Casa CABaN HAYAMAで体感する、パトリシア・ウルキオラの美学。

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東京から約1時間。緑豊かな山々と穏やかな海が広がる葉山・森戸海岸に隠れ家にしたくなるデザインホテル「Casa CABaN HAYAMA(カーサ キャバン ハヤマ)」がオープンした。

最大の魅力はイタリアで活躍する女性建築家でありインテリアデザイナーのパトリシア・ウルキオラが手がけた、色彩豊かで遊び心に満ちたインテリア。建築から家具、アートまで、彼女の美学が随所に息づく空間は、インテリア好きも驚くデザインのこだわりに心を奪われる。そんな唯一無二のホテルを訪ね、その魅力をレポート。

葉山の風景から生まれた、ひとつの夢。

このホテルのストーリーは、1992年まで遡る。CASA CABANのオーナーであり、トゥモローランドの設立者である佐々木啓之が、当時からパトリシアの才能に惚れ込み、渋谷のショップ「デ・プレ」のインテリアデザインを依頼したことからふたりの親交が始まった。2017年、来日したウルキオラが旧知の佐々木を訪ねて葉山へ。透明度の高い海、江ノ島の先に沈む夕日、遠くに浮かぶ富士山のシルエット。その美しい風景に、彼女は一瞬にして魅了され、疲れた心身がゆっくりと癒されていったという。この葉山での体験こそが、Casa CABaN HAYAMA誕生のきっかけとなった。

「Weaving」に込めた、編み込むという思想。

ミラノを拠点に、数々のホテルや内装を手がけ、カッシーナをはじめとするメーカーの家具のデザインも担うパトリシア・ウルキオラ。今回、企画から設計、建築、内装までを一貫して手がけるのは、彼女にとって初めての試みだったという。

一方、1978年の創業依頼、トゥモローランドは服作りだけでなく、接客や店舗という空間を通して、日々の暮らしを豊かにするアイデアを提案してきた。ホテルという存在はまさに衣食住、そして遊びや知性まで、さまざまな要素がひとつに集まった場所。トゥモローランドが長年培ってきた暮らしへの知見と、パトシリアの美学が融合することで、新しい感動を生み出す場として動き始めた。

その空間を象徴するキーワードが、パトリシアが掲げる「Weaving(編み込んでいく)」というコンセプトだ。トゥモローランドが大切にしてきたニットへのオマージュでもある「Weaving」。時間や空間、素材、人と人との関係を編み込み、そこにいる人をやさしく包み込んでいく。そんな思想が、建築からインテリア、アートに至るまで、館内のあらゆる場所に表現されている。

色と素材が、自然と軽やかに溶け合う。

葉山特有の、海へと抜ける細い道を進むとホテルが姿を現す。館内へ一歩足を踏み入れると豊かな色彩が目に飛び込んでくる。自然に馴染むニュートラルなトーンをベースに、ブルーやグリーン、テラコッタという色彩が、タイルやタペストリー、有機的なフォルムの家具とともに配置されている。

素材も表情も異なるものを組み合わせながら、不思議なほど調和しているのが印象的だ。ロビーのパウダールームのテラゾーのタイルすらとても可愛い。

なかでも印象的なのが、格子パターンのファサードパネル。100%リサイクル素材で作られ、日本の織物を思わせる表情を持ちながら、柔らかな光だけを館内へ取り込む。外の自然を感じさせつつ、ゲストのプライベート感も守る、機能と美しさを兼ね備えたデザインだ。

建築、家具、アート、すべてがひとつにつながる。

ラウンジは、竹を組んだ格子天井や、藍色の柱などが象徴的。その先には、格子のタイルが愛らしいプールがあり、さらにその向こうには広大な海が広がっている。視界が一気に開けるその瞬間、開放感に心が解き放たれる。館内には、パトリシア自身が手がけたタペストリーやラグ、メタルプリントなどのアート作品も点在。植物や花、織物をモチーフにした作品が、外の風景と呼応しながら空間を彩っている。

パトリシアによる、植物がデザインされたテキスタイルも素敵。

ショップのある地下には草間彌生のアート作品などもさりげなく飾られ、外へと繋がる階段はグラフィックなタイルで彩られている。

スタッフの制服もまた、この世界観をつくる大切な要素だ。ネイビーとホワイトを基調に、首元にはスカーフをひと巻き。タック入りのリラックス感あるパンツを合わせたモダンなマリン風スタイルで、「このパンツ、欲しい!」と声が出てしまうほど。

空間に漂う爽やかな香りに癒されながら客室へ。ここでもまた、「泊まる」というより「暮らす」という感覚が強くなる。海を一望するテラスを備えた14室の客室はすべてインテリアが異なる。ベッドリネンにはエジプト・ギザ地方のコットンを使用し、アメニティは日本生まれのブランドを中心に展開されている。ベッドサイドに飾られたクロスやラグ、アートは、柄も色合いもそれぞれ異なる。それなのに空間全体には心地よい統一感がある。

葉山の恵みを味わいながら知る。

そして、このホテルで過ごす時間の中でも、楽しみにしたいのが食事だ。館内には洋食のメインダイニングと和食レストラン「あしたば」がある。

メインダイニングでは、葉山近郊に住むシェフによる、魚介や野菜、葉山石井牛、地元で育った野菜や果物など、地の味を生かした彩りも美しい料理を味わえる。

一方、和食の「あしたば」は、カウンターを中心とした作り。しんとした静けさが心地いい和室も用意され、海外からのゲストをもてなす場所としてもふさわしい。

ここで印象的なのは、食材を単に「土地の名物」として消費するのではなく、その背景にある環境や文化まで伝えようとしていること。例えば葉山の海で採れる「葉山うに」。これを料理に取り入れることは、海の環境を守るという意味もあるという。海水温の上昇などによりウニが異常繁殖し、海の生態系にも影響を与える。旬の味覚を楽しむことが、その土地の海の環境を考えるきっかけにもなるのだ。

海を眺め、土地の味を楽しみ、心地よいデザインに身を委ねる。Casa CABaN HAYAMAで過ごす時間は、自分の感性が心地よく刺激されるリュクスな滞在となるだろう。

Casa CABaN HAYAMA
神奈川県三浦郡葉山町堀内955-2
046-895-0228(受付時間09:00〜21:00)
https://casacaban-hayama.com/
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  • photography: Gorta Yuuki