写真・文/冨田千恵子(在コペンハーゲン、ライター)
デンマークでは、コロナ禍で自宅で過ごす時間が増えたせいか、断捨離を敢行したり、DIYでホームオフィスを実現する人も多いいが、そこで改めて気になるのがゴミ問題。マンションのゴミ置き場で、分別作業に途方に暮れてしまうのも日常茶飯事だ。
意外かもしれないが、デンマークでは家庭用ゴミの分別がここ数年ほどでやっと浸透してきたような状況。理由としては各自治体で分別システムや表示が異なることなどが挙げられ、さらにわかりやすい情報が必要とされている。
分別標識が貼られたゴミ箱。内部もわかりやすく仕切られていて迷わない。
「緑化が進むよう、協力してね」と書かれた矢印の先には、分別マークのついたゴミ箱。子ども向けのイベント施設にも設置され、環境保護教育にも役立っている。
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そんななか、デンマークの廃棄物処理会社や自治体、エココンシャスな企業、デンマーク環境保護省などのバックアップで活動している「デンマーク廃棄物協会」が、デザイン会社のFutuとのコラボで作成した、カラフルでちょっとユーモラスな91種類のピクトグラムが評判で、近頃は各所で見られるようになった。
産業廃棄物、リサイクルセンター、家庭ゴミまで、すべてのゴミ分別をカバーする91の標識。英語、ドイツ語バージョンもある。photo:Danish Waste Association
91種類という数に圧倒されるが、分別の細分化に対応したディテールは眺めていて飽きない。たとえば、同じTシャツのマークでも、上から4段目のライトグリーンの方はまだ着られるリユース用、最下段の紫色の方は破れや傷があるので資源ゴミ用など。これなら、ゴミ捨てがポジティブに考えられる。
「各自治体でバラバラだった表示を全国で統一しようというアイデアは15年ほど前からあったのですが、いいデザインがなくて、やっと2016年から本格的に取り組みました。現在はデンマークで98ある自治体のうち91で採用されており、2025年を目標に全国的に広がるよう働きかけています」と担当者は話す。
表示だけでなく、色の選択にも工夫がある。たとえば、紙類はEU内ではブルーが一般的なのでライトブルーを採用。生ゴミはグリーンを選び、木材のゴミを茶色にするなど、既存の表示と共存しつつ、段階的な統一を目指す。
最近は国内だけでなく、ノルウェー、スウエーデンの一部でも採用されつつあるというから、いずれは日本のゴミ箱にも貼られるかもしれない?
リサイクルセンターの標識。左奥のブルーのものはガラスを表現。大型家電はオレンジに洗濯機のイラスト。個人が車で持ち込むことも多いから、わかりやすいことが鉄則だ。
photos et texte:CHIEKO TOMITA