世界は愉快 標識編 from LA

弁護士資格も必要? スリル満点、LAの難解な交通標識。

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写真・文/稲石千奈美(在LAカルチャーコレスポンダント)

まだまだクルマ移動が一般的なアメリカでは道路標識の正しい理解は絶対なのだが、全米でも難解で有名なのがロサンジェルスの駐車規制標識だ。つい最近まで、それらを解読するには弁護士の資格がいると言われるほど。異なる駐車規制の標識が10枚以上もずらり縦5mの高さで立っているものもあり、切実な問題としてニュースや新聞報道、SNS投稿で話題になったこと数知れず。あまりに複雑な標識にLA市長自らが撤去を指示、そのことで駐車違反切符を切られたあるデザイナーが「停める、停めない?」疑問をウェブやSNSで発信、わかりやすいデザインを提案し、採用されるなど最近では見直しと改善が進んでいる。

この標識、駐車してもいい日時は? 正解は、金曜から月曜17時から深夜2時までは乗降中のみ10分間OK。それ以外の日中(月〜土は8時から17時まで、日は11時から17時まで)は2時間限定で、無制限で駐車してよいのは月〜土曜の深夜2時から翌8時、日曜は翌11時まで。火曜から木曜までは駐車禁止だ(駐車許可のある商業車は対象外)。牽引されてしまった場合は311に電話をする。

こちらは現在ハリウッドの道路に設置されている標識。縦に3枚並ぶ駐車規制を順番に解説すると、まずいちばん上は毎日17時から深夜2時までは乗降目的のみ10分まで駐車可能、それ以外の駐車は牽引の対象になる。次は月〜土曜8時〜17時、日曜11時〜17時は2時間まで駐車可能。下の矢印は「この先」の意味で場所を指定している。ではその時間以外はというと、時間制限なく駐車してもよいはずなのだが、3枚目のように期間限定駐車禁止標識があれば、その標識にある曜日・時間は一切駐車できず、違反して牽引されれば、罰金だけでなく牽引に伴う費用も発生してしまう。LAでこのような期間限定の駐車規制は、イベントや道路整備、映画の撮影などにより割と頻繁にあるので要注意だ。

さて、クイズのような難解度で、やっと見つけたスペースに駐車をしてよいものかどうか……自己もしくはグループで問答、クルマに戻る際には違反切符を切られていないかのスリルを味わうことになる。それほど、感情を揺さぶる悩ましい駐車標識なのだ。

そんな事情から、地元住人が交通標識をじっくり読み解く習慣のあるLAで、一旦停止標識の下に「悲しかったり、誰かの助けが必要だったりしてもいい。誰にだって辛い日々はあるのだから。」とメッセージがあるカラフルな標識を見つけた。少しずつ落ち着いてきたとはいえ、コロナ禍でまだ学校も再開せず、美術館やスポーツ施設、屋内での飲食も依然として閉鎖していて、生活苦や孤独など人々の精神的な影響が心配されているだけに、サバイバルモードのコミュニティを応援するアーティストの作品なのだろう。やはり標識はじっくり読むべきものなのだ。

ハリウッドの通りの「一旦停止」の下に、交通標識に似せたコミュニティへの支援メッセージを込めたアート作品が設置されている。制作者はGreg Aurebach。

日本に比べ歩行者が断然少ないLAでは、クルマを運転している人の念頭に歩行者がないことも多い。立体駐車場から出てくるクルマに要注意。

photos et texte:CHINAMI INAISHI

この記事の元URL: https://madamefigaro.jp/series/yukai/210316-travela.html