「やりすぎの代償も」年齢不詳なハリウッドスターたちの「美の追求」が招いた結果。

Celebrity 2026.04.16

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「永遠の若さ」という圧力や美容整形から逃れられるスターはほとんどいない。1930年代の頃から映画スタジオは女優たちの外見を作り上げてきた。今日の課題は「いかに目立たずに若返るか」。

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第32回SAGアワード授賞式でのデミ・ムーア。(ロサンゼルス、2026年3月1日)Michael Buckner / Variety via Getty Images

「ブラッド・ピットの耳の前の軟骨あたりをよく見ると、かすかに跡が見える。あれは明らかにリフティングの跡だと思う」とTikTokアカウントで断言するのは、ビバリーヒルズを拠点とする形成外科医、ジェイコブ・セドゲ医師だ。別な動画ではフランスのリヨン在住医師が、荒れた生活を送っていた女優リンジー・ローハンが突然、変貌を遂げたのは、「顔の輪郭を整える巧みな手術の結果」であると指摘している。「ミニリフト、眼瞼形成術、鼻整形で鼻筋を矯正したうえで、徹底的にスキンケアし、適度にボリュームアップしてくれるピンポイント注射を組み合わせたもの」と分析する。別な動画では、スイスのクリニックで働く美容外科医がエマ・ストーンの「新しい」顔を分析している。10歳も若返ったように見えるのは、「顔の上から3分の1に複数の施術を受けているため。こめかみ周辺にスレッドリフトをほこどして最大限のキャットアイ効果、さらにボトックスと頬骨へのヒアルロン酸注入」したからで、その「結果は素晴らしい」とほめたたえる。

手術のビフォーアフター

SNSにはスターの整形手術を「ビフォーアフター」で検証し、事実確認を行うコンテンツがあふれ、数百万回もの再生数を稼いでいる。専門家もそうでない人も憶測をたくましくする。ブロウリフトをしたのかしなかったのか?ボトックスは? フィラーはどう?有名人の顔は凝視され、分析され、拡散される。これまで以上に注目の的だ。今年2月には、アメリカ映画界でよく知られた顔の持ち主が物議をかもした。フランスのセザール賞名誉賞をもらうことになり、賞授賞式に招かれた64歳のジム・キャリーが、あの伝説的なゴムのように伸びる顔とはあまりにもかけ離れた容貌で登場したのだ。しわのないおでこに引っ張られた瞼、膨らんだ頬骨。あまりの変わりっぷりにネット民は騒然となり、本人ではなく替え玉だという主張まで現れた。陰謀論も飛び出して、セザール賞運営側が公式声明で否定する騒ぎに発展した。真相はおそらくごく単純なことで、『マスク』の俳優が整形手術を受けたということだろう。今となってはヒット作のタイトルがなんとも皮肉に見える。

美容整形もクワイエット・ラクシュアリーの時代へ

年取ったジム・キャリーの顔は激変したかもしれないが、美容整形の世界では、コペルニクス的転回が起きている。特に印象的だったのは2025年5月に起きた出来事だ。70歳になったクリス・ジェンナーが異様に「若い」顔で登場した。カーダシアン一族を率いる母は美容整形への情熱を公言してきたし、今回も施術を受けたことを認めた。ところがその結果がびっくりするほど自然だったのだ。米国での報道によれば、彼女の若返りの秘訣はディープ・プレーン・リフトと呼ばれる施術にある。これはかなり大胆な外科的手法で、筋肉と表在性筋膜(SMAS)の下に位置する組織の深部に働きかけるものだ。大まかに言えば、SMASを「剥離」し、組織を本来の位置に戻す。この技術は皮膚を過度に「引っ張る」ことなく「再配置」するものであり、その効果を喧伝する人たちによれば目覚ましい結果をもたらすそうだ。

経験豊富なほんのひと握りの熟練外科医でないと実施できないことから、このディープ・プレーン・リフトは富裕層の女性にとって究極の選択となりつつある。「ほぼ手術跡のない」結果のために支払う金額は、10万ドルから30万ドル。一方、パリで形成・美容外科を15年以上にわたって営むヴァンサン・アンサンジェ医師は、ディープ・プレーン・リフトを否定する。同医師によればディープ・プレーン・リフトは「持続的とは言えない」技術であり、「運動麻痺などの合併症を引き起こしかねないため、かなり危険」なのだそうだ。同医師はその代わりにフィリップ・ベリティ医師が開発した「フレンチリフト」などの最新のリフト手術を実施している。最近、アンサンジェ医師は患者数が増加していることと、患者からの要望が一致していることに気づいた。外からわからないよう手術して欲しいという要望だ。

「やりすぎ」の時代

同医師は、美容整形が新時代に入ったと言う。カイリー・ジェンナーやヴィクトリア・ベッカムのような「ダックフェイス」はもう流行らない。「キム・カーダシアンの時代は終わった。現在のトレンドはもはや過剰に手術を重ねることではなく、洗練の手法で目に見えないことだ。求められるのは変容ではなく、調和の回復。この仕事が奥深いのは、見えるけれど見えないようにするという点だ」とアンサンジェ医師は言う。美容整形もクワイエット・ラグジュアリーの時代なのだろうか。誰もが気軽に注射施術を受けられる時代に(注射は世界の美容市場の46%を占め、2024年の推定市場規模は100億ユーロと言われている)、最高に洗練されているのは何気なく、「自然に若く見える」ことかもしれない。アンサンジェ医師の言葉を借りれば、もうボリュームを出すことが若さの象徴ではない。ヒアルロン酸の過剰注入は、マドンナやザック・エフロンのような「ピロー・フェイス」になる危険をはらみ、逆効果になりかねない。

目立たない新技術

ピロー・フェイスはトランプ大統領にちなんで別名「マールアラーゴ・フェイス」とも言うそうだ。そうならないために多くの俳優や女優たちは低侵襲な微修正をおこなう「ツイークメント」を好むようになっている。アンサンジェ医師は、「以前はボリュームアップのために注射する傾向があったが、今は皮膚のコラーゲン産生を刺激し細胞の再生を促す新しいハイブリッド技術が使われるようになっている。たとえばPLA(ポリ乳酸)やPLLA(ポリ-L-乳酸)ベース)のビオスティミュレーター注射などだ」と言う。さらにラジオ波などの他の技術と組み合わせることで、肌のツヤやハリが回復するそうだ。人知れずに。

やりすぎの代償

時代は移り変わる。ハリウッドのスターたちの顔が変わり始めたのは、ボトックスが登場した2000年代のことだ。食品医薬品局(FDA)が美容治療としてのボツリヌストキシンの商業化を正式に承認したのは2002年のことだった。1967年生まれのニコール・キッドマンは不本意にも、永遠の若さを保つために悪魔ファウストと契約を結ぶかのごときボトックス注射と結びつけて語られるようになってしまった。2003年に『めぐりあう時間たち』でアカデミー主演女優賞を受賞、同世代で最も優れた女優のひとりとみなされながらも、一時期、顔の表情が乏しくなったと指摘された。2011年、珍しく本音を語った女優はボトックスを「試したことがある」と明かし、こう付け加えた。「結果が良くなかったからもうやっていません。しかも注射をやめたことは、女優としてプラスになりました。おかげでまたおでこが動かせるようになりましたから」

過剰施術が原因で仕事が干されてしまった女優もいる。レニー・ゼルウィガー(56歳)もそのひとりだ。『ブリジット・ジョーンズ』シリーズで成功を収めた後、彼女は数年間表舞台から姿を消した。その原因は、注射のやりすぎや眼瞼を引き上げる眼瞼形成術など、顔を完全に別人のように変えてしまった過剰施術にあった。1990年代にアメリカの恋人と呼ばれたメグ・ライアンも、40代に差し掛かるころに劇的な「変貌」を遂げた。男性も例外ではない。1980年代のセックスシンボル、ミッキー・ロークは顔を台無しにし、往年の面影はない。外見を変えることはこの業界でリスクが伴う。フランスの哲学者兼キュレーター兼教師であり、『Faceworld(フェイスワールド)』(PUF刊)を執筆したマリオン・ジリオは次のように分析する。「スターの顔は、厳密には私的なものではありません。そこには集団の思いが投影され、なんらかの文化的資本が反映されます。その顔が変貌すると、観客には裏切られたという思いが湧くことが多いのです。なぜなら私たちはその人そのものというよりも、お約束ごとのようなその人のイメージに愛着を持っているから」。そしてさらに「顔がひとつのブランドとなると、収益性のあるアイデンティティとして固定化される傾向があります。それを変えることは、関連する信用価値を不安定化させるリスクを冒すことになるのです」とも。ハリウッドという「株式市場」では、暴落する者は容赦なく切り捨てられる。

スタジオの黄金時代

ハリウッドで老いることは、今も昔も容易なことではない。美容整形の国際的先駆者のひとりと言えるのは、かつてのフランスの名女優、サラ・ベルナールだ。なにしろ1910年代からすでに専門家に顔を委ねていた。専門家にはフランスの形成外科医の先駆者スザンヌ・ノエルもおり、彼女はその後、自分の技術を第1次世界大戦中、「顔を砕かれた」傷痍軍人たちのために活用する。やがて美容整形手術は個人の顔を変える道具となった。1930年代は鼻形成術が生まれた時代だ。いわゆる「ハリウッド・ノーズ」(細くとがった鼻)がこの時代に誕生したのだった。

造られた女優、ジョーン・クロフォード

1930年代のトーキー登場から1950年代半ばまで黄金時代を迎えたハリウッドでは、絶対権力を持つ映画スタジオが女優たちの身体と顔を支配し、美のステレオタイプを体現させようとした。『Hollywood, la cité des femmes(ハリウッド、女たちの都)』(Actes Sud刊)の著者アントワーヌ・シールはこのテーマのエキスパートだ。「当時、映画の観客は主に女性でした。どのスタジオも商業的な理由からスター女優を求めていました。ジョーン・クロフォードと契約したMGMは、マレーネ・ディートリッヒの時と同様、臼歯を抜くなどしてイメージを完全に作り上げたのです。また電気針での脱毛処理を施し、額を広くさせることもおこないました」と言う。

ラテン系を「修正」させられたリタ・ヘイワース

同様に痛々しいまでの変化を強いられたのが、MGMのライバル、コロンビア映画のスター女優、リタ・ヘイワースだ。映画『ギルダ』(1946年)での赤髪が印象的だが、あの髪も地毛ではない。「本名はマルガリータ・カルメン・カンシーノ、ラテン系の出自でした。でもスタジオを率いていたハリー・コーンはそれが全く気に入らなかったのです」とアントワーヌ・シール。「当時の美の基準はもっぱら白人中心主義。極めて人種差別的でした。1930年に制定されたいわゆるヘイズ・コードと呼ばれる検閲規定は、スクリーン上で白人と非白人が関係している描写を禁じていたのです」。当然ながら当時、こうした外科的な「修正」はすべて秘密にされていた。マリリン・モンローが1950年から1952年の間に鼻を整形していたことが判明したのは、没後になってオークションにかかった医療文書によるものだ。誰も完璧ではない。

投影の対象

今日、スターたちが整形手術を受けたことをオープンにしやすくなったとはいえ、あけすけに語る人は少ない。手術を批判する場合を除いては。50歳のケイト・ウィンスレットはその急先鋒で施術を「恐ろしいもの」と断じている。56歳のケイト・ブランシェットも、「アメリカで働く女性として、美容整形は残酷で、不快で、反発しかない行為であり、何としても避けるべきものだと考える数少ないひとり」を自認している。67歳のアンディ・マクダウェルはもっとフランクだ。「綺麗だとチヤホヤされるために若く見えなきゃいけないんだろうと人に思われたくない。若くあろうとするのはもうたくさん。若くなんかなりたくない。若さはもう体験したわ。どうして老いることを恥じなきゃならないのかしら」。ハリウッドで老いを堂々と受け入れる女優は極めて少ない。その荒野の中で堂々たるアウトサイダーとして存在しているのが63歳のジョディ・フォスターであり、エマ・トンプソン、ヘレン・ハント、ジェイミー・リー・カーティスだ。

逆に振り切ったデミ・ムーア

もうひとつの選択肢は、63歳のデミ・ムーアのように逆に振り切り、全身を作り替えてしまうという道だ。最近のSAGアワード授賞式にやせ細った体で登場して以来、ネット上で激しい論争を巻き起こしている。若さへの執着をテーマにした映画『ザ・サブスタンス』で過激な役を引き受け、現代に対する文化的考察をすることでアカデミー賞獲得を狙うという戦略だ。結局は逃してしまったが。女優たちは若い頃から矛盾する要求に疲弊している。老いてもいいけれど、わからないように老いること。これは女優たちにとって残酷な綱渡りだ。そして今では男優も同様の状況にあり、62歳のブラッド・ピットも元気な50代のように見えることが求められている。それでもちょっとは前進したのかもしれない。58歳のパメラ・アンダーソンが「ナチュラル」を公言し、少なくともメイクアップを断念したのだから。

社会のインターフェイスとしての顔

哲学者のマリオン・ジリオは「スターたちは常に最先端の存在だった。新たな美や流行の規範を打ち立ててそれまでの基準を変え、時代の感受性を先取りしてきた」と言う。いまやフィルターや生成AIによって「拡張された」顔、巨大な唇とキャットアイを持つ「インスタグラム・フェイス」が氾濫する時代だ。「私たちのアルゴリズム経済において、プラットフォーム上、顔は注目を集めてマネタイズするためのベクターと化してしまった。プラットフォームのアルゴリズムがある特定の美的基準(キム・カーダシアンのような人物によって広められた基準)を優先するのは、それがより多くのエンゲージメントを生み出し、支配的なイデオロギーに応えるからだ」とも。生物学的なデータにすぎなかった顔が、「インターフェイス」と化した現代をマリオン・ジリオはこう結論づける。「顔は決して不変の存在ではなく、社会を反射し、反映する場所だ。顔は、その時代の表象、投影、理想を映し出している」

ハリウッドの「リフト・ストーリー」、あるいは映画界の「顔作り」

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クリス・ジェンナーが、プライベート・クラブで開催されたYouth Exchange and Studyプログラム25周年記念ガラに出席。(カリフォルニア、2025年9月4日)photography : Robin L Marshall / Getty Images

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20世紀フォックス映画『百万長者と結婚する方法』の宣伝用写真撮影でポーズを取る女優マリリン・モンロー。(ロサンゼルス、1953年)photography : Donaldson Collection / Getty Images

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text : Séverine Pierron (madame.lefigaro.fr)

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