【フィガロジャポン35周年企画】 「自分らしく」を打ち出した1992年のフィガロジャポンを振り返る。
Culture 2025.03.19
パリ生まれ東京育ちのスタイル誌『フィガロジャポン』は、2025年3月で創刊35周年。パリやパリに生きる人々の哲学から旅、ファッション、食、映画、そしてアートまでフィガロジャポンが発信してきた35年の歴史を編集長の森田聖美が思い入れたっぷりに振り返ります。1992年に発売したすべての号をプレイバック!
1992年3月号(1月29日発売)025
「自分らしく」は時代のキーワードではなくスタイル。
「粋で素敵な大人のあなたへ 自分にいい服、発見しよう!」。この特集タイトルを読むと、フィガロジャポンは本当に長い間、同じ哲学で誌面作りをしてきているとしみじみ感じる。トレンドに乗るのではなく、トレンドを理解し、意識はしても、自分らしく纏うことを大切にしている。中特集では芸術との付き合い方、さまざまな角度からアプローチ。そして、文楽など古典芸能の若手のインタビューまで掲載されている。
1992年4月号(2月29日発売)026
オヤジ編集長のメッセージとは思えない(?)。
表紙の言葉、「ふんわり鮮烈、フィガロ!」。もうすぐ還暦を迎えようというオヤジ(蝦名)編集長が書いた言葉を振り返って思わずニヤリ。美容が巻頭特集となった「恋する化粧。」 フィガロでは珍しく、モテのための愛されるメイクアップを推奨している。0.8ミリのオーバーリップの提案などは現代にも通じそう。東京を訪れたジュリエット・ビノシュをルポしていて、若い頃の彼女の愛らしさを再確認する誌面だ。
1992年5月号(3月28日発売)027
新しいショッピングのカタチを提案。
創刊2周年記念号は「大人が注目、大人に役立つ、新しい発想の店。」特集。セレクトショップが元気になる前夜くらいの時期なのだろうか、専門店であってもユニークな試みがあるとか、バーニーズやフォーシーズンズホテルなど、総合的な展覧場のようにスタイルを表現する店舗形態を持つところにフォーカス。1冊全体がそうなっていて、中特集ではパリの新発想の店紹介も。そして蝦名イズムを感じるのは「路地特集」。これから出てくるフィガロの旅特集は、その先に何が?と言わんばかりの道が表紙になってくるのだ。
1992年6月号(4月29日発売)028
お手本になるのはハンサムウーマンたち。
「最新インタビュー ダンディな女カタログ」。ジェーン・バーキン、サラ・ムーンなど、錚々たる顔ぶれの素敵な女性カタログ。車を愛する彼女たちの特集もあって、カッコいい女性はドライビングテクニックも、という考え方は前時代的だけれども、でも、おもしろかった。そして、個人的に強い思い入れがあるジャン・ジャック・アノー監督の『愛人/ラマン』特集。本国版マダムフィガロでは主演俳優のレオン・カーフェイが表紙になったはずだ。彼の大ファンになり、アジア映画への想いを再確認した。
1992年7月号(5月29日発売)029
部屋を美しくすることが素敵な人の条件に。
この表紙が大好きだったことを思い出す。物撮影なのだけれどもシンプルな青い背景。置かれているものはいずれも可愛いのに年季が入った佇まい。「スタイルのある部屋。」特集は、フィガロジャポンが大切にする「スタイル」という言葉を人やファッションではなく、インテリアに用いた号。エスニックやカントリー風、ナチュラルモダンなど、それぞれのスタイルの実例や暮らす人たちを特集。そして、人を招いた時の食卓のレシピやうつわなどにもフォーカスしている。
1992年8月号(6月29日発売)030
昔は「いい男カタログ」でよかった。
「男の顔にはストーリーがある。」 そうですね。誰にでもストーリーが顔に現れてくるもの。ここにも我が愛しのレオン・カーファイが登場、そしてジャン・レノやジャン=ユーグ・アングラードなど、当時フランス映画でも大人気だったイケ男たちが特集されている。当時の先輩、フィガロエディターたちは、大人の男性が好きだったのはラインナップを眺めても明らかだ。2025年の現在は、カタログのようにたくさんの男性たちを見るよりも、「推し」をじっくりたくさん見たい。時代の変化を感じる。
1992年9月号(7月29日発売)031
フランソワ・トリュフォーのファンは必読!
「せつない恋がしたい!」特集。ジャンヌ・モローやカトリーヌ・ドヌーヴ、ファニー・アルダンなどのフランス人女優から、吉行和子、いしだあゆみまで、インタビューでせつない恋の記憶を語らせている。注目はファニー・アルダンのトリュフォーに対しての想い。トリュフォーファンにもたまらないはずだ。
1992年10月号(8月29日発売)032
「盛る」インテリアで、いいんじゃない?
「小物の選択で、部屋はがらりと変わる。 部屋を飾る。」巻頭特集。フィガロジャポンは収納術みたいなテーマはあまりやらない。自身が大切にしているものをどのように見せるか、の工夫を重視する。窓辺はショーウィンドーであり、ベッドの床は飾り場、壁は立体演出すべし、と盛る。でもフシギとエレガントだ。パリの素敵な雑貨店のガイドもあって保存版で持っている読者も案外いそうな号だ。
1992年11月号(9月29日発売)033
無造作ヘア、つまりエアリーが流行った頃。
「なぜ、パリジェンヌの髪型か?」という特集で、その答えを導き出す。無造作なのに魅力的、という考え方は、当時の日本には確かにあまりなかったかも。49ページの写真が好きだ。エアリーな黒髪ショート姿で、アイラインを引いた女の子がルージュを塗る瞬間。所作の美しさが映える1枚だった。当時のフィガロジャポンはヘアスタイルの特集が本当に多かった。今号で『髪結いの亭主』の主演女優をインタビューしているのも偶然じゃない? 故・栗田恭一さん監修のオペラに関する中特集も。後に「妹へ」という連載がスタートし、編集担当としてクラシック音楽についてたくさん教えていただいた。いい思い出だ。
1992年12月号(10月29日発売)034
街ごと観光名所だからこそ、パーソナルが光るパリ。
「私的パリ旅の時間。」 フィガロジャポンがいままで何度となく行ってきた特集の原始。観光名所ではないパリを紹介したい。暮らすようにパリを味わいたい読者のために。それはもちろん編集者たち自身の希望でもあった。地図はイラストで、それでも相当細かく描き込まれている。市内の移動はバスを薦めている。ブランドものではなく、額縁の購入にこだわる。第2特集で「パリから行く田舎町。」旅に持っていく書籍のススメも。
1993年1月号(92年11月28日発売)035
セクシーってなんでしょう? 視線かしら?
「このごろ、映画のセクシー感覚が適温!」 おそらくセクシーという言葉を洒脱に起用するのが難しい時代だったんだろうな、と思ってしまう巻頭特集タイトル。当時、パトリス・ルコント監督のフランス映画が大ブームで、『仕立て屋の恋』についてしっかり紹介されていた。「男の視線のエロティシズムに、私の映画は集約される。」(パトリス・ルコント)、「マドンナ的ではない、目に見えない官能を描く。」(ロマン・ポランスキー)、「愛に不器用な主人公だからこそ、官能のドラマが生まれる」(ペドロ・アルモドバル)。どれもインタビューに出てくる名言だ。そして、星占いの大特集が今号でスタート。後のフィガロジャポンの鉄板企画に進化してゆく。占い人はマダム・ド・リス・ド・サンリス。私が伝え聞いたウワサでは、自身の死期まで見事に占って当てた人物だ。
1993年2月号(92年12月29日発売) 036
散らかすことに罪悪感を持たないで。
恒例の人気企画となったインテリアの「美的に散らかす部屋づくり。第2弾」 家の空間別に散らかし方のすすめを実例で紹介。そしてもちろんパリ編も。東京・大阪・京都・神戸4都市の感度のいいインテリアの店も取材。