昭和の記憶、女性の尊厳、アートな朝食―時代を超えて愛したい4冊。
Culture 2025.06.13
歴史の重みと向き合いながら未来を築こうとする人間の姿。日常の違和感に静かに抗う声。そして自由な発想で創造することの喜び。そんな今読みたい4冊を厳選しました。
皇居を再建した建築家の壮大な物語。
『天使も踏むを畏れるところ』

空襲で焼失した皇居を再建するまでの人間ドラマを描いた大長編。設計を任された建築家・村井俊輔のモデルは、アントニン・レーモンドに師事し、実際に新宮殿の設計を手がけた吉村順三。敗戦によって天皇は"象徴"となり、民主主義へ歩み出した日本。新しい時代の理想を新宮殿の設計に託そうとする村井の試みは、急激な変化に戸惑う宮内庁に阻まれる。皇居再建という一大プロジェクトを通して、戦後の昭和史が生き生きと浮かび上がる。
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女性が自尊心を失わずに生きる方法。
『彼女たちに守られてきた』

大島弓子の漫画「8月に生まれる子供」は「わたしは わたしの王女様である そして その民である」という言葉で始まる。ヴァージニア・ウルフ、石井桃子、長くつ下のピッピ、海外ドラマのあの子、彼女たちの言葉や考え方が自分を守ってくれたと著者は言う。日常で感じた違和感の正体が女性に生まれたことから生じたのなら、それはあなたのせいではない。自尊心を失わず、自分の人生を守る方法を綴ったエンパワーメントなエッセイ。
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朝食をアートに変えたユニークな作品集。
『Art on Toast 静かな生きもの』

SASAMANAにとってパンは真っ白なキャンバスだ。2020年春、コロナ禍の自粛生活をきっかけに朝食をアートに変えることを思いつく。枯山水の庭や絵本のキャラクター、浮世絵の女たち、フリーダ・カーロや竹久夢二も驚くべきことにすべて身近な食材を使ってパンに描き、トーストする。サワークリーム、アボカド、チーズ、チョコレート、ストロベリー......創ったら食べちゃうなんて、もったいない。自由な発想で生まれたポップでユニークな作品集。
*「フィガロジャポン」2025年7月号より抜粋
text: Harumi Taki