オートクチュールの芸術と工芸を語った、ディオールの『フォルムの法則』展。

Paris

ディオールのジョナサン・アンダーソンによる2回目のオートクチュール、2026-27年秋冬 オートクチュール コレクションが、既報の通りロダン美術館で7月6日に発表された。そして翌日から6日間、今回も前回同様にショー会場を使って、『Grammar of Forms(フォルムの法則)』と題した展覧会を開催。発表されたばかりのクチュールピースとそのインスピレーション源となったアーティストの作品、そしてメゾン創業者クリスチャン・ディオールのアーカイブピースを展示した。

ショーはごく限られた人しか会場に入れないけれど、この展覧会はロダン美術館の来場者に一般公開。オートクチュールを全ての人に身近なものに、という理念のもとに行われた。とりわけ子どもたちに見せたいという希望をジョナサンは持っているそうで、今回も会場では子ども向けの小さな説明書を配布。この本にはページを折り畳んだり、しわくちゃにしたりといったアトリエ的要素も含まれていて、オートクチュールの手仕事やアートへの興味をかき立てる作りでもある。

展覧会『フォルムの法則』のポスター。クチュールを洗練された言語として捉えるジョナサンは、クチュールのコード、テクニック、伝統的な職人技の法則を学び、新たなアイデアを明確に表現している。
『フォルムの法則』展より。©︎CHRIS LENSZ
『フォルムの法則』展より。©︎CHRIS LENSZ

この秋冬コレクションについてジョナサンに着想を与えたのは、アメリカ人アーティストのリンダ・ベングリス(1941年~)の彫刻作品。彼はロエベ時代にすでに彼女とコラボレーションを行っている。リンダが2次元の素材をノッティング、プリーツ、造形といった手法で3次元に変容させるように、クチュールにおいても同じように2次元の生地に彫刻的な形が与えられ、人間の身体が着ることでその造形が際立つという繋がりが、このコレクションの出発点となったそうだ。ブロンズ、紙、ワックス、ラテックスなどを素材に、それら素材が動きの中で停止しているように見える「フローズン ジェスチャー」と呼ばれる彫刻作品でリンダは知られている。クリスチャン・ディオールも自身が作る服を建築にたとえ、身体のフォルムを彫刻的に再解釈し、2次元の布から3次元の世界へという発想をベースにした構築美のあるクリエイションを行っていた。展示会場にはこの3者の仕事が併置され、そのエスプリのリンクがとてもクリア。芸術と工芸の両面から、クチュールの技法と感動を来場者が体験する機会となった。

左:後方のケース内は リンダ・ベングリスのブロンズワイヤー素材の『Kissel』(1985年)。この作品とクリスチャン・ディオールのプリーツの技にインスパイアされたシルクラメのビュスティエドレスをジョナサンは「Linda」と命名。右:クリスチャン・ディオールの1950年春夏 オートクチュール コレクションで発表されたヴァーティカルラインのソワレ「フランシス・プーランク」。photography: Mariko Omura
左:「バー」ジャケットの新解釈が見られるアンサンブル「Nadège」。このシーズンで退職したセカンド・アトリエを務めていた女性の名前である。リンダがシリーズ『Sparkle Knot』で見せたスパンコールの使い方にインスパイアされている。 右:クリスチャン・ディオールのために、バッグの「レディ ディオール」をリンダが再解釈。photography: Mariko Omura
左:ジョナサンによるアンサンブルの「Crépscule」。このスカートはリンダの紙を素材にした作品『Big Back Ass』(2020年)をクチュールのテクニックで再解釈したもの。右:虹色に輝くオーガンジーに細かくプリーツを施した「Soufflé」。砂やポリプロピレンを素材にしたリンダの『Lagniappe I』(1978年)をジョナサンがクチュールの言語で解釈したドレスだ。photography: Mariko Omura
左:クリスチャン・ディオールのデビューとなった1947年春夏 コレクションより、花冠ラインのアンサンブル「Corolle」。スカートと前見頃の左右に細かいプリーツが施されている。右:クリスチャン・ディオールが愛したピンクと淡いグレーの色合わせのアンサンブルをジョナサンは「Rhubarbe」と命名した。フォルチュニ風のプリーツがツイードに施されている。photography: Mariko Omura
左:絞りを思わせるテクニックを用いたシルクのロングドレス「Paon」。1970年代にリンダ・ベングリスが制作した彫刻シリーズ『Peacock Fan』および彼女がインドで滞在した家で観察した鳥たちにインスパイアされたオーガンジープリーツの扇が背中に。右:扇と同じ装飾が施されたハイヒール。どちらも2017年にパリに生まれたアトリエ・バケ・モリニエが刺繍を担当した。photography: Mariko Omura
1949年秋冬 コレクションのドレスの「Picasso」「Matisse」「Blaque」なども含めクリスチャン・ディオールによるアーカイブピースも多数展示。左は1956年秋冬 コレクションから「Opéra Bouffe」。彼が愛した花のシルエットの19世紀風ドレス。右はデビューコレクションから、「Vogue」。オーガンジーのショートジャケットには大きく結んだ布が。photography: Mariko Omura
左:リンダがスパンコールをオーナメントとして使用する方法にインスパイアされたスパンコール・フリンジのドレス「Horizon」。ドレープをまとめているのはユーカリの花。右:紙や金属、あるいは石膏といったリンダが使用する素材に似せた加工を施したドレス「Brume」(左)と「Glitter」。photography: Mariko Omura

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問い合わせ先

クリスチャン ディオール
0120-02-1947(フリーダイヤル)
https://www.dior.com/ja_jp

大村 真理子

madameFIGARO.jpコントリビューティング・エディター

東京の出版社で女性誌の編集に携わった後、1990年に渡仏。2006年から「フィガロジャポン」パリ支局長を務めた後、フリーエディター活動を再開。主な著書は『とっておきパリ左岸ガイド』(玉村豊男氏と共著/中央公論社刊)、『パリ・オペラ座バレエ物語』(CCCメディアハウス刊)。