「なんとなく」でグルテンをやめてない?腸の専門医が語る本当に体に良い選択。
Lifestyle 2025.06.15
小麦や大麦、ライ麦などに含まれるタンパク質、グルテン。このグルテンを、より良い消化のためや、体に悪いという考えから食べないようにする人がいる。しかし、医学的な理由もなく「グルテン断ち」することに意味はあるのだろうか?
消化の改善のため、または「体に悪い」と思って、グルテンの摂取を止める人がいるphotography : Getty Images / Image Source
ディナーの席で突然、「グルテンを摂らないことにしたの」と大袈裟に打ち明ける友人がいる。その理由は、「消化不良を治すため」。さらに、グルテンは有害だと考え、健康管理のためにグルテンフリーの食事に変えた友人もいる。そして、なかには「トレンドだから」という理由でグルテン断ちをする人も......。
だが、そのうちの誰も「セリアック病(グルテン不耐症)」ではない。これは、フランスでは人口の1%のみが抱える疾患だ。だが、2022年の調査で、国民の8%がグルテンを含む食品を摂っていないことが明らかになった。
医学的な理由もなしにグルテンを食卓から排除することは、危険ではないのだろうか? また、それに意味はあるのか?
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メリットはまったくなし
グルテンそのものは、私たちの身体の機能に必要不可欠というわけではない。小麦やライ麦、大麦に含まれる非必須タンパク質で、その成分は他のタンパク質にも含まれる。
ニース大学病院の消化器専門医であり、コート・ダジュール大学の栄養学教授であるステファン・シュナイダーは、「セリアック病でグルテンを摂取していない患者も、平均寿命は他の人と同じです」と話す。
しかし、理論上は食べなくても良いとしても、シュナイダーによると、血液検査を受けて抗体を測定し、医師から診断を受けたグルテン不耐症の人だけが、完全にグルテンを食事から排除すべきだという。「医学的に理由がある人は別として、グルテン断ちに利益はありません」
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摂取量を減らす
それではなぜ、セリアック病でない人も「グルテンを避けると消化が良くなる」と言うのだろうか? 「おそらく『非セリアック・グルテン過敏症』と呼ばれる症状に悩まされている人でしょう」と医師は言う。
「消化に不快感がある場合、まずは医師に相談し、セリアック病ではないことを確かめましょう。その可能性が否定されたら、栄養士と面談し、グルテンの除去ではなく、穀物の摂取量を減らすことを検討すべきです」
セリアック病とは違い、過敏症の場合、グルテンを一生避ける必要はなく、グルテンを食べる頻度を減らすことで食生活を改善できる。シュナイダーは、自己判断でグルテンの摂取を完全に止めると、食生活のバランスが崩れ、食物繊維やビタミンA、B、ミネラルが不足する危険性があると警告する。
さらに、「グルテンフリーと表示されている市販の食品は、価格も高いですし、何よりも超加工食品であることが多いので、そちらのほうが健康に有害です」と加える。
もし、グルテンの摂取量を減らしたいのであれば、過去の記事で栄養士のハンナ・ベンセムンが勧めているように、伝統的なパン屋で手に入る小粒のスペルト小麦のパンなど、グルテンの含有量が少ないパンを選ぶことだ。
さらに、パイクラストも市販のものを買うのではなく、自分で作ることを勧める。「レシピは簡単に見つかります。キヌアや栗のパウダーなど、あらゆる種類の粉を使って作ることができます」。もう一つ、パスタに使われている小麦は、パンの小麦よりも消化しやすいとされている。
同じ記事で、消化器病学者のマルティーヌ・コティナは、もう一つの重要な要素に言及している。グルテン過敏症だと思っている人のなかには、実際には現代の小麦に過敏になっている人もいるということだ。
「小麦は長期間かけて進化し、完全に変化しました。グルテンは古来からの穀物にあったものとは異なり、身体への負担が大きいのです」。そのため、コティナもまた、スペルト小麦やカムット小麦などの古代穀物をおすすめしている。
From madameFIGARO.fr
この記事は、madameFIGARO.frで掲載されたものの翻訳版です。データや研究結果はすべてオリジナル記事によるものです。
text: Ophélie Ostermann (madame.lefigaro.fr) translation: Shion Nakagawa