【フィガロジャポン35周年企画】 フィガロジャポンはしまうよりも飾るが好き! 1994年の全特集を振り返り。
Culture 2025.03.19
パリ生まれ東京育ちのスタイル誌『フィガロジャポン』は、2025年3月で創刊35周年。パリやパリに生きる人々の哲学から旅、ファッション、食、映画、そしてアートまでフィガロジャポンが発信してきた35年の歴史を編集長の森田聖美がバックナンバーをめくりながら、思い入れたっぷりに振り返ります。1994年に発売したすべての号をプレイバック!
1994年3月号(1月発売)049
まかない料理に焦点を当てるフィガロ的美学。
まかない料理のおいしさに美学を見出す―――。フィガロジャポンのDNAはそんなところにもある。それをまるごと巻頭特集にしたのが「プロが食べている、日常料理。」 有本葉子や堀井和子など料理研究家、名店シェフたちなどの普段の料理をレシピごと紹介。インタビュー連載アクチュアリテ(現在はポートレートという名前で継続)に、レスリー・チャンが掲載され、ひどく羨ましく感じた記憶。
1994年4月号(2月発売)050
パリ、パリ、パリ!そして日本映画。
パリ旅の時間・保存版シリーズのひとつ。「パリで、いま買うべき物。」特集。うつわやリネンやクロス、そしてエルメスのバッグ。それらをひとつのラインに並べてしまうところが、フィガロジャポンらしい視点のあらわれ。「大人のカジュアル・シック」第2特集では、心地よいアイテムとコーディネートの宝庫。こちらは現在でも着こなしの参考になる提案がたくさんある。黒澤明vs淀川長治という誌面が"おじいちゃん"で埋め尽くされているけれど相当ビッグな対談ページがあって度肝を抜かれる。ふたりの巨人の日本映画の作り手に対する想いや考えが語られていて希少。
1994年5月号(3月発売)051
旅情の原稿は、編集者にとって恐怖の岬。
路地の先はなんだろう......当時の蝦名編集長が好きだった表紙選びの方向。フィガロジャポンと古都は相性がいい。「中世街道は春いっぱい! イタリア旅の時間。」特集では、フィレンツェ、ヴェネツィア、アッシジ、ヴェローナ、ボローニャなど、ルネサンスの街並みの美しい場所を訪れた。もちろん東京にいるフィガロジャポン編集者たちが渡伊して取材執筆した。フィガロジャポン編集部では、「旅情の原稿」というのが恐れられ、ここには心身ともにやつれるほど必死に執筆する。詩的かつ情報も入らねばいけないこの旅情パートの原稿は、すべての編集者のアタマを悩ませる関門だったと思う。素敵なホテルや宿もたくさん紹介され、後にこれらをまとめて「旅籠ムック」を出したほどだった。ノーベル文学賞を得たアニー・エルノーに故・和久本みさ子氏がインタビューしていたり、当時サッカーファンの編集者がいて、ロベルト・バッジオにイタリア特集号内でインタビューできたのは幸運だった。
1994年6月号(4月発売)052
エイズへの恐怖が残る時代、NYの魅力に触れる。
ニューヨーカーのクリエイターと、活気あるエリアを紹介した保存版旅特集「ニューヨークに夢中!」。当時はエイズは不治の病とされていて、アーティストやクリエイターたちもこの病気に脅かされていた。インタビューページでもエイズに触れる人も多く、時代を感じさせる。アクセサリーも現在と比べてとても有機的なデザインが多い。トレンドが変わる・時代が変わるってこういうことなんだな、とページをめくりながら再認識。
1994年7月号(5月発売)053
狭い部屋インテリア特集、アゲイン。
いま読んでも当時の各章のタイトルは本当に具体的だ。だから視点が絞られる。「効果的な光のある部屋は、狭い空間に奥行を与える。」「シルクのカーテン、猫グッズ、和の空間が心地よくて。」などなど。勉強になるし、反省もする(現在)。ほかに、南仏の手仕事、日本のガラス工芸の特集もあって、インテリアへこだわる人にとってはまさに保存版な1冊だ。
1994年8月号(6月発売)054
骨董を大事にする英国、そしてベストコスメ始動。
「新しい懐かしい ロンドン。」とある。この特集の中には、いまでもロンドンに訪れたら必ずクッキーを爆買いしてくる店も掲載されている。アイテム別に訪れるべき章だてで、文房具をやっちゃうところにフィガロジャポンの味を感じて、にやりとしてしまう。田舎町の綴じ込み特集もチャーミング。ライのゼリー型の店、まだあるのだろうか? アンティークショップが多い英国には、田舎町の骨董屋も必訪だ。そして本号から本格スタートしたベストコスメ特集。当時の美容ジャーナリストが集い、その年(今回は半期)に発売されたコスメを検証する。この企画を立ち上げた村田裕子に、筆者は美容特集のいろはを教わった。
1994年9月号(7月発売)055
フィガロエディターのヨーロッパ出張は続く!
毎号旅特集しているフィガロジャポンは、必ず誰かが世界のどこかで取材している。表紙の丘の上から見下ろす白い町が美しい。カサーレスの町だ。食文化や人々の生活も見える楽しい特集だった「スペイン太陽海岸(コスタ・デル・ソル)」。
1994年10月号(8月発売)056
夏気分を一掃し、「秋に美しく飾る」を目指して。
しまうよりも飾るが好き。1994年10月号でも、キッチン、窓辺、壁など各空間をカントリー風・エスニック・モダン、など、2通りの飾り方提案をしている。そしてこのあたりまで、フィガロジャポンではファッション特集は第2特集。この次の年次からは変っていくのだ。今号では山田宏一先生によるトリュフォーと女優たちのカルチャー読み物が必読。
1994年11月号(9月発売)057
バリ島へのヴァカンスが日本人の旅感覚を変えた?
アマングループによって新しい魅力を備えたバリ島を再度特集「ヨーロッパのリゾート感覚で バリ島旅の時間。」 一大バリブームが、旅先として起き始めた頃である。あくせく観光してしまう日本人に、リゾートホテルにずっと滞在して、読書にいそしんだりする旅のスタイルに気付かせたのも、バリのリトリートかもしれない。
1994年12月号(10月発売)058
おいしいものを食べたいなら、南イタリアへGO!
「南イタリア夢旅行。」特集。約20近くのイタリアの田舎町を取材している。筆者は2003年、ナポリ出張に行くことになるが、今号でもナポリを取材している。そしてシチリア島も。ダンスやバレエも得意なフィガロジャポンは、故ピナ・バウシュ率いるブッパダール舞踊団の特集も敢行。
1995年1月号(94年11月発売)059
ホームパーティが好きな人なら保存版。
キッシュにサラダにインゲンの和え物にハムやソーセージ......食卓を豊かにするお惣菜に焦点を当て、「簡単料理を習いたい、パリのお惣菜屋。」特集。レシピも超簡単に掲載されていて、晩ごはんがパリ色に染まる。いまやホームパーティだって、前菜、メイン、ごはんもの、とちゃんと流儀を守るもの。そのためのレッスンに役立つ号だ。
1995年2月号(94年12月発売)060
遂にベストコスメが巻頭特集に!
1994年のベストなコスメはどれ? 美容ジャーナリストが対談形式でおすすめを語るベストコスメは、先にも書いたがフィガロジャポン副編集長だった村田裕子の発案。雑誌業界でも注目され、ここで何を選ぶべきか?がクリア化された特集だった。齋藤薫ブームもここからではないか?と思ってしまう。渡辺佳子、吉田昌佐美、佐藤富太(ヘアメイクアップアーティスト、後の写真家)、倉田真由美。錚々たるメンバーが登場してくれた。ちなみにベストオブベストにサンローランのルーズパウダーやシャネルのリンエクラーがエントリー。高級メゾンの口紅は3000円台の時代だった。