格を舞台で出来てとても気持ちいいです。舞台の上で、もう一生分怒ったかも(笑)」
2シーズン目の公演から秘書マリア役を務める剛力は、そんな稲垣の姿を「いい意味で変わらない、ずっとベートーヴェンそのもの」と語る。
「でもやっぱり年を重ねて、ストーリーの中の歳上のベートーヴェンに近づいていくというか。私も年齢が上がっているということもあると思うんですが、ベートーヴェンへの愛というか、対応する心が変わってきたと思う」
そんな剛力に対し、稲垣も「僕も剛力さんの変化を感じてるというか、初演の頃から目覚ましい変化で頼もしい、お母さんみたいな(笑)」とコメント。
演出の白井晃は4度目の公演となる稲垣のベートーヴェンを「深みと重み、落ち着きを感じる、重厚さが出てきたのが実感。(剛力さんと)長年やってこられた信頼も感じています」。
100回という節目にあたり、稲垣はこう語る。
「ちょっと計算してみたら、10万人以上のお客さまが観てくれているということになるんですよ。コロナという状況も超えて、一緒になってお客様と「奏でている」という気持ちが強いです。いま演じていても、舞台上で第九を聞くとゾワっとする感覚がある。やれる限り、続けたいですね」
最後に2024年を漢字1文字で表すと? という質問には、「感謝、感じるの『感』ですね」と稲垣。年末に馴染み深いベートーヴェンの「第九」、「歓喜の歌」が、稲垣吾郎という稀有な俳優を通じて舞台から再び感動を届けてくれる。
●演出/白井晃
●脚本/中嶋かずき(劇団☆新感線)
●出演/稲垣吾郎、剛力彩芽、片桐仁、南沢奈央、奥貫薫、羽場裕一、長谷川初範ほか
【東京公演】開演中〜12月31日(火) 東京国際フォーラム ホールC
【博多公演】2025年1月11日(土)〜12日(日) 久留米シティプラザ
【大阪公演】2025年1月18日(土)〜20日(月) オリックス劇場
【静岡公演】2025年2月1日(土)〜2日(日) アクトシティ浜松 大ホール
https://www.no9-stage.com/
公式X:@no9_stage2024
フィガロJPカルチャー/グルメ担当、フィガロワインクラブ担当編集者。大学時代、元週刊プレイボーイ編集長で現在はエッセイスト&バーマンの島地勝彦氏の「書生」としてカバン持ちを経験、文化とグルメの洗礼を浴びる。ホテルの配膳のバイト→和牛を扱う飲食店に就職した後、いろいろあって編集部バイトから編集者に。2023年、J.S.A.認定ワインエキスパートを取得。
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