ベルリンに、スイスの建築ユニット、ヘルツォーク&ド・ムーロンのマスタープランによる複合施設「AM TACHELES(アム・タヘレス)」が完成した。アート施設やレストランも数多く集まるミッテ地区に立つ、巨大なビル。その中の不動産物件で世界中のデザイナーがインテリアを提案する「ROOMS of AM TACHELES(ルームズ・オブ・アム・タヘレス)」が始まり、話題を呼んでいる。
今回起用されたのは、ベルリン、ミラノ、そしてメキシコからの3つのデザインユニットだ。


ベルリンに拠点を置くLOTTO Studio(ロット・スタジオ)がデザインしたのは、南向きのバルコニー付き、79平米のアパート。寝室とリビングキッチンの間にはスライドドアがあるが、そこを開けばワンルームのような造り。薄い金属の板を折り曲げて作ったベッドやソファなどの家具には、窓の外の風景や壁、天井の素材などを感じることができるよう、小さな穴が開いている。


ヘルツォーク・ド・ムーロン自身が設計した146平米のロフト空間。そのインテリアを手がけたのは、ミラノ発のデザインユニット、Studioutte(ステュディオッテ)だ。打ち放しのコンクリート壁が印象的なブルータリズム建築の中に、ゴムや皮、鉄、毛足の長い絨毯やファーなど、官能的で強い素材感を持つ家具やオブジェを配置。キッチンや寝室などのスペースは真っ黒なカーテンで仕切ってあり、まるで劇場のようだ。


うってかわって、ふわふわで柔らかいピンク色でナチュラルなインテリアを提案したのは、メキシコ人アーティストでデザイナーのFernando Laposse(フェルナンド・ラポッセ)。トウモロコシの皮やリュウゼツランの繊維を使ったデザインを多く発表している彼は、107平米の無骨なメゾネットに、トウモロコシの皮を使ったモザイクの家具やリュウゼツランの繊維を使った生き物のようなオブジェが散りばめられ、遊び心あふれる空間となっている。
全ての部屋には、それぞれのデザインスタジオが選んだフレグランスが漂う。五感で楽しむインテリアのアイデアは、インスピレーションを与えてくれる。建築、デザインファンには見逃せない。

河内秀子
ライター。2000年からベルリン在住。ベルリン芸術大学在学中に、雑誌ペンなど日本のメディアでライター活動を始める。好物はフォークが刺さったケーキ、旧東ドイツ、マンガ、猫。ドイツでも日本でも「そとのひと」。 twitter:@berlinbau