マチュー・ガニオをゲストに開催された、第6回「レ・ボーテ・ドゥ・ラ・ダンス」。
パリとバレエとオペラ座と 2026.04.08
3月8日、「Les beautés de la danse(レ・ボーテ・ドゥ・ラ・ダンス)」の第6エディションが、初回からの会場であるパリ隣接のブローニュ市のラ・セーヌ・ミュージカルにて開催された。ジル・イゾアールとエカテリナ・アナポルスカヤのふたりがクラシックバレエのガラとして企画するガラで、今回もステージの真横まで会場が埋まる好評ぶり。今年は特別な試みとして1月30日に番外編として若手ダンサーを集めたガラを開催したことからもわかるように、「Les beautés de la danse」はダンスの公演としてファンが期待するものに成長している。来年の第7エディションは1月9日&10日の2回公演であることが早くも発表された。

終演後の恒例となった、ジルとエカテリーナを囲んだダンサーの集合写真。photography: Francette Levieux
第6エディションは昨年パリ・オペラ座を去ったマチュー・ガニオが特別ゲストである。引退後に彼がパリ近郊のステージに立つのは初めてだが、現役時代と変わらぬオーラとエレガンスを披露。第1部では妹マリーヌ・ガニオ(パリ・オペラ座プルミエール・ダンスーズ)をパートナーに、『Stay Here, I will be waiting...』を踊った。これは彼の友人で振付家のステフェン・ドゥラットルがふたりに創作し、2月22日にイタリアのカットーリカで、イタリアン・アワード・コンクール最終日のガラで初演された作品である。コンテンポラリーな振り付けの中にも、いかにもパリ・オペラ座のダンサーらしい優雅さがふたりの踊りに込められていた。第2部ではレオノール・ボラックと『ル・パルク』のパ・ド・ドゥ。日本で上映されたこの作品では彼のパートナーはアリス・ルナヴァンだったが、彼女とは異なる関係をレオノールと築き、この宵を締めくくった。

マリーヌ&マチュー・ガニオの兄妹デュオが踊った『Stay Here, I will be waiting...』。photography: ©Omnia Pro Motu

レオノール・ボラックとマチュー・ガニオによる『ル・パルク』のパ・ド・ドゥ。photography: Francette Levieux
今回初参加したのはミラノ・スカラ座のニコレッタ・マンニとティモフェイ・アンドリヤシャンコだ。ふたりはその前、1月末にすでにパリのステージを踏んでいる。ローマ歌劇場バレエ芸術監督で元パリ・オペラ座のエトワールであるエレオノーラ・アバニャートがパレ・デ・コングレで開催したガラ「Icônes du ballet」にふたりは出演。『グラン・パ・クラシック』と『カラヴァッジョ』でテクニックも芸術面も見事なパフォーマンスを披露し、パリのバレエファンを一夜にして虜にしてしまったのだ。今回の「レ・ボーテ・ドゥ・ラ・ダンス」はそのふたりを再びパリで見られる素晴らしい機会となった。ここでは『カラヴァッジョ』、そしてローラン・プティの『カルメン』の寝室のパ・ド・ドゥを踊り、彼らはステージを情熱で包み込んだのだ。ニコレッタの女優ぶりも天晴れなら、それを受けて立つティモフェイも見事なドン・ホセだった。若手ダンサーを集めた「レ・ボーテ・ドゥ・ラ・ダンス」ではスカラ座の若手、ナヴリン・ターンブルをパリの観客に紹介し、今回はこのふたりを。ジルのダンサーを選ぶ審美眼のおかげで、パリにいながらイタリアの旬のダンサーを見ることができるのはうれしいことだ。

『カルメン』寝室のパ・ド・ドゥより。ニコレッタ・マンニとティモフェイ・アンドリヤシャンコ。
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英国ロイヤルバレエ団のマヤラ・マグリとマシュー・ボールはいまやこの公演の常連メンバーである。今回『ジゼル』第2幕のパ・ド・ドゥに加えて、それぞれがソロを踊った。マヤラが選んだのはフレデリック・アシュトンの『Five Brahms Waltzes in the Manner of Isadora Duncan』。アシュトンがイザドラ・ダンカンの踊りを初めて見たのは17歳の時で、彼が彼女の死後に自分の記憶の中のイザドラの踊りとそのスタイルから創作したのがこの作品である。マヤラは身体の中から湧き上がる生命の躍動に導かれるかのようにステージ狭しと踊り、観客を魅了した。マシューのソロは自作の『The Measure of Things』。ベートーベンのピアノ・ソナタ第31番に乗せて、暗がりの中に光が描き出す四角の中で全身黒い装いの彼が長いスティールの棒を持ってパ・ド・ドゥを踊るソロだ。バーを手に空間の限界を探り、測る、抵抗するといった動きは時にユーモラスだったりも。自身の身体能力と表現力を巧みに生かした彼の作品は、また見たいと思わせる魅力を秘めていた。

『ジゼル』第2幕のパ・ド・ドゥを踊るマヤラ・マグリとマシュー・ボール。photography: Francette Levieux

バラの花弁を散らしながらステージ狭しと『Five Brahms Waltzes in the Manner of Isadora Duncan』を踊ったマヤラ。photography: Francette Levieux

『The Measure of the Things』はマシュー・ボール自身による創作。photography: Francette Levieux
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「レ・ボーテ・ドゥ・ラ・ダンス」若手版にも出演したロレンツォ・レッリが本編にも出演。ブルーエン・バティストーニがパートナーで、オペラ・バスティーユで別々ではあるがふたりともに初役で取り組んだ『眠れる森の美女』第3幕からパ・ド・ドゥを。プリンセスとプリンスにふさわしい美しい踊り手による、華やぎのあるパフォーマンスだった。彼ら同様、1演目での出演というのが惜しまれたのは、バイエルン州立バレエ団のヴァイオレッタ・ケラーとオシエル・グネオの組み合わせだ。ふたりが踊ったのは『ディアナとアクテオン』でヴィオレッタのディアナはこの上なく優美でノーブルな女神であり、オシエルのアクティオンは敏捷かつパワフルな狩人。どこか美女と野獣的な組み合わせも、作品の雰囲気にぴったり。ふたり揃って優れたテクニシャンゆえ、会場は拍手の嵐となった。

ブルーエン・バティストーニとロレンツォ・レッリがキラキラ輝いた『眠れる森の美女』のパ・ド・ドゥ。photography: Francette Levieux

『ディアナとアクテオン』で会場を沸かせたヴィオレッタ・ケラーとオシエル・グネオ。photography: Francette Levieux
今回は予定されていたアリナ・コジョカルがあいにくなことに直前に降板。彼女がパリで踊るのも珍しいことだし、彼女はマシュー・ボールとフレデリック・アシュトンの『マルグリットとアルマン』を、マチュー・ガニオと『ジュエルズ/ダイヤモンド』を踊ることになっていたので、とても残念だった。来年に期待しよう。
第1部
『Stay Here, I will be Waiting....』/マリーヌ・ガニオ、マチュー・ガニオ(パリ・オペラ座バレエ団)
『Scarlatti Pas de deux』/クララ・ムセーニュ、シェール・ワグマン(パリ・オペラ座バレエ団)
『Five Brahms Waltzes in the Manner of Isadora Duncan』マヤラ・マグリ(英国ロイヤル・バレエ団)
『Carmen』パ・ド・ドゥ/ニコレッタ・マンニ、ティモフェイ・アンドリヤシャンコ(ミラノ・スカラ座バレエ団)
『La belle au bois dormant』パ・ド・ドゥ/ブルーエン・バティストーニ、ロレンツォ・レッリ(パリ・オペラ座バレエ団)
『The Measure of the Things』/マシュー・ボール(英国ロイヤル・バレエ団)
第2部
『Nocturne』/ミッシェル・ウイレム(ベルリン国立バレエ団)、エステバン・ベルランガ(チューリッヒ・バレエ団)
『Caravaggio』/ニコレッタ・マンニ、ティモフェイ・アンドリヤシャンコ(ミラノ・スカラ座バレエ団)
『Giselle』第2幕パ・ド・ドゥ/マヤラ・マグリ、マシュー・ボール(英国ロイヤルバレエ団)
『Diana et Acteon』/ヴィオレッタ・ケラー、オシエル・グネオ(バイエルン州立バレエ団)
『Le parc』パ・ド・ドゥ/レオノール・ボラック、マチュー・ガニオ(パリ・オペラ座バレエ団)
editing: Mariko Omura




