プティ・パレの『ペッカ・ハロネン』展、フィンランドに行きたくなる!

Paris 2025.12.26

北欧の画家たちを次々とパリに紹介しているプティ・パレ。来年2月22日まで開催の『ペッカ・ハロネン、フィンランド賛歌』展は、フランス初のPekka Halonen(ペッカ・ハロネン/1865~1933年)の回顧展だ。1880年代末から1930年代までの写実主義の彼の作品が130点以上展示され、画家の仕事だけでなく、フィンランドを発見する機会となっている。

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左:プティ・パレの美しい建築の中に展覧会のポスターが。 右:展覧会のイントロダクションで展示されているペッカ・ハロネン(1865~1933年)の写真。photography: Mariko Omura

展覧会は6つのセクションによる時代順の構成。プティ・パレの展覧会ではセクション別に部屋の色が分けられているのが常だが、今回はいくつかの会場のベンチに設置されたヘッドフォンの声に誘導される''散歩''が用意されているだけでなく、4つ目のセクション「幸せのメロディー」で彼のアトリエ・メゾンを再構築する、という演出が見られる。1899年にハロネンは自然と調和した暮らしを求めて、ヘルシンキから30kmの場所にあるトゥースラ湖畔に家の建築をスタート。1903年に完成した自宅兼アトリエを彼はハロセンニエミと命名した。モデルを務める妻と8人の子どもに囲まれて、家庭生活の幸せに満たされるシンプルな暮らしをここで営んだのだ。庭の手入れを楽しみ、収穫する作物は色鮮やかな作品のモチーフとなって......。湖や周囲の岩も光溢れる絵画のインスピレーション源だった。

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ペッカ・ハロネンの湖畔の自宅兼アトリエ「Halosenniemi(ハロセンニエミ)」にようこそ! シンプルな室内に、北欧の美しい光が差し込む。現在はハロセンニエミ美術館として一般公開されている。©Paris Musées / Petit Palais / Gautier Deblonde

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自宅内に飾られていた作品から。左は『自画像』(1906年)© Finnish National Gallery / Hannu Pakarinen、右は『静物画』(1909年)。© Finnish National Gallery / Aleks Talve

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ガラスケースには、画材や楽器カンテレなど彼の私物を展示。photography: Mariko Omura

そこはヘルシンキからアクセスしやすい田園地帯で、その魅力に惹かれたのはペッカのみならず。複数の画家、作家、作曲家などが集まってきて一種の文化共同体が形成されたのだ。彼らは社会・政治的、哲学的理念を共有し、シンプルでオーセンティックで、自給自足の生き方をこの地で提唱した。このセクションではその地の四季を見せ、家の様子を見せる映像が流されている。彼が使っていた画材やスキー、楽器も展示。おまけにこの家の香りの再現もなされていて、ここに身を置いてみたい!''という夢を掻き立てる。現在は現在ミュージアムとして一般公開されているというので、不可能ではなさそうだ。

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「ハロセンニエミ」の壁には多数の作品を飾っていた。photography: Mariko Omura

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第四セクションから第五セクションへ。©Paris Musées / Petit Palais / Gautier Deblonde

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ペッカ・ハロネンとはどんな画家だったのだろう。時代順に構成された展覧会を最初から紹介しよう。始まりはハローネンの全身の写真とバイオグラフィーでまとめられたイントロダクション・ルーム。第一セクションは、ヘルシンキとパリでの学びの時代からの作品を展示している。19世紀末の美術館の一室の雰囲気を作り上げた空間で、その中で1893年に出会ったゴーギャンの生徒となったことなどが明かされる。次の小部屋ではシタールのような楽器カンテルを奏でたハロネンの音楽への愛が語られ、会場に流れるのはシベリウスの『フィンランディア op26』だ。

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初期の作品から。左:岸辺の若者を描いた『Jeune garçon sur le rivage』(1891-1893年)。 © Finnish National Gallery / Hannu Pakarinen 右:フィンランドの民族楽器カンテレの奏者を描いた『le Joueur de Kantele』(1892年)。© Finnish National Gallery / Jenni Nurminen

セクション2は「1900年パリ万博のフィンランド館」と題されている。フィンランドが初めて自治国家として独自のパビリオンを出すことで、真の独立国であることを表明という歴史的にも大事な出来事だった。それに際して美術部門の代表者は国のライフスタイル、神話を描くべく画家を招聘した中にペッカも。このセクションでは、彼の2作品が展示されたフィンランド館の雰囲気が会場に再現されている。

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万博の会場を再現した第二セクション。炎をモチーフにした絨毯がモダーンだ。photography: Mariko Omura

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フィンランド館に展示されたポッカ・ハロネンの作品から。オオヤマネコの狩人を描いた『Le Chasseur de lynx』(1900年)。© Finnish National Gallery / Aleks Talve

彼の祖国への思いは、「フィンランドの声」と題された第三セクションへと続く。フィンランド人としての魂が彼に描かせた野生の自然をテーマにした作品や、伝統と田舎暮らしをテーマにした作品。これらがブルーでまとめられた部屋にまとめられている。ここから始まるトンネルを抜けると第四セクションのハロセンニエミに招かれる、という趣向である。

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第三セクション。©Paris Musées / Petit Palais / Gautier Deblonde

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第三セクションから。『カレリアの開拓者達』(1900年)© Finnish National Gallery / Aleks Talve

ハロセンニエミを出た後は、第五セクションの「自然を讃える」へ。エコロジストの彼は工業化が進む母国の景観を守りたいと、湖や森といった手つかずの自然を雄大に描いて環境保全に力を尽くしたのだ。自然の中でも最終章「白長調の交響曲」では、雪景色に特化している。雪の詩人たる彼が雪を描いた作品が会場にぐるりと並べられ、シンフォニーを奏でるのだ。フィンランド語では、雨と雪のミックスや濡れた雪といった雪の状態を表現する言葉が豊富なことから、フランス語とフィンランド語を書いた50の雪の結晶が会場の壁に舞っている。

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第四から第五セクションへ。写真はハロセンニミエの外観とトゥースラ湖。photography: Mariko Omura

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キャリアの最初から最後までの22点の雪景色が並ぶ第六セクション「白長調交響曲」。日本画、ゴーギャン、印象派などの影響が見られるものも含まれている。©Paris Musées / Petit Palais / Gautier Deblonde

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左:冬の太陽に照らされた白樺を描いた『Bouleaux au soleil d'hiver』(1912年)。© Photo Harri Silander 右:初雪を描いた『Premières neiges』(1931年)。© Photo Harri Silander

『Pekka Halonen,  Un hymne à la Finlande』展
開催中~2026年2月22日
Petit Palais
Avenue Winston-Churchill
75008 Paris
開)10:00~18:00(火~木、日)、10:00~20:00(金、土)
休)月、12月25日、1月1日
https://www.petitpalais.paris.fr/en

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editing: Mariko Omura

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