エンパイア・ステート・ビル頂上でプロポーズ、直後に逮捕……クライマーのカップルにニューヨーク騒然。
7月1日、現代の命知らずな冒険者たちは、安全装備を一切身につけずにエンパイア・ステート・ビルの102階まで登り切った。地上443メートルの高さで行われたこの目もくらむようなプロポーズは、居合わせた人々を驚かせ、やがて世界中で大きなニュースとなった。
婚約からわずか数分後、彼らはニューヨーク市警に手錠をかけられた。7月1日、ロシア人インフルエンサーのイワン・ビアカスとアンジェラ・ニコラウは、ロープもハーネスも使わずにニューヨークのエンパイア・ステート・ビル102階部分へと密かに登り、話題を呼んだ。顔をマスクで隠し、黒ずくめに身を包んだ“無謀なチャレンジャーカップル”は、まず「権力への愛よりも、愛の力が勝つとき、世界は平和になるだろう」という横断幕を掲げた。その後、超高層ビルのアンテナ部分にたどり着いた「バットマン」とも呼ばれる男性は、ニューヨークのスカイラインを一望する中で、恋人である「キャットウーマン」にひざまずき、プロポーズをした。この映像はすでに100万回以上再生されており、2024年に公開された彼らのNetflixドキュメンタリー映画『スカイウォーカーズ: ある愛の物語』にも再び注目が集まっている。
このおとぎ話のようなひとときは、約30分しか続かなかった。複数の目撃者から通報を受けた警察は、エンパイア・ステート・ビルのふもとに大規模な警備態勢を敷くとともに、ヘリコプターが上空を旋回した。地上へ降りてきたふたりのインフルエンサーはその場で身柄を拘束され、手錠をかけられたものの、カメラの前では笑顔を見せていた。ニューヨークのテレビ局NBCによると、逮捕から数時間後もふたりは勾留されたままだった。

しかし、彼らが演出したドラマチックなプロポーズや大胆なクライミングのインパクトが逮捕のせいで損なわれることはなかった。わずか数時間で、ふたりの姿は世界中のメディアを駆け巡ったのだ。SNSでは、その大胆な行動を称賛する声が相次ぎ、「伝説級だ」「愛と勇気の素晴らしい証明」「私の新しい推しカップルになった」といったコメントが、投稿された動画の下に何千件も寄せられている。
今回の登頂は一度きりの派手なパフォーマンスではない。イワン・ビアカスとアンジェラ・ニコラウは、世界各地の超高層ビルに無断で登る危険な挑戦で、すでに数百万人のフォロワーを抱えている。彼らが得意とするのは、「ルーフトッピング」と呼ばれる行為だ。これは、高層ビルやクレーン、モニュメントなどさまざまな建造物に、安全装備を一切使わず違法に登り、さらに警備員の目をかいくぐって行う危険なクライミングを指す。
前述のジェフ・ジンバリスト監督によるNetflixのドキュメンタリー映画『スカイウォーカーズ: ある愛の物語』は、彼らがマレーシアの「ムルデカ118」タワーに登頂する様子を追った作品だ。同タワーは高さ679メートルを誇り、ドバイの「ブルジュ・ハリファ」に次ぐ世界で2番目に高い建造物として知られている。カメラは、彼らのトレーニングの様子に加え、警備員の目を逃れるため建物内に30時間身を潜める一部始終にも密着している。ジェフ・ジンバリスト監督は2024年、雑誌「バラエティ」の取材に対し、ふたりに挑戦を思いとどまるよう説得を試みたことも明かしている。「私は彼らに『ここを離れるべきだ。逮捕される危険を冒すわけにはいかない。ここマレーシアで逮捕されることがどれほど危険か、私たちは分かっている』と伝えました。でも、彼らは時に私たちの忠告を聞き入れませんでした。私たちにできたのは、とにかく気をつけるよう伝えることだけ。あとは彼ら自身に委ねるしかありませんでした」実際、彼らはそれ以前にも、中国・天津にある高さ約600メートルの「高銀金融117」の建設用クレーンまで登ったほか、エッフェル塔の登頂にも挑んでいる。
「空中ブランコ乗り」のような関係
単に数々の偉業を成し遂げるだけでなく、イワン・ビアカスとアンジェラ・ニコラウは、自分たちの愛の物語を登頂の欠かせない一部として発信するようになった。2010年代半ばから交際を続けるこの「命知らず」のふたりは、極限のスリルとロマンティシズムが溶け合う独自の世界観を築き上げている。『スカイウォーカーズ:ある愛の物語』の中で、アンジェラはふたりの関係を「空中ブランコ乗り」のようなものだと表現している。一方が空中へ飛び出し、もう一方がその相手を受け止める。このたとえは、ふたりの登り方だけでなく、生き方そのものを象徴している。
インスタグラムで160万人以上のフォロワーを持つアンジェラ・ニコラウが、現在の地位を築いたのは偶然ではない。旅回りのサーカス団で活動する芸人を両親に持つ彼女は、幼い頃からショービジネスの世界で育ち、2015年にルーフトッピングを始めた。そして、男性が大半を占めるこの分野で活躍する先駆的な女性のひとりとなった。監督のジェフ・ジンバリストは、彼女の取り組みにすぐ魅了されたと語っている。彼の目には、それは単なるアドレナリンを求める危険な挑戦ではなく、一種の芸術表現として映ったという。彼によれば、彼女は従来のインフルエンサーよりも、バスキアやアンディ・ウォーホルからインスピレーションを得ていたそうだ。
ここ数年、ふたりはニューヨークに拠点を移し、この街を巨大な冒険の舞台と考えてきた。ドキュメンタリー番組の公開当時、イワンとアンジェラは「バラエティ」の取材に対し、「制覇」したい象徴的な超高層ビルがまだいくつも残っていると語っていた。そのリストには、エンパイア・ステート・ビルも間違いなく含まれていたようだ。
From madameFIGARO.fr
※この記事は、フランスの新聞社「Le Figaro」グループが発行する「madame.lefigaro.fr」で掲載されたものの翻訳版です。データや研究結果はすべてオリジナル記事によるものです。
- text: Léa Mabilon (madame.lefigaro.fr)
- translation: Hanae Yamaguchi