篠原ともえが正倉院の展覧会で発表する、正倉院宝物をファッションへと昇華させた作品とは?
Culture 2025.06.17
篠原ともえは、大阪歴史博物館で開催中の『正倉院 THE SHOW ー 感じる。いま、ここにある奇跡 ー』にコラボレーションアーティストとして参加し、作品を発表。
篠原ともえはペルシア風の水差し「漆胡瓶」をドレスにした作品「LACQUERED EWER SHOSOIN DRESS」を発表。
本展覧会は正倉院の神秘の魅力を現代へと再構築する新しい試みの特別展で、宮内庁正倉院事務所の全面監修によって大阪と東京で開催。「愛 美 紡ぐ」をテーマに宝物の背景にあるさまざまなストーリーを紐解く。実際の宝物の展示ではなく、宝物を360度からスキャンして取得された高精細な3Dデジタルデータに演出を施した展示を行い、宝物の細部や質感を実物を鑑賞する以上にリアルに感じられるのが特徴となっている。
そして同時に注目したいのが、篠原ともえをはじめとする幅広いジャンルで活躍する現代アーティストが正倉院からインスピレーションを受けて手がけた新作のお披露目だ。篠原にとっては2022年に発表した「THE LEATHER SCRAP KIMONO」以来、およそ3年ぶりのアートピースの発表となる。
正倉院に所蔵されるおよそ9,000件の宝物の中から篠原がモチーフに選んだのは、シルクロードの美意識と精緻な工芸技術の結晶となる水瓶「漆胡瓶(しっこへい)」。草花や鳥獣が表され『国家珍宝帳(こっかちんぽうちょう)』にも記載されたこの品は圧倒的な存在感を放ち、現代デザインにもインスピレーションを与え続ける至宝だ。
「職人技術の粋を集めた古代の水瓶は、時を超えた美意識とおおらかな大陸の流れを感じさせその歴史に魂が震えました。守り残された記憶をなぞり現代へと甦らせるこの手仕事は、過去の職人との創作を通じた会話のようであり、制作者として至福の瞬間でありました。新しい形で私たちの中に生きていく本作品が、正倉院宝物の魅力と手仕事の価値を届けるきっかけになればと願っています」と篠原ともえはコメントを寄せる。

構想からおよそ1年をかけて取り組んだ本作品は、制作チームにコム デ ギャルソンのメゾンドレス制作に携わったキャリアを持つ安部陽光を迎え、1300年という物語の証をなるべくそのままに繋ぎたいという考えから、鳥頭が象られているペルシア風の水瓶のフォルムを高精細な3Dデジタルデータを元に人尺へと割り出し構築。文様の再現では400種以上にも及ぶパーツを手作業でトレースし汲み取り、真鍮をエイジングさせ紡がれた月日を具現化した。
ビジュアル展開と空間ディレクションはアートディレクターの池澤樹が担当。1300年の物語を纏う、永遠のアートピースとして「時」「美」「愛」「文化の記憶」のフラグメンツの結晶を感じてほしい。

<大阪展>
会期:〜2025年8月24日(日)
会場:大阪歴史博物館
開)9:30〜17:00
休)火 *8/12は開館。
料)大人¥2,000
<東京展>
会期:2025年9月20日(土)〜11月9日(日)
会場:上野の森美術館
*チケット料金など詳細は後日発表。
https://shosoin-the-show.jp
text: Natsuko Kadokura