齊藤工が高橋文哉に見出した、穏やかな優しさ。
「齊藤工 活動寫眞館」について 2025.03.20
ドラマ「最愛」で高橋文哉が現れた時、多くの人がその可憐な美しさに驚いたに違いない。細身の身体にあどけなさが残りつつも秘密を抱えている役どころ。ドラマ自体がミステリアスだったので、つかみどころのなさに高橋はじめ俳優陣は戸惑いながら演じざるを得ない部分もあったのではないか、と想像する。ただ、その独特な雰囲気がシーズンにおいて大人気を博したドラマとなった理由でもあったと思う。
高橋文哉は太陽のような輝きの俳優ではなく、月のように柔らかく、儚く、優しく、透明感のある存在だ。「弱さ」が魅力にもなっている。強いことには共感できなくても、弱さは多くの人にとって寄り添うこともでき、弱さゆえに他者は包容力を感じることもある。
「実際にお会いした高橋さんは、ナチュラルな光を放っている感じがしました。子どもや動物との距離もとても自然で、本質的な優しさの純度の高い方という印象です」(齊藤)

3月20日公開の映画『少年と犬』で主演する高橋文哉は、繊細さを内包しながらもぶっきらぼうな役を演じている。東日本大震災を経て、犬とともに歩むロードムービーという物語軸の中、もともと心が優しい人物像であることをダダ洩れさせながら、共演の西野七瀬相手に押しの強い男性をやりきるのはバランスを取るのが難儀だったろうと思う。が、表情から首筋の動かし方まで身体のすべてで役柄の「心のリアル」を表現していた。
以前、フィガロジャポンのインタビューで、自身の母をとても大事に想っていることを語ってくれた。役者は本人とは違う人物になりきることが合格点ではなく、本人に宿る魅力的な性質をどのように役に反映させて見る人々をインスパイアするか、が大切だと常々思っている。高橋からにじみ出る優しさは観客を癒す。
「私とは息子でもおかしくない年齢差ではありますが、高橋さんはどこか先輩のような老生した風格もあり、同業者としても、いち映画ファンとしても頼もしさを感じました」(齊藤)
......意外性に満ちた人物。年齢が離れた齊藤に「老成」という言葉で表現される高橋文哉。純度の高い美しさはそのままに、俳優としてよりいっそう成熟していく未来が愉しみである。
2001年生まれ、埼玉県出身。19年に『仮面ライダーゼロワン』主役で俳優デビュー。主な映画作品は『牛首村』(22年)、『交換ウソ日記』(23年)、『劇場版 君と世界が終わる日 FINAL』『からかい上手の高木さん』『ブルーピリオド』『あの人が消えた』(すべて24年)など。3月20日、主演映画『少年と犬』が公開。ドラマ作品は「最愛」(21年)、「君の花になる」(22年)、「女神の教室~リーガル青春白書~」「フェルマーの料理」(ともに23年)、「伝説の頭翔」(24年)など。3月31日より放送のNHK連続テレビ小説「あんぱん」に出演。

齊藤工/TAKUMI SAITOH
出演作の映画『少年と犬』が3月20日全国公開。また、Netflix「新幹線大爆破」が4月23日より配信スタート。企画・プロデュースした児童養護施設のドキュメンタリー映画『大きな家』(劇場上映のみ)がロングラン。ハリウッド映画『ボクがにんげんだったとき/When I was a human』のエグゼクティブプロデューサーも務めている。