芸術の秋はやはり映画館へ! スピルバーグ話題作からイタリア、スイスの美しい世界観を味わえる3選。
芸術の秋は、個性豊かな映画との出会いを楽しみたい。世界を覆う秘密に挑む『ディスクロージャー・デイ』、食を媒介に人と人とのつながりを描く『ムクドリと人生とレモンパスタ』、そして限られた時間と空間のなかで複雑な感情を紡ぐ『ガール・アンド・スパイダー』。ジャンルも視点も異なる3本の見どころをご紹介。
01.『ディスクロージャー・デイ』

国際危機が差し迫る現代に、来たるべき“未知”。
ジョシュ・オコナー演じるサイバーセキュリティの達人ダニエルは、宇宙的叡智のテクノロジーや機密を独占し、最新AIや核開発を飛躍させた軍産複合体の秘密に気づく。ある年少体験を共有する、エミリー・ブラント演じるニュースキャスター志望のお天気お姉さんマーガレットが彼に合流。地球の人々へ秘密をディスクロージャー=情報開示すべく、逃走劇を繰り広げる。ポリティカルスリラーとSFファンタジーを巨匠スピルバーグが統合。国際情勢が世界大戦寸前の極点を迎え、フェイクニュースやアルゴリズムにまみれたメディア環境にあって、真なる“開示”とは? 人類自滅の瀬戸際の救いとは? 『未知との遭遇』(1977年)の“見上げる視線”に対し、本作では裸眼の“瞳”がカギに。
『ディスクロージャー・デイ』
●監督/スティーヴン・スピルバーグ
●2026年、アメリカ映画 ●145分
●配給/東宝東和
●TOHOシネマズ日比谷ほか全国にて公開中
https://disclosureday.jp/
02.『ムクドリと人生とレモンパスタ』

日常の気塞ぎを再建する熱源、“食”の威力。
高校教師マルタはコロッケが名物のローマの屋台でアントニオと出会い、同棲生活を送るもちょっとした口論から別れてしまう。料理が得意のアントニオは7年間マルタのために腕をふるった技を生かし、シェフとなって気のおけないレストランを開店。茹で肉や牛タンや塩漬けタラの店の評判とは裏腹に、かたやマルタは閉じこもりがちになる。『死ぬまでにしたい10のこと』(2003年)のイザベル・コイシェ監督は、レモンパスタの盛りつけやジェラートの味覚といった食の記憶がマルタの日常感覚を押し開き、アントニオや高校の同僚との人間関係も更新する過程をローマの街の息吹きとともに溌剌と表現。アルバ・ロルヴァケルの感性の鋭い好演が光り、カームフルな終局の味わいも格別だ。
『ムクドリと人生とレモンパスタ』
●監督・共同脚本/イザベル・コイシェ
●2025年、イタリア・スペイン映画 ●122分
●配給/チャイルド・フィルム
●11月13日より、 ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国にて順次公開
https://child-film.com/films/treciotole
03.『ガール・アンド・スパイダー』

ワルツが奏でる憂愁と激情のおとぎ話風室内劇。
リザはシェアハウスを出て新居に引っ越す。長年のルームメイト、マーラの心は大波小波に揺れたまま、夜の送別パーティへ。会話はチグハグで互いに独白めいてもくるのに、一日の時間経過のふとした仕草や気分の照応ぶりが実に濃やか。リザへの羨望の念を包み隠した、マーサのメランコリックな微笑みが脳裏から離れなくなる。ベルリン国際映画祭が見出したスイスの若き哲人チュルヒャー兄弟の「動物三部作」が日本初公開。本作は、限られた時間・空間内において、物語をミニマルに圧縮させたその「ミニアチュールの詩学」(特集題)の核心をなす。第1作『ストレンジ・リトル・キャット』(2013年)から第3作『煙突の中の雀』(24年)へ、卵色の毛並みをもつ家猫の数奇な運命に唖然。
『ガール・アンド・スパイダー』
●監督・脚本/ラモン&シルヴァン・チュルヒャー
●2021年、スイス映画 ●98分
●配給/グッチーズ・フリースクール
●10月30日より、シアター・イメージフォーラムほか全国にて順次公開
https://filmex.jp/program/ss/ss11.html
- text: Takashi Goto