大学のキャンパスにジェットエンジン!? ポーランドで目撃した、驚きの研究現場。

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写真家の在本彌生が世界中を旅して、そこで出会った人々の暮らしや営み、町の風景を写真とエッセイで綴る連載。今回はポーランド・ポズナンの旅。

ポズナン工科大学の校舎内から見える向かいの古い校舎。ポーランドにいると建設された時代が違う建物が混在、融合している様子をよく見かけるが、そこに調和が生まれているので違和感がなく、むしろ双方が互いを引き立てている。午後の西日に照らされた真っ白い校舎に青い文字で掲げられた校名のフォントもいい感じ。

キャンパスでジェットエンジンの爆音を聴く。

vol.46 @ ポーランド・ポズナン

ポーランド各地で大学などの教育研究施設や製作所を視察し、そこで学ぶ学生や研究者たちに話を聞く機会を得た。歴史ある名門大学が多いこの国、なかでもいちばん有名なアカデミーは、世界中から学生が集まるワルシャワの国立ショパン音楽大学だろうか。ウッチには、映画史に名を残す映画人たちを輩出し続けている映画大学もある。その一方、この国はコペルニクスやキュリー夫人など理系の天才を多数輩出していて、現在も先端技術系の研究を進める大学機関が多数ある。光があふれる開放的な建築の総合病院が併設されたグダニスク医科大学や、航空工学、宇宙工学の分野の研究も進んでいて、優秀な建築学科のあるポズナン工科大学など、いずれもキャンパスが大規模なことにまず圧倒されてしまった。そして何より、テクノロジーの未来を切り開く研究に携わる人々が真摯に学ぶ姿を傍で見て、静かに感動した。最新の研究設備が惜しみなく導入されていることにも驚く。ポズナン工科大学で印象に残ったのは建築学科の学生たちが試作した、公共建築の内装用のガラス板の優雅な美しさだった。シンプルなデザインだが、ポーランド的なモダニズムの残り香も感じられ、懐古趣味に偏らない洗練を見た。航空工学科のラボでは最新式のジェットエンジンを回して見せてくださった。複雑に構成された金属の集合体がブォーと何度も低い唸り声をあげ、辺りのすべての音を呑み込んだ。その勢いは、まさに邁進する現在のポーランドを象徴するようだった。

建築学科の学生が作成したというガラスの装飾。ひとつひとつ模様が違い、組み合わせも楽しい。
航空工学科の教授は自慢のジェットエンジンに関して満面の笑顔で解説してくれた。月面探査機器の開発をする研究室もあると聞いて、SF小説の名作と言われるスタニスワフ・レムの『ソラリス』を思い出した(ちなみにレムはクラクフの名門ヤギェウォ大学で医学を専攻していた)。かつてはロシア語からの重訳だったが、今はポーランド語の原書からの訳で読めるのでよりレムの表現に近づける。訳者、沼野充義氏のあとがきも必読。

●『ソラリス』 スタ二スワフ・レム著 ハヤカワ文庫SF ¥1,760

Yayoi Arimoto
東京生まれ、写真家。
出張続きで運動習慣も乱れがち、ホテルなどの小さなスペースでできるエクササイズを探しています。

Yayoi Arimoto
東京生まれ、写真家。アリタリア航空で乗務員として勤務する中で写真と出会う。2006年よりフリーランスの写真家として本格的に活動を開始。

  • photography & text: Yayoi Arimoto
  • cooperation: Polish Investment and Trade Agency (PAIH)

*「フィガロジャポン」2026年12月号より抜粋