「恋愛禁止、『アイドル』という過酷な世界に生きる日本人女性たち」フランスメディアの報道とは?

Celebrity 2026.04.14

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フランスで公開されたばかりの映画『恋愛裁判』では、日本のガールズグループのメンバーに恋愛を禁じ、男性ファンに向けて純粋無垢な理想像として作り上げるシステムの行き過ぎを告発している。

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『恋愛裁判』で恋愛を理由に起訴されたJ-POPグループのメンバー、麻衣を演じ、2025年カンヌ国際映画祭に登場した齊藤京子。(2025年5月22日、カンヌ)photography: REX / Aflo

日本では「アイドル」とは、特別な存在でも象徴でもなく、ひとつの"職業"だ。1960年代、日本におけるイエイエ(フランス発の音楽ジャンル)やビートルズ人気の流れを受けて、芸能事務所が若者を育成し、大衆を楽しませ、魅了する存在、つまりアイドルへと育て始めた。このスター製造システムは、それ以来、一度も止まることなく続いている。若者たちは思春期の頃からオーディションで選ばれ(見た目も重視される)、歌やダンスだけでなく、コミュニケーションのプロとして鍛えられる。彼らはJ-POPグループに所属し、歌い、踊り、映画やドラマ、舞台にも出演する。さらにテレビ番組の司会や、SNSでのコンテンツ制作、モデル活動など、多方面で活躍しながら、ファンとの関係を築き続ける。そしてこのアイドル業界において、女性アイドルはとりわけ収益性が高く、"最も稼げる存在"とされている。

一見すると、彼女たちのキャリアは夢のように映る。メディアに取り上げられ、熱狂的に支持され、仲の良い女の子同士で、多くは共同生活をしながら、日々を過ごしている。しかし、その華やかな表面の裏側には、まったく異なる現実がある。契約によって、彼女たちは基本的な権利さえ制限されているのだ。愛を歌い続けながらも、自らそれを経験することは禁じられている。さらに、ファンの嫉妬をあおらないため、男性とふたりきりで外出することさえ許されない。

この現実をもとに描かれているのが、フランスでも公開された日本の深田晃司監督による映画『恋愛裁判』だ。実際にあった、恋愛を理由に所属事務所から訴えられ、損害賠償を請求されたアイドルの物語に基づいている。

「恋愛禁止の条項が契約書に明記されているかどうかにかかわらず、アイドルのビジネスモデルは非常にシンプルです。恋に近い感情を抱いたファンは、グループ内の"推しメンバー"に会い、話し、コンサートで姿を見るために、多額のお金を費やします。さらに、関連グッズの収集にもお金をかけるのです」

こうして生み出された収益の大部分は事務所に渡り、メンバーそれぞれの報酬は人気度に応じて決められている。

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純潔という幻想

だからこそ重要なのは、観客が求めるものを与えることだ。つまり、身体的にも道徳的にも完璧なイメージ、衣装や楽曲の歌詞に至るまで、「無垢」や「純潔」を思わせる演出によって丁寧に作り上げられた理想像である。「アイドル文化は、50年以上にわたってこの国に根づき、あらゆるメディアを通じて受け継がれてきました」と監督は続ける。「そうした価値観は、私たちの社会に存在する家父長的な仕組みとも重なり、より受け入れられやすかったのです」

世界経済フォーラムの最新報告書によると、男女平等の観点で148カ国を順位付けした中で、日本は118位にとどまっている。監督はこう説明する。「私の国では、性別に関する固定観念や差別がいまだに根強く残っており、その背景には何世紀にもわたる伝統、若い女性を、男性が自分の理想に沿って育て上げるという考え方が根強く残っています。11世紀に紫式部によって書かれた、日本文学の基礎ともいえる『源氏物語』では、すでに貴族の男性たちが幼い少女を選び、自分に従順な妻に育てていました。この構図は、現代の大衆文化にも至るところで見られます。1990年代には『プリンセスメーカー』というビデオゲームが登場し、プレイヤーである男性が少女を理想の姿に育てるという内容でした。アイドルとは、こうした中世の習慣が現代に受け継がれたものに過ぎません」

その代償

では、なぜ若い女性が、こうした疑似的な恋愛関係や、自分よりもはるかに年上であることも多い男性たちの幻想を支え続けることを受け入れるのだろうか。「この道を選ぶ時点で、ある程度わかっています。求められているのは、自由に自分らしく生きる女性の姿ではないということを。そこが、K-POPとの違いのひとつかもしれません。あちらのほうが、ここまで"純潔"に縛られてはいませんから」と語るのは、『恋愛裁判』で主演を務めた齊藤京子だ。撮影のわずか2カ月前まで、彼女自身もアイドルとして活動していた。

さらに彼女はこう続ける。「私たちの役割は、ファンの期待に応えること。たとえば髪を明るく染めてみても、ファンに好まれなければ元に戻します。たとえ仕事中でなくても、許容範囲から外れるファッションのトレンドを取り入れれば、事務所から注意を受けます」

それでも彼女は、疑問を抱くこともなく、喜んで、ストレスも感じずにそうした要求に応じてきたと語る。インタビューの間、彼女がこのシステムを批判することは一度もなかった。「アイドルであることは、キャリアの足がかりになります。この仕事には、30歳までに引退するという暗黙のルールもありますが、テレビ、映画、音楽など、あらゆる分野に触れることができ、その後、自分の情熱を注げる道へ進むことができるのです」

たとえ後になってからでも批判すれば、いくつかのチャンスを失うリスクがある。実際、齊藤京子も深田晃司監督の作品に出演するかどうか迷っていたという。そこには、おそらくもうひとつの暗黙のルール「沈黙を守ること」を破ることへの不安があったのだろう。

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スキャンダルと沈黙の掟

しかし、その歪みは数多く存在する。映画の中では、執着心の強いファンがイベントで攻撃的になる様子が描かれているが、現実ではさらに深刻なケースも起きている。2025年には、主流メディアや音楽業界の大きな流れの外で活動していた"地下アイドル"の女性が殺害され、57歳の男に有罪判決が下された。こうした事件や、性的暴行の告発、元アイドルの自殺といった問題が明るみに出てもなお、業界の不透明さは変わらず、時代遅れのルールも残り続けている。

若いアーティストたちを守る仕組みはほとんどなく、ひとたびスキャンダルが起これば、彼女たちは簡単に世間の批判にさらされてしまう。「恋愛禁止」のルールを破った場合、裁判を避けるために、公の場で謝罪を強いられることさえある。運よくそれを免れない場合には、所属事務所に損害賠償の支払いを命じられることもある。

「最終的には裁判官の判断に左右されます。進歩的な考えの持ち主であればアイドル側に有利な判決を下しますが、そうでなければ彼女の人生を壊しかねません。ただ、ここ数年は訴訟の数は減っています」と『恋愛裁判』の監督は指摘する。「事務所側もスキャンダルや世間的な批判を避けたいのです。海外では世論が彼らに厳しく、日本でも若い世代を中心に意識が変わり始めています。」そしてこの映画自体も、その意識の変化に一役買う可能性がある。

「日本で非常に有名なテレビジャーナリストが、東京映画祭でこの作品を観たのですが、この物語を通して、彼女は自分自身も疑うことなく従ってきた"見えない圧力"に気づいたのです。たとえば、男性とふたりきりで街を歩くことすらできない、といったように...。上映後、彼女は涙を流していました。この映画が彼女にとっての"気づき"になったのだと思いますし、他の観客にも同じような影響を与えられればと願っています」と監督は語る。

from madameFIGARO.fr

text: Marilyne Letertre (madame.lefigaro.fr) translation: Hanae Yamaguchi

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