【フィガロジャポン35周年企画】 「フィガロ流」が炸裂!1993年のフィガロジャポンを振り返る。
Culture 2025.03.19
パリ生まれ東京育ちのスタイル誌『フィガロジャポン』は、2025年3月で創刊35周年。パリやパリに生きる人々の哲学から旅、ファッション、食、映画、そしてアートまでフィガロジャポンが発信してきた35年の歴史を編集長の森田聖美が当時の思い出に浸りながら、思い入れたっぷりに振り返ります。1993年に発売したすべての号をプレイバック!
1993年3月号(1月29日発売)037
絶対定番を見極める。
「93年は大人の本格時代です あなたの新・贅沢主義。」ってさっぱり意味がわからない!? 本物だけが贅沢だ、自分の中身をまず磨く、触発されたら愛し抜く、名誉のためでなく自分に―――なんだか必死にラグジュアリーの真の定義を探そうとしている、ある種、素朴なフィガロジャポンの姿がここに。でも、いつの時代にも信頼される絶対定番の名品が多数載っていて参考になる。「『和』は新しい贅沢です。」中特集では、西洋ルーツの媒体が日本の美を讃える特集で、この特集の写真を見て、部屋を再構築する人もいたのではないか、と思いを巡らせる。
1993年4月号(2月27日発売)038
食卓が美しいことは、素敵です。
テーブルセッティングを重要視したフィガロジャポン。ファッションだけの媒体ではなく、アールドゥヴィーヴルを大切にしていたエスプリは現在にも続いている。「美的で、個人的な、テーブル・セッティング。」特集。うつわだけにフォーカスするのではなく、クロスをフレンチシックにしようという提案まで。フィガロジャポンで長期連載を続けている岡尾美代子行きつけのインテリアショップまで紹介されていて、懐かしいのか新しいのか、うれしい気持ちになる。屋外のテーブルセッティングまで紹介している点はまるでヨーロッパの田舎町のようだ。第2特集でしっかり白洲正子の生き方に触れていた。映画好きにとってうれしいのは、ジョン・カサヴェテスの特集もついていたこと。
1993年5月号(3月29日発売)039
いまでも参考になる花の生け方・飾り方。
創刊3周年記念特大号「部屋いっぱいに花を飾る。」 色の合わせ方、ワントーンや1種類だけで展開するアレンジメントなど、花の飾り方をさまざまな角度から紹介。ジャンピングブーケが多く、シャンペットルな花選びが多いけれども直線的な生け方も多く紹介されていて、とにかく素敵。パリの実例も参考になる。
1993年6月号(4月28日発売)040
ノーメイクに見えるきれい、が素敵とこの時代に言ってた。
「パリ的化粧法。」特集。パリでは、最高の誉め言葉は、「顔色いいね」らしい。マスカラが美しい眼差しの秘訣らしい。色ではなく光の効果でパウダーを選ぶべきらしい。なんと! いまでは常識だが、ちゃんと解説付き。ノーメイクに見えるのが私の化粧哲学、と語るフランス人ジャーナリストも登場。老舗のラグジュアリーブランドは、この時点から良質プロダクトを世に送り出していて、現在も元気。素足のケアも忘れない点が、まさにパリジェンヌ軸で考えた特集だったのだと思う。
1993年7月号(5月発売)041
当時からパニエはフィガロのコードのひとつ。
ヨーロッパやアメリカの映画の中に出てくるような素敵なピクニック時間を再現したい。そんな目論見がかなった特集。「FIGAROのピクニック」は、アウトドアだって、ごりごりスポーツじゃなくおしゃれにいけますよ、という提案。お茶の野点だってピクニックと言い切っている。思わず笑ってしまったのは、「魚が釣れるまで、ぬるんだ渓流でひと遊び。」というキャッチ。どのセンパイが書いたのだろう......? 「チープシック」特集もあって、当時のスタイルの在り方を実感させられる。
1993年8月号(6月発売)042
ミモザはいま、東京でも人気の花に。
「日常のパリ、飾らないパリ、だから奥深いパリ。」 どんだけパリ!なのでしょうか、フィガロジャポンは。でも、パリは永遠の都。表紙に花屋が写っています、ミモザが。この数年で、東京にもミモザが入ってきて人気に。黒板に丸文字でメニューを書くレストランもたくさん。パリスタイルは魅力的だからたくさん輸出されているのだ。エイズで急死したフランス人監督シリル・コラールの記事や、恐竜特集も。
1993年9月号(7月発売)043
いい言葉を紡ぐ男たちがいっぱい。
ジャン=ジャック・ベネックスが竹中直人と対談していたり。ジャンヌ・モローへの独占インタビューで過去の恋人たちについて語ってもらったり。縦横無尽な「男たちのダンディな時間。」特集。ベネックスは、我が師・塚本香の大好きな映画監督であった。『愛を弾く女』が公開されたばかりのクロード・ソーテ監督や、大好きな小説『妻への恋文』の作家アレクサンドル・ジャルダンのインタビューがいま読んでも愉しい。創刊号表紙を飾った女優ジュディット・ゴードレーシュが訪日し、東京ブランドを着てファッション撮影されたページは素敵。
1993年10月号(8月発売)044
狭いから素敵にできない、は言い訳に過ぎない。
空間が狭くてもおしゃれなインテリアは実現できる宣言。「部屋は狭くても、巧みなスモール・スペース。」特集では、飾り方・しまい方のさまざまなアイデアが満載。綴じ込み付録のパリの40平方メートルの家実例もおもしろかった。個人的には、このアンティーク入門特集にインスパイアされ、突然、火鉢のようなものを購入してしまったことも。それはいまでも自宅にある。そして大グランジルック旋風がファッションで起こり始めた時期でもあった。この号から、オペラやクラシックの原稿の執筆をお願いして人気を博した音楽評論家、黒田恭一の「妹へ」連載がスタートした。
1993年11月号(9月発売)045
ショートヘアこそおしゃれ、という言い切り。
「パリ・ショートは新しい きっぱりと、パリジェンヌの短い髪!」特集。前にもフィガロジャポンはヘア特集が多い、と書いたが、まさにこれもそんな1号。「女性は女性らしいほうがいい」という考え方が主流どころか当たり前だった時代への反逆みたいに発信された特集で、「髪を切れない女たちの5つの疑問に答える。」というテーマなど相当突っ込んでいる。
1993年12月号(10月発売)046
重ね着ではない。レイヤードしてセンスアップ。
いまでこそファッションにおいてレイヤードするということは、モードの達人でもあることの証明だけれど、当時は「レイヤード」という言葉さえも世に浸透していなかったのではないか......?と思ったりもする。フィガロジャポンにしてもとっても細かく着こなしに関して「指南」しようとしている特集スタイルでカバーも多数の写真で細かい。いまでもフィガロ読者はとても香りに興味が深いけれど、この頃から香水特集として、じっくりひとつひとつの香りの魅力を説いていた。
1994年1月号(93年11月発売)047
歩く・買う・食べるの3つを大原則にした号。
「最新版 ロンドン旅の時間。」特集。筆者は1995年からフィガロジャポン編集部に入ったが、この「歩く・買う・食べる」を軸にして旅特集を作ることはすでに定番化されていた。それを決定的にしたのは、表紙でもそのように謳われているこの号からであろうか? プライベートでロンドンを訪れた際、今号を参考にした記憶がある。旅特集のいいところは、街や取材先の写真を眺めているだけでその国や街のコードがわかること。フィガロジャポンはずっとロマンティックをキーワードに誌面作りをしているけれど、ロンドンにはパリとは異なるロマンティックがある。そのことに自然と気付ける。そして味をしめた星占い特集。この占い師は言葉がずばっと書かれているのが特徴(いやいやもしかすると故・三宅菊子女史のテンポいい原稿がそうさせてしまったのかも)。だから読んでいて明快で人気を博した。
1994年2月号(93年12月発売)048
いまでは一般的なアートを持つことのハードルを下げた。
「アートのある部屋づくり。」特集。いま、アートは投資対象になっているけれども、当時の日本の一般層にはそういう考え方はまったくなかったと思う。ニューヨークやパリの家の実例を見せて、アートと共存して暮らす空間とは?を丁寧に紐解いていった。絵画だけではなく、現代アートのオブジェなども紹介、東京でアートが購入できる若い感性のあるギャラリーも紹介している。この頃、短期連載で、エイズで亡くなったモデル、ティナ・チャイの人生を探求する読み物があった。